4-96 退き際
シャルの新たなファンとなった第8軍団の兵士達。その中で、とりわけ冷静だったレムシャイト軍曹は、シャルがかなり限界そうなのを察し、仲間達と共に退く事にした。
「さぁ、皆さん! そろそろ戻りましょう!」
「「「えええええええええっ!」」」
「ちょっと早くないですか?」
「そうだ! もっとメールスちゃんと居させろ!」
口々に、ブーