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第十三話 黒の聖女は戦闘する

戦闘が始まる


爆煙の刹那にエヴァを男たちから取り戻したビディとルクシアは襲い掛かってくる男達から彼女を守るために防御に徹している。

本来はもちろんそのような男たちに後れを取る彼女たちではない。


仮にも表の世界でS級を名乗る彼女達であるビディの本来の太刀では一刀両断、それこそ数秒で片が付くはずではある

しかし今回襲ってくるものたちは魔人に操られている。

ただし普通のエルフではない。否、なくなっている。

まず運動能力、先ほどまでは数人がかりであろうともビディ一人にあしらわれていたのだが(護衛対象)がついたとはいえビディを防戦一方にしている。

そして何より変わっているのは見た目。透き通るような白い肌だった彼らは薄緑から浅黄色の肌へと変わっている。


「魔物化?人を変質させられるの?」


「違いますね。彼らはまだ魔物になり切っていません。おそらくはあの魔族の言った通りゴーレムとして操られているだけ。ある一定時間までにコアを破壊すれば彼らは元に戻れるはずです」


防戦ながらも分析をするルクシア。とはいえその分析によって彼らを屠るという選択肢が今消えてしまったわけなのだが。


「とりあえず臭いにおいは元からってやつね」


そう言うと女魔族に挑んでいくのはシェクタである。一見無防備な女に剣を抜いて切りかかろうとするがすんでのところで緑の男が邪魔をする。


「ちょっと?!ゴーレムっていう限りには自律行動しないんじゃないの?」


エルフの男ジラーの攻撃を回避しながらごちるシェクタ


「自律行動しないわけはないでしょう?命令に従順なだけです」


「命令って・・」


「多分だけど第一命令はあんたの身を守れってところかしらね?第二命令が私たちを倒すこと?くらいかしら」


「あら?気づけたんですか?」


シェクタの後を継ぐように言うアリスに上から目線で感心するライザ


「あからさまだもん、わかるわよ」


「どういう事よ?」


「そのままよ。シェクタの攻撃に対して一人だけが戻ってガードに入った。しかも()()()()()()()()()()をしていた男がね」


「つまり?」


「つまり完全自立志向で動いているってことね。あの女が操っているなら最後尾の魔族を戻すはずだもん。角度的に気づけたのが一人ってことよね?」


「気づいたからどうってこともないでしょう?それにそろそろ相手をするのがきつくなってきたのでは?」


アリスの言葉に余裕で答えるライザ。確かに当初多対一の戦闘で圧倒的優位であったアリスが徐々にではあるが圧され始めている


「まあそうね、そろそろウォーミングアップも終わりにしましょうか。シェクタ、その女は任せるわよ」


「OK,面倒だし終わらせよっか」


「コール ブレイク」


『Yes Sir. Battle Brake start up』


「コール タンジー」


《Yes Ma'am Bloom up Tansy》


二人同時に唱えると彼女たちの体に魔導鎧が顕現してくる


アリスの纏う魔導鎧は基本軽装なことが多い

特にオフェンスタイプの場合ガード面積が少なく今回は胸と脛、そして籠手部分にしか硬質部分のない黒のアーマーである。


対して同じ地球からの転生者、そして同じく魔導鎧を介するタイプのシェクタではあるが鎧の形状は大きく違う。全体的に上半身を覆う形状の鎧、色は乳白色がベースだが所々にイエローの指し色が入っている。そして全体的にはミニスカート形状ではあるが下半身も別のスーツ素材に覆われ肌の露出は首から上となっている。


