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第十一話  黒の聖女は森へ行く

二日間の地獄のような魔術教育は何とか終わった


ガーハイマーガーデンの13人は七つの世界から人を呼び転生させたと女神は言っていた。

そのうち魔術のないうちの世界、そしてアイナとニーナの世界以外の五世界の魔術の理論などをマディーナはすべて理解しているらしい


そんなのが地球人に体得させるってどんなスパルタやねん


まあ魔術って結局は理論さえ体得しきってしまえばあとは想像力だけで威力、現象が起こせるのでその辺はありがたいんだけどね。


因みにもう一人の地球からの転生者、シェクタ(地球名:紫陽花 優)はこの肉体の基本技能である魔導鎧顕現能力を使い魔術を行使している。昭和から絶大な人気を誇っている美少年聖なる衣戦闘もののイメージを反映させているらしい。

流星や彗星ってやつね


女子なのに少年ものに理解があるのは奴がBのL信者だからである。

聞けば母も腐っていたとのことなのである意味悲しい英才教育と思う

入り口が腐っているくせにそんなのが使えるのは大したものと素直に関心はするけどな


とまあそんな感じで修了試験のためにエルダ大森林へとお邪魔している

リーリングアイシェの通るルートとは50キロは離れている少し開けたところに教会にいるメンバー全員での転移であった。


「じゃあ最終結果のお披露目ね」


ニーナが言う。


「言っても実感ないんだけどねぇ」


「貴女とシェクタは基本的に内蔵されたCクリスタルによって魔術の基本制御をしていますからね。そういうものかもしれません」


こちらのつぶやきにアイナが答える


「そうなんだ?そんな実感もないけど」


「機械文化の世界だったみたいですからね。内容は知らずとも指令だけで同じように動く機械とは違い魔導文明では魔術の本質的理解が威力、出力に作用します」


するとシェクタの方が今の私より魔導理解が進んでいたってことか。まあこの世界に来たのも三年くらい早いみたいだし元18歳って言ってたから吸収力も抜群に高いのだろう


「取り敢えず始めますね。コール・ウィザード」


《Yes Sir. Wizard wonder Start Up》


内なる声がスキル覚醒を受領する


姿は変わらないが腕、肘から先に変化が現れる


黒い籠手が出現したのである。

魔術文字が幾何学的にエングローブされており特筆すべきは手首側に一つ外側に二つ、手の方に向けて穴が開いているというところ。そして装着完了と共に右手首側の穴から何やら銀色のものが伸びてくる


「なんか触手みたいに動いてるんだけど?」


それを見たニーナが引き気味に言う


「えーっと、とりあえず見た目はともかくとしてこれはウィザードロッド。結構重宝する魔法の杖よ?」


「杖っていうか触手?」


まあ上に向けてチンアナゴ宜しく先だけ曲げたりしたたらそう取られても仕方はないんだけどね

でもこれは仕方のないことなのである


だって二日間理論の勉強16時間で頭が魔術な上に魔導転写という事でマディーナと同衾して寝てたりしたのである。

もっとも変なことしないようにそれこそベッドに触手で縛り付けられ全裸のマディーナが添い寝という男子的には生殺しシチュエーションで過ごしたのである


因みにその翌朝本人に直接文句を言ったら、乱暴されそうになって震えてた人が乱暴するわけない、とあっさり言われてしまった。

いやまあその通りレイプは良くないけどこっちの理性も考えてほしいものである

男子の時ほど理性ブレーキベタ踏みにしなくてもよかったけどね


結果翌日も触手プレイをされてしまったのである

なので一気に魔術=マディーナ=触手というイメージが構築されてしまったのであった


まあそれにロッドって言われて咄嗟に思い付いたのがザコとはちがう青い奴の腕を思い出したのでやむを得ないのである


「見た目は最悪でも性能は一級品」


マディーナがフォローとは思えないフォローをしてくれる。ありがたいね

まあそう言ってくれるならお見せしましょうかね


両腕の穴から計六本のロッドを生やす。流石に長すぎると邪魔なのでだいたい30センチくらい太さは1.5センチほどである。一本だと五メートルくらいの長さにはできるんだけどね。でもこれなんかまっすぐにすると100均に売ってるスチールラックの棒みたいだな。

