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異なる世界の近代戦争記  作者: 我滝 基博
第4章 ヒルデブラント要塞攻防戦
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4-22 2回目の戦い

 日が落ちる前の夕方、第11独立遊撃大隊は2箇所目の攻撃目標へ奇襲を敢行した。


 兵士達は1度、戦場を体感したのもあってか、動きは前回よりも良かったが、敵も前回の攻撃から次の攻撃がある事を予測して迎撃の準備を行っていた為、より早い対応を示し、エルヴィンもより早い撤退命令を出す事となった。


 そして、またも日が落ちた暗闇に紛れて敵の追撃を振り切ったエルヴィン達だったが、陣地への帰路、兵士達の表情に曇りは無く、昨日とは反対に、先の戦闘における自分の武勇伝を語るようになっていた。



「俺、敵兵1人殺したぞ!」


「たった1人か? 俺は2人も殺せたぞ!」



 兵士達の命を軽視した発言を聞いたガンリュウ大尉は、その兵士達を睨み付け、兵士達は一瞬、恐怖でピクリッと身体を震わせ、口を(つぐ)んだ。


 第11独立遊撃大隊の兵士達にとってガンリュウ大尉は、訓練の厳しさから、大隊長以上に恐れられていた。更に、今回の戦いで敵、合わせて50人近くを1人で打ち取っている事により、恐れの度合いが数倍に膨れ上がっており、部隊で彼に逆らおうなどと思える兵士は1人たりとも居なかった。


 しかし、



「ガンリュウ大尉、凄いよな」


「ああ……あんな強い人が上官だと心強い」



 恐怖というのは必ずしも兵士達にマイナスな効果を与えるモノではなく、統率力を上げる為には必要不可欠とも言える要素だ。更に、その恐怖が性格からだけではなく、強さによる物も含まれているならば、兵士達の憧れの的となりえ、尊敬と畏敬の念を抱かせるようになる。ガンリュウ大尉は正にこの状態であった。



「ガンリュウ大尉が副隊長で良かったよな」


「スッゲェ厳しいけどな!」


「大尉が大隊長だったら良かったんだよ」


「そうだよな……何せうちの大隊長は……」



 ガンリュウ大尉が兵士達に認められた一方で、エルヴィンへの尊敬の暴落は(とど)まる気配が無かった。


 先の戦いで敵拠点の攻略に失敗した3部隊の1つ。しかも大隊長の早々の撤退命令による敗北。それを2度も作り出したエルヴィンに、兵士達は不満を覚えていたのだ。


 前線で奮闘し活躍したガンリュウ大尉。後方の安全な場所で悠々と撤退命令を出したエルヴィン。どちらが指揮官に相応しいか、兵士達には明白だったのである。



「まったく、早々に逃げるとは……帝国軍人の恥さらしだな」


「逃げなければ、もう少し活躍できたのになぁ……」



 兵士達がエルヴィンへの不満を漏らす中、ガンリュウ大尉は黙ってそれを聞いていた。

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