シェクタの魔導鎧の基本戦闘形態、モードタンジーである。


「お姫様願望でもあるってわけ?」


「女の子ですもの、当然でしょ?枯れたおばさんにはわからないわよね?」


ライザからの挑発に挑発で返すシェクタ。


いや、おばさんじゃないけどそれに関しては魔族に同意だな、とは思うがいちいち気にしてはいられない。こちらは五人以上の無力が優先事項なのだから


とは言えさほど気負うこともなく胸の前にこぶしを握り構える。

普段のアリスの戦闘スタイルは拳法型。

半身に構え片手を前に構えるという姿ではあるが今の形はボクサーのそれである。


見たことのない構えではあるが警戒をせずに突っ込んでくる元エルフたち。

それらの攻撃をすり抜けるように躱し彼ら一体一体の心臓の上を確実に殴っていくアリス


「やっぱいくら力があっても技術がないって意味ないわよね?」


平然と呆れるアリスの後ろで男たちはまさに糸の切れた操り人形のように倒れていた。


「何なの?たかだか一回殴っただけで全員殺したっていうの?」


横目でアリスの行いを見て驚くようにつぶやくライザ


「そんな面倒なことあの子はしないわよ?貴女自分であのエルフたちの弱点を晒してたの気づいてないの?」


「弱点?そのような物あるわけないでしょ?私のゴーレムになったものは殺してゴーレムコアを破壊するしか逃れる術はないのよ?」


「ほら、言ってるじゃない。ゴーレムコアを破壊するって」


「いくら聖女でもそんなこと殺さずにできるわけないでしょ?」


「できなきゃこの説明がつかないでしょ?」


平然と呆れながらも顕現させたセイバーで切りかかるシェクタ

動揺からかライザは防戦一方である


その間にもアリスはビディたちを襲っているエルフたちをも無力化していった

こちらは後ろから殴るだけなのであまりにも簡単だったのだが


「でも、エルフは簡単に倒せてもこいつは不可能でしょ?」


しばらくのシェクタの猛攻を絶えしのぎ一旦間合いを取ったライザはそう言う。


すると唯一残った魔族の男が突然悶えだし叫び出した。

何かと一旦注目する一同


男は苦しみだすと体から無数の棘が生えてきた。サボテン型ではなくバラの蔓のような棘が隙間なくびっしりと生えている様子は流石に得体のしれない恐怖である


「気持ち悪いわね。」


呆れるように言うアリス


棘の塊が人型を取って呻きながら襲ってくるというのはB級ホラーのようではあるが地球感覚のあるアリスとしては下手な特撮である


「ま、でも殴るのは痛そうだからちょっと気合いれますか」


そう言うと握った拳に魔力が集中する


「どうせ怪人サボテグロンだし壊してもいいよね?」


魔力を感知したのかアリスに向かってくる棘怪人

しかし同じように構え魔力の纏われた右ストレートを怪人の胸に打ち込む


流石に元魔人であるが故かそのストレートに反応し胸の前に腕でガードをする棘怪人。

しかしアリスのストレートは紙ほどの抵抗も感じず胸へと打ち込まれていく


一拍遅れで腕を折られ胸にあいた穴。だが怪人は痛覚すら感じることなく絶命していた。


「えげつないことするわね?」


いつの間にか後ろにいたビディがあきれるように言う


「そ?だってこいつは魔人だったしどっちにしても壊さなきゃいけないものだったからね」


怪人の肉体はあっという間に風化しあとには黒い結晶のみが残っている


「どうするの?今から戻ってアイナ様にでも渡してくるの?」


「ううん、こっちで処理していいって」


そう言うと黒い結晶を左手で持ち上げ右手を拳にして結晶に当てるアリス


「ブレイクショック・スピリット」


彼女がそう言うと拳の先から魔力が結晶へと流れ込んでいき黒い色がだんだん薄くなっていく

五分ほどそのままの姿でいると結晶は完全に白くなり砂粒のように崩れていった


「浄解?あんたまさかアイナ様の力を?」


「違うわよ?アイナもちゃんと浄解の力は持ってるままよ。なんか使えるんだからしょうがないでしょ?」


ステインガーと同じく物理攻撃力を0にすれば浄化ができるとは思っていたが実戦は初めてであった。

ブレイクショックは拳での破壊攻撃に対して衝撃波を出すという使いづらい武装ではあるがそこを対魔力に絞ったのが今のスピリットである


詳しい説明をするのも面倒なのであとはアイナに聞けとビディを引き離す


「で、この人たちはどう?」


「問題ないわ、体内のゴーレムコアはすべて破壊されてるわね」


「その辺は大したもんだと思うよ。よくもピンポイントで壊せたもんだ」


「そう?結構簡単だったけど?」


「普通出来ないからね?」


まあ確かにできないと思う。ゴーレムコアは心臓近辺寄生型だったのが幸いしたね。

心臓なら狙い撃つ場所として簡単だからね

後はブレイクショックの出力を同じようにスピリットにまで落として殴ればいいだけだったので個人的には問題ないって思うんだけどね


あ、もちろんルクシアの治癒魔法込みの作戦だったけどね

普通に心臓殴って仮死状態になってるんで蘇生担当との時間連携が勝負のカギだったのである


「あとはシェクタだけか」


そうつぶやき森の奥を見る

サボテン怪人とかした魔族を相手にしている間にあの女魔族は逃げたようである。

もっともシェクタも消えているので追っていったのだとは想像つくのだが


「そういや、あんたシェクタに対してだけは心配しないね?」


「うーん、あれの力が一番あたしに似てるからかな。やりようとかも想像つくし」


「まあ独特だもんね。体術と魔術の融合とフレキシブルな運用なんて確かに貴女達しかしてないものね」


ビディの言葉に返事をすると納得したように言葉をつないでくるルクシア


「ま取り敢えずこのエルフの治療が先ね、あとは少し待って戻ってこなければ迎えに行くしかないでしょ」


アリスと棘男の戦闘開始のころにはライザはこの場所から離脱していた。ただしシェクタもそれを追いかけているためアリス達はそちらは気にせずにこちらの戦闘に専念していたのであった。


「でもシェクタってピンチになっても頼ってくれない癖があるけどね」


「アリスに対してだけね。何?貴方たち同郷なのに仲悪いの?」


「いや、普通だけど、ってか戦闘の時あんたたちには頼るの?」


「そりゃ、チームだもの。お互いの穴を埋めたりとかするでしょ?」


「うーん、そういわれると仲悪いのかな?でも特に喧嘩とかないんだけどねぇ」


性癖以外で対立なんてしたことないんだけど。まあ後で腹割ってお話してみますかね

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