4-15 2人の少女
楽しく会話をしている内に、配給場所へと着いた2人は、列の長さも短くなっていたので並ぶことにした。
すると、そこにはアンナの姿も見えた。食事の配給を受け取りに行った筈のエルヴィンが余りにも遅いので、探しに来ていたのだ。
アンナはエルヴィンがやって来たのに気付くと、少し呆れた様子で近付いて来た。
「エルヴィン、まだ食事を貰っていなかったんですか? 早くしないと出発時間に間に合い……」
エルヴィンと一緒にいる少女に気付いたアンナは、眉をひそめながら言葉を噤んだ。
「エルヴィン、彼女は?」
アンナがメールス二等兵を凝視しながらエルヴィンに尋ねると、メールス二等兵は畏まった様子で、体の向きをアンナの方に向け、綺麗な敬礼した。
「衛生兵小隊所属、シャルロッテ・メールス二等兵です!」
アンナは、メールス二等兵のしっかりとした挨拶を見て、感心した様に微笑んだ。
「若いのに、ちゃんと上官へと敬意を示せるのは良い事です。これからも、その様な態度を心掛けて下さいね?」
「はい!」
「それに比べて……」
メールス二等兵に向けるものとは打って変わり、アンナは目を細めながら、エルヴィンに視線を向けた。
「ん? なんだい?」
何も気付いてすらいない彼に、アンナは大きく溜め息を吐く。
「エルヴィン、一般の兵士……しかも、女性の兵士と2人きりで行動するのは止めて下さい! ただでさえ現在、部下達からの信頼が無いのを、更にあらぬ噂が立ったらどうするんですか! 部下からの信頼ドン底に沈みますよ? もう少し隊長としての自覚を持って下さい!」
「大げさだなぁ〜、それぐらいで揺らぐ信頼なら、私の信頼はとうに地の底だよ。それに、それなら尚更、部下との交流を大事にした方が良いと思うけど?」
平然とした笑みを浮かべつつ、エルヴィンに珍しくまともな反論を述べられ、アンナは少し狼狽える。
「それ……その……そう、ですね…………」
少し悔しそうに口を噤むアンナ。珍しく、今回はエルヴィンが言い負かしたという証拠であり、彼は嬉しそうに、勝ち誇ったようにガッツポーズした。
すると、またもメールス二等兵は思わず笑ってしまう。
彼女の笑い声に驚いた2人は、キョトンッと思わず彼女の方へと視線を向けた。
「メールス二等兵、如何したんですか?」
「すいません、御二人のやりとりが面白くて、つい……」
そう告げられた2人は、思い返すと子供の様なやり取りだった事に気付き、少し恥ずかしそうに、苦笑を浮かべるのだった。
その後、3人は食事を受け取ると、メールス二等兵は部隊に戻り、2人はその後ろ姿を眺めながら彼女を見送った。
そして、アンナは、メールス二等兵のエルヴィンに対して好意的な様子が気になった。
「エルヴィン、メールス二等兵と何を話していたんですか?」
「えっと……君と恋仲なのかとか聞かれたよ」
「ふ〜ん……エルヴィンはなんて答えたんですか?」
アンナは表情は関心が無いように見せながら、耳は興味深そうに傾ける。
「家族、姉の様な存在って答えたよ」
「姉、ですか……」
エルヴィンの答えに満足はしなかったアンナだったが、悪くない答えだと思い、少し嬉しそうな笑みを浮かべた。
「恋仲だって事は、直ぐに否定したから安心して良いよ?」
アンナの感動は呆気なく砕かれる。
そして、彼女は少し黙り込むと、エルヴィンの足を思いっきり蹴った。
蹴られたエルヴィンは、少しよろめきながら、受け取ったばかりの食事、缶詰などが入った箱をなんとか地面に落とさず、踏ん張って倒れずに済ませ、直ぐさまアンナの方を振り向いた。
「な、何をするんだ!」
「……馬鹿…………」
アンナは誰にも聞こえない声で、少し拗ねるようにそう呟くのだった。




