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第16話 黒の聖女は巨木を仰ぐ

エルフ自警団のような人たちに先導されやってきたのはエルダバウムのお膝元である


言っても移動に30分もかかっていないのだが動き出して10分ほどで巨大な樹が見えたのは流石に圧巻であった


「いきなり見えるなんてすごいわね」


「遠視の結界かしらね。あれだけ近くても見えなかったものね」


感心するアリスにシェクタが言う。


そう言えばこの木の場所はアイナの眼をもってしてもわからないとか言ってたもんな。

まあだからこそリーリングアイシェに依頼を出したっていうのもあるんだけどね


「普段ならもっと近づいても見えないと思うわ」


感心しているとルクシアが言う。


「多分だけどエルフ側に承認されたから見えるようになったんだと思う。承認がなければそれこそ2メートル前にいても見つけられないでしょうね」


「へぇ、すごい魔術ね。」


「そんなに高度な魔術じゃないわよ?ただの認識阻害だもの。すごいのは広範囲に延々と広げ続けているってことだけね」


「すごいのは出力ってことか」


「いつも思うんだがなんであの子はあれだけ脳筋なのにルクシアの説明でいともたやすく魔術が理解できるの?」


「脳筋なくせにオタクだったからじゃない?まあ環境もあるだろうけどあたしには真似できないわね」


後ろでビディとシェクタがぼそぼそ言う


「脳筋は余計です!。それにシェクタも理解できるだけの知識はあるでしょ?」


「ないわよ!あたしはほとんどコマンド入力だもん」


「あ、そりゃそうか何で同じ仕様なのにここ迄違うかね?」


シェクタとアリスは同じ地球からの転生者。

そして同じヴァリアビリスファルマの肉体ではあるがその運用は大きく違う


タイプ別のドレスを纏い戦術運用するシェクタに対しアリスは汎用性に重視を置くパーツ交換型。

ゆえに理論上は魔術、格闘、遠距離狙撃同時運用も可能だがその分扱いが複雑を極めている

そのためにスキル開放はその他の仲間からの転写という手法が用いられることが多いのである


「まあでもマディーナ方式ならシェクタでも魔術スキル開放できるかもしれないわよ?」


「どんな方式よ?」


「16時間ぶっ続けで魔術の講義、八時間は触手に縛り付けられて全裸でマディーナと添い寝、を二日間」


「添い寝だけならあたしがしてもいいわよ?」


説明をするとシェクタとビディがドン引きになる。それでも添い寝を取れるのはビディだからではあるが


「身動ぎ一つとれないくらいの完全固定よ?あんなのは二度とごめんね」


「あんたたち、そろそろ領域内っぽいわよ」


軽口を言っているとルクシアが言ってくる


なるほど、前方には短槍を持った屈強な男が数人、砦のようなところに配置されている

まあ砦というよりは木組み櫓程度のものではあるが


そして関所の前にいる門番のような二人は槍を出してこちらを制止する


「お前たち、何人も我らの民以外はこの先へ入れることはできない。早々に立ち去れ」


「彼女らは巫女様の招待を受けたものだ。無礼な真似は控えてもらおう。」


「聞いてはおらん。通すわけにはいかぬ」


「なんか押し問答してるわね」


「よくあるお役所仕事、縦割り行政なんじゃないの?」


案内のエルフと門番が言い争っている後ろでぼそぼそというシェクタとアリスであった。

因みにエルフ少女エヴァはおろおろしているがリーリングアイシェの面々は気にも留めず事態を眺めているだけであった。


「私の客人です、そこを通してあげてください」


しばらく言い争っているエルフの後ろから女性の声がする。

振り向き急に居住まいをただす門番たち


「ロージャ様・・・」


「貴方達が職務に忠実なのもよくわかっています。どうやら私がブルーノに伝え忘れたようですね。彼女たちを招待したのは私。通してあげてくださいますか?」


「は、姫巫女様の言葉通りに。ですが領内での異邦人の武器携帯は」


「ま、妥当でしょうね」


皆迄言わせず腰に下げているナイフを鞘ごと渡すアリス。

それに倣うようにシェクタとビディも自らの武器を差し出す


「これで通っていい?」


「あ、ああ、失礼した。帰るときもこちらを通ってくれればきちんと返却をする」


面食らったように武器を受け取り通してくれる門番たち

姫巫女と呼ばれた女は示す方へと歩みを進めていく。


入ってすぐに彼女は侍従らしき女に命じてエヴァを連れて行く


「ご心配なく、彼女はきちんとこちらで責任をもって保護します。」


「何も心配してませんけどね」


「そうですか?一番心配されているようでしたので」


やりにくいな、おっとり系と思っていたら意外と見ている。

こっそりモードをアイズ&イヤーズに変えて彼女の連れて行かれる先を確認していてのがばれたようである。まあ敵対心とも思っていないようなのでいいかね。



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