1-20 罪を背負い
大佐の死と共に、少しずつ共和国兵の抵抗は弱まっていき、10分後には完全に沈黙した。
壮絶なる戦いの後、戦場には多数の共和国兵による死体の海が広がり、帝国兵はそれ等を眺めながら、残兵への警戒を続ける。
そして、そんな中で、エルヴィンは1人、ある共和国兵の焼死体を見ながら立ち尽くしていた。
その兵士の手には、兵士の家族が写っている思われる半分焼けた写真が握られていたのだ。
「エルヴィン、そこに居ましたか!」
アンナはそんなエルヴィンを見付け、近付くと、彼は元気のない声で呟く。
「人を焼く……そんな行為は戦争であれ罪人の処刑であれ、とても許されるものじゃない。焼かれた者達は死ぬまで、全身を焼かれる苦痛にもがき苦しまなければならない。そんな行為を平然とやれる人は、最早、人なんて呼べないな……」
エルヴィンは、心配そうに自分を見詰めるアンナに気付くと、苦笑いしながら頭を掻いた。
「こんな事を言っても仕方ないね。すまない、忘れてくれ……」
罪悪感、それを笑みで誤魔化すエルヴィン。そんな少し痛々しい彼の様子に、アンナは慰めの言葉を頭に浮かべた。
しかし、口には出せなかった。
慰めの言葉は全て、只の綺麗事でしかなかったからだ。
「取り敢えず、最初の作戦は成功しましたね……」
「そうだね。予想外の敵の猛攻はあったけど……取り敢えずは成功と言えるね」
「しかし、これからです。私達が全滅すれば、元も子もありません」
「その通りだ。そろそろ、次の作戦に移るとしようか」
エルヴィンが味方全員に指示を出すと、帝国兵達は森の中へと消えていった。
焼き殺した、数多の罪を背負いながら。




