第一話 黒の聖女は動き出す
新作です。といってもこいつは書き貯めしていた次回作なんですが
八百万の方が書き貯めなく現状リアルが忙しすぎで満足に執筆できないために公開いたします
基本毎週水曜日 朝八時更新
でもあっちも終わるわけじゃないんだからねっ←フラグ?W
夜の帳が下りて数時間
田舎などは月明りしかない夜ではあるがここ、フランガルム王国、そして首都は豊かなようで町、そして室内にも明かりが灯っている家々が多い
特に貴族屋敷は魔石ランタンの明かりの途切れることが無いというのが実情である。
その中でも大きな屋敷、その一室に数人の男女が詰めている。
一人は身なりの立派な紳士といった風情。おそらくこの屋敷の持ち主なのかとても自然にリラックスした様子で椅子に座っている。そしてテーブルをはさんだ下座には少し小太りではあるがその実損得を見抜くような鋭い目つきの男が座っている。そして彼らの背後にはそれぞれ屈強な男が一人づつ。彼らの護衛であろう。
最後に下座の男の護衛が握っている鎖につなげられた少女が一人。
年の頃は13,4といった印象。長い金髪にくらく沈んで光を失った碧の瞳。
服は薄布のワンピースのみで素足で立っている
笑顔になればだれもが振り返る美少女であるが今は後ろ手につけられた手かせもあり動くことすらつらいといった風である
「では伯爵様、ご依頼の奴隷でございます。実年齢15歳、処女にして貴重なエルフ。魔力鑑定。隷属鑑定も行いましたので間違いはございません」
「うむ、ツポレフ。何時も助かるよ。これは今回の礼金だ少し色も付けておいた。また頼むよ」
そう言うと伯爵と呼ばれた男の後ろにいた護衛がテーブルの上に麻袋を出す。
「失礼いたします。商人の性でして金額の確認は必ずしておかねば落ち着かないものでして」
そう言い麻袋を開くツポレフ。
「ああ、構わんよ。お互いに信用が大事だからな」
そう言いワインを飲みながら金勘定するツポレフと暗い表情の奴隷少女を交互に眺める伯爵
因みに入っているのは白金貨300枚。この少女一人に表家業の半年分以上の金額を受け取ったのである。
必死に数えているとテーブルから一枚金貨が落ち窓の方へと転がっていく。
数えるのを中断し必死に追いかけていくツポレフ
窓の手前で追いつき大事そうに拾い上げる
「この一年で一番必死な形相だったんじゃないか?」
「おっしゃる通り。ですが白金貨であれ銅貨であれ。私にとっては等しく大事な金ですからね。必死になろうというものです」
「商人とはかくあるものなのかもしれんな」
「はい、そのような・・・」
言いながら一歩踏み出そうとしたツポレフ
だが同時に鋭い音が数発続き、部屋内の魔石ランタンが全て壊れ一瞬皆の視界が暗転する
「動かないで!」
何かが倒れる音が下かと思うと見しらぬ女の声がする。
声は先程ツポレフのいた方向から。残る四人の視線がその方へ向くとうっすらと人影が見える
そこにはツポレフとは違うシルエット
細い人影に髪は耳のあたりまで。声から女性とはわかるが手には薄く光を放つナイフを持っているだけである
何かを踏んでいるようだがそれがおそらくツポレフだろう
「アーリントン伯爵。王国法第78条人身売買の禁止、および誘拐罪において貴方を拘束逮捕します」
「何を戯言を女ごときが。」
そういうや否や護衛らしき男たちが動き出す。女ごとき屈強な護衛の敵ではない。細くていい女ならまた慰み者にすればいいだけ。伯爵はそう考えていたがその考えは数秒後に瓦解する
先に取り押さえに入れたのはツポレフの護衛。だが掴んだと思った瞬間その護衛は自分の護衛と共に壁に叩きつけられていた。
平然と立つ女
「なにをした?女?貴様魔女か何かか?」
「なにも?ただの護身術。その辺の痴漢相手のことしかしてないわよ?」
実際に使ったのはただの柔術の四方投げである。ただしそのような物のないこの世界には受け身などはなく男たちはそれぞれ90キロはある物体で殴られたような衝撃を受けて伸びているだけであった
