2-15 親友と
学年が違い、性格も違うエルヴィンとルートヴィッヒ。しかし、2人は、他者から変人奇人と称される点で共通している為なのか、別の要因によるものかは分からないが、何かと息は合った。その為、学内では2人で行動することが多かった。
ルートヴィッヒは平民出身だが、両親に捨てられ、貧民街の孤児院で育った。士官学校へは、軍に入って、たんまりと稼ぐために入学したらしい。
確かに士官学校を卒業すれば准尉から始められ、出世コースは歩み易いだろう。
しかし、ルートヴィッヒは成績は優秀だったのだが、素行不良の不真面目だった。
規定時間外の外出、講義の無断欠席、遅刻の過多。エルヴィンとはまた違う意味で落第寸前だった上に、退学1歩手前といった状態であったのだ。
落第、退学となれば軍では1兵士、一等兵から始めなければならなくなる。士官学校へ入った意味が無くなるのは言わずとも知れた事だろう。
そんな危機がルートヴィッヒを襲っていたある日、ふと、彼はエルヴィンが領地持ち貴族の嫡男、つまり、後の1地方軍の最高司令官である事を思い出した。
そして、彼は図々しくもエルヴィンにある御願いをする。
「もし、俺が士官学校を退学になったら、エルヴィンの所で雇ってくれねぇか?」
「退学になる前に素行不良どうにかしなよ」
「いや、ごもっともなんですけどね。……もしかしたら、万が一があるでしょう? だから……な、頼むよ!」
結構ロクでもないお願いをするルートヴィッヒだったが、エルヴィンは呆れつつも断る理由もないので首を縦に振る。それに、ルートヴィッヒはこれ見逃しに盛大なガッツポーズをその場で決め込むのだった。
世暦1912年4月28日
エルヴィンの士官学校人生最後の試験、学校を卒業出来るか確定する重大な試験が迫っていた。
しかし次に、エルヴィンは未だに戦闘系の分野がからっきしで、卒業出来るには程遠い成績であった。
銃を撃っても当たらず、魔術は全く身に付かず、実践を仮定した1対1の戦闘は完膚なきまでに全敗し続けていたのだ。
一方、ルートヴィッヒは戦闘系の分野を逆に得意としていた。
射撃は学年トップクラス、魔術の才は10年に1人の逸材とされ、実践を仮定した1対1の戦闘は見事に無敗全勝の記録を叩き出していたのだ。
となれば当然エルヴィンの行動は決まってくる。彼は、何とか卒業する為、ルートヴィッヒに戦闘系の稽古をつけて貰う事となった。
世暦1912年5月24日
エルヴィンはなんとか試験に合格した。
不合格スレスレではあったものの、エルヴィンとルートヴィッヒは、肩を組み会いながら喜ぶ事は出来たのだ。
「エルヴィン良かったな! 俺が戦闘技術を教えた甲斐があるってもんだ! 合格スレスレだったのは気になるが……」
「来年は君だね。不良行為で退学になるなよ?」
「精々、努力しますよ」
この後も終始ご機嫌のままだった2人は、夜、近くの店で合格祝いを挙げるのだが、まるで自分の事の様に喜び、騒ぐルートヴィッヒを眺めつつ、エルヴィンは彼と友人になれた事を改めて喜ばしいと、嬉しいと感じる事が出来た。
お祝いの帰り、ルートヴィッヒはエルヴィンと途中で別れ、いつもの様に女性達と一夜を共にす事となり、エルヴィンは1人でではあったが、合格した嬉しさと、それを一緒に祝ってくれる友人が居る事に、幸福を感じながら寮へと戻った。
寮へと戻ったエルヴィン。このまま幸せな気持ちのまま1日が終わると思っていた彼に、寮父から1枚の彼宛に届いた手紙が手渡される。
手紙の内容に検討が付かないエルヴィンは、自室へと戻ると、早速手紙の中身を確認した。
その瞬間、エルヴィンの心は幸福から絶望へと突き落とされ、手は震え、顔は青ざめさせられしまう。
手紙にはこう書かれていたのだ。
"オイゲン・フライブルク大将、戦死"と