まあそんなことは兎も角それぞれの棒の先に魔力球を生成する。

それぞれの魔力球はそれぞれ色が違う。火属性の赤、水属性の青、風属性の緑、地属性の黄色、聖属性の白、闇属性の黒である。

それぞれ魔力を高め密度を増していく魔力球


「それでいい、いったん止めて」


六個の魔力球が内側から光を放ち輝きだすとマディーナが制止する


「見ての通り六属性同時使用まで可能にした。たぶんクリスの力ももっとスムーズに使えるようになる」


「みたいですね。かなり自然に魔力を使えているみたいです」


マディーナの言葉にクリスも頷く


クリスの使う魔術は全く系統が異なるためその中には入っていないが納得はしている様である


「試してみよっか。アドトゥ・サークル」


《Yes Sir Circle Cannon conbined》


追加でスキル発動をする

クリスから発動補助を受けたもう一つの魔術スキル、サークルカノンである。


これは魔導陣を生成していろんな魔術を発動というものなのだが威力が高すぎて試し撃ちでも森の一部をなぎ倒してしまうのである。


因みに今いるこの場所なんだけどね


今度は今付けている籠手に追加装備という形で赤い魔石が現れる。

肘に魔石がついたのだがヒンジのようなものが追加されそのまま手首の上にまで移動できるギミックがついている


「防御陣魔導を展開できる?」


「やってみる」


クリスが聞いてくるので頷きながら試す

触らずとも思い通りに動いてくれるので手首の上に魔石が移動する

そして魔石の内に魔導陣が光ると外に投影され陣魔道が展開する


「あ、かなり早い」


「そのまま構えて」


へ?と聞き返す間もなく大量の魔力弾がアリスを襲う

時間にして10秒ほど、しかし爆弾のような衝撃音が連続し辺りは砂ぼこりに覆われていた


「クリス?」


少しひきつったような顔で問い正そうとするアイナ


「大丈夫よ。ほら」


平然と答えるクリス

その視線の先には埃の中で動く人影があった


「クリス!殺す気!?」


「前の貴女なら死んでたわね。きちんと防御できるようになったじゃない」


「いや、そういう問題じゃないから!」


「あら?展開まで待ったあげたでしょ?」


「いや、それもそうなんだけど」


駄目だ、普段は頼れるお姉さんなのだが、マディーナと同じで自分の魔術に関して妥協は一切ないのである。確かににぎりぎり間に合うタイミングだったけどひどくない?アイナとニーナにもひかせるなんてクリスしかできないよ


「とりあえずこれで魔術系は及第点。あとは知らない」


「あら?愛弟子に冷たいのね?」


「一人で生きていける程度のことは教えた。後は自力でなんとかするのが鉄則」


まあもともと一人でするつもりだったけどね。


「とりあえずエルダ森林ならちょうどいいからあの三人に合流でもしてみるわ」


「そうね。今は南南東の方角80キロの地点にいるみたい」


「いつも思うんだけどアイナの力の方がこの結界より強いんだ」


今、試験のために防音、防衝撃、防遠隔視の結界が張られているはずなんだけどなんでその中からアイナは見つけられるんだろう?


「本気出せばアイナの遠視くらい防げるけどそのための魔力がもったいないでしょ?そこまでの魔力つかわないでもアイナ以外から見つけられる心配はないんだし」


クリスが言う。まあその通りだね。見られて困るようなこともしないし。

あ、女子と宜しくするところは見てほしくないんだけどね


「まあそりゃそうね。じゃああたしはリーリングアイシェに合流するわね。伝言ある?」


「いいえ、特には。あ、そうですね、ルクシアにあとでもいいのでエルダバウムに行くように伝えていただけます?」


「それだけでいいんですか?」


「はい、ルクシアならわかってくれますから」


まあ詳しく言わなくてもいいなら問題ない

じゃあさっさと行きますかね、エルフのお嬢ちゃんも心配だしね





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