4-7 大将達
ヒルデブラント要塞にて、大将以上の将官が会議室の１室に集められ、７人の将軍が１つの長方形状の机を囲む形で座っていた。
正面中央に
総司令官グラートバッハ上級大将、
その右隣に
総参謀長ブレーマーハーフェン大将、
左隣に
ヒルデブラント要塞司令官ライプツィヒ大将、
右列の奥から
第３軍団長ケムニッツ大将、
第１０軍団長エッセン大将、
左列の奥から
第８軍団長ゾーリンゲン大将、
第１１軍団長クレーフェルト大将。
席に着く７人の将軍達。先程の作戦会議に参加していなかった５人の大将達からすれば、今から話される内容に見当が付かず、不安によるものか緊張感が流れている。
「閣下、何故、我々が召集されたのでしょうか？ 開戦から２日で、この様な会議が行われるのは異例ですが」
緊張感に耐えかね、ケムニッツ大将が最初に口を開いた。
「それを今からお話します」
ブレーマーハーフェン大将はそう告げると、将軍達の様子を一通り眺め、本題に入った。
「先程、参謀士官達との作戦会議で、ある事案が上がりました。敵が、要塞近郊まで鉄道を引いた可能性があります」
将軍達に緊張が走る。
「それは確かなのですか？」
クレーフェルト大将が困惑と疑惑を携えつつ口を開いた。将軍達全員、予想外の事を信じきる事が出来なかったのだ。
「まだ確かではありません。しかし、複数の参謀士官、小官、そして……グラートバッハ上級大将閣下も、その可能性が高いと睨んでおります」
グラートバッハ上級大将。その名が出た時点で、将軍達の半信半疑は確定的な物へと変わった。
この場にいる将軍達全員、グラートバッハ上級大将が名将であり、独断と偏見だけで判断をしない事が承知の事実だったからである。
「しかし、そうなると……閣下の立てた策の前提条件自体がひっくり返ります。しかも、敵の援軍が最悪、此方よりも早く到着する可能性がありますね……」
ライプツィヒ大将の指摘を最後に、将軍達は黙って考え込み、会議室が重い空気に包まれた。
帝国本土から要塞まで、帝国も物資輸送の為の鉄道を敷いている。
しかし、援軍を編成し、招集するまでには、どうしても時間が掛かってしまう。
もし、共和国軍が既にそれを済ませ、援軍を送って来た場合、帝国軍は、援軍も含めた共和国軍と戦わなければならなかったのだ。
それを危惧した将軍達は黙り込み、深刻な表情をしながら現状の打開策を考え始める。
そんな中、只１人、平然としている者が居り、彼は嘲笑混じりの不敵な笑みを浮かべた。
「帝国軍の名だたる将軍達が、鉄道ごときに臆するとは……いやはや、老いましたかな？」
人を小馬鹿にする口調でそう呟いたのは、第８軍団長ゾーリンゲン大将だった。