「待て、女!何が望みだ?金?栄誉か?そうだ、それだけの腕があるんだ私専属の護衛にしてやろう。愛人兼護衛でその辺の男爵レベルの給与は出せるぞ」
「愛人?」
嫌悪感を乗せて聞き返す女に好機と思いさらに条件を畳みかける伯爵
「ああ、そうだ。この奴隷を見ればわかるだろう?私は本来胸のない女性が好きなんだ。だが正妻や貴族など大方は胸の大きな女性ばかり、義務として子供は作ったがそれ以上は我慢ができないのだ。
その点君は胸もなく強い私の子飼いにするには十分だ。いや、第一秘書として公的に取り上げてもいいどうだね?」
「かっちーん、ときましたね」
光るナイフをしまったのか見えなくなり右手を差し出す女。交渉成功かと喜んで立ち上がり手を差し出そうとしたとき
「あんた馬鹿なの?」
女がそう言うと伯爵の両肩、そして大腿骨の付け根と衝撃が走りその場に倒れ込む
「ああ、こいつらも動かれちゃ厄介ね」
そして護衛、商人にも腕を向けると急に叫びのたうち回り始める男たち
少女は何が起こったのが全く分からず立ち尽くすだけであった。
「いい?お嬢ちゃん」
いつの間にかそばに来て女が耳元でいう。
一瞬警戒はしたが彼女は恐ろしい人ではないと思える雰囲気があった。
即座に警戒を解く少女
「いい子ね。たぶんもうすぐ騎士団が来るから証拠でこの手枷はつけたままにさせてもらうわね。そいつらには本当のことを言っても大丈夫。帰る場所があるならきちんと送ってもらえるからね」
「あの?おねーさんの名前は?」
「あたし?名乗るほどのものでもないわ」
「でも!お名前がないとその騎士団の人にどう説明したらいいのか」
「ああ、その心配ならいらないわよ。大丈夫。黒い女の人っていうだけで通用す・・」
廊下の外を数人の人間が集まる気配がし言葉を切り少女をかばう女
ほぼ同時に扉がけ破られ甲冑を着た騎士たちがなだれ込んでくる
「王国近衛騎士団第3部隊リック・エランドー。アーリントン伯爵!王国法背任罪にて貴公を逮捕する。神妙に・・」
「遅いわよ?筋肉バカ」
「な?誰が筋肉バカだ?!!っていうか貴様!黒の聖女!!」
「黒の聖女ってあたしの顔が見えるわけでもないのによく断定できるわね。」
「それこそだな、俺が貴様の声を忘れるわけないだろう?何より俺をバカというのはお前だけだ」
「あんたの周りの人たちみんな気を使ってるのね」
「何だと!」
「やかましいわね!筋肉バカ!」
「黒の聖女・・」
「そ、名前無くてもちゃんとあたしのことってわかってくれるから大丈夫だったでしょ?」
「ちょうどいい。ついでに貴様も王国騒乱罪で捕縛する一石二鳥とはこのことだな」
「だから脳みそ筋肉って言われるのよ。今必要なのはその伯爵とこの足元のごみそしてこの少女の保護でしょうが」
「何?貴様とうとう誘拐にまで手を」
「やかましい!脳筋は難しいこと考えずにさっさとお仕事しなさい!それじゃあたしは帰るわね」
バイバイといって素早く動くと開いている窓から飛び出す女。
「おいバカ!ここは三階!」
そう言って窓に駆け寄る騎士だが当然姿はない。落下死体がないことに一応の安堵をし再び表情を作って振り向く
「お前たちはこいつらの捕縛だ、現場は現状維持のまま封鎖、別働人員が到着するまでこの部屋、および屋敷に立ち入りを禁止する」
敬礼して従う部下即座に男たちを運びそして執事などに話を通していく
「あとお嬢ちゃん、すまないが詳しく話を聞きたい。少し怖く思うかもしれないが王国騎士の名に懸けて君の安全は保障する。」
「はい、わかりました。」
「すまないな、本来は女性騎士にでも来てもらうんだが急なことだったんでな。そういえば君は俺たちが怖くないのか?」
「はい、騎士さんですし、それにあの人、黒の聖女さまが今からくる騎士さんたちには本当のことを言っても大丈夫って言ってくださったので。信頼してます」
「そうか、すまないな」
その辺りにあったコートを羽織らせ頭をポンとたたき少女を連れて行く。
「信頼ね。俺達じゃなく黒の聖女にか。だが大丈夫っていうとはあいつ俺たちをなめてるのか?」
思考は黒の聖女を憎むように動いていたが本人は口元が緩んでいたことに気が付いていなかった