5-8 囚人
列車後方、4両の貨物車の後ろから2番目。その中で、ヴッパタール大将暗殺の罪人、オッフェンブルク元大佐は、椅子に繋がれ、後ろで両手に手錠を嵌められながら、20人の帝国軍憲兵に囲まれ、帝都まで輸送される最中だった。
「あ〜っ、腹減ったなぁ…………飯は未だなのか?」
「黙れ! 罪人が軽々しく口を開くな‼︎」
「ヘイヘイ……」
憲兵隊長に叱責され、オッフェンブルクは苦笑を浮かべた。
エドガー・オッフェンブルク、30代後半の男で、服は帝国正規軍の物だが、長年牢に繋がれ、新たな服も与えられず過ごしていた為ボロボロであり、髪も切らずに肩まで伸び、口髭と顎髭も整えられる事なく小汚く付属されている。
「まったく……身嗜みぐらい整えさせて貰いたいものだ。服も囚人服でも構わんから、洗濯された綺麗なものを着たい。やれやれ……これじゃあ共和国の捕虜になった方が何倍かマシだぜ?」
「だから口を開くなっ‼︎ しかも、帝国の不敬に当たる発言をするなど、元帝国軍人として恥を知れ‼︎」
「何を言うか……帝国に愛想が尽きたから、暗殺事件なんか起こしたんだろうが…………」
その瞬間、オッフェンブルクの頭蓋に強烈な衝撃が走り、頭から血が流れ落ちた。
憲兵の1人が、小銃で彼の頭を殴ったのだ。
「貴様、身の程を弁えろ! 貴様は罪人だ! 殺す事は許されていないが、手足を引きちぎる許可は得ているのだぞ? それを行使して欲しくなければ大人しくする事だな……」
憲兵隊長はニタリと見下す様な笑みを浮かべる。
「もっとも……帝都に着き次第、処刑される貴様には関係ないか……」
憲兵隊長の嘲笑混じりの笑いに始まり、それに吊られ、20人の憲兵全員がオッフェンブルクに嘲笑の笑いを向けた。
「胸糞わりぃ……」
自分に向けられる笑いに、オッフェンブルクは不快感のあまり唾を床に飛ばし、その後、更なる暴力を、彼は味わう事となった。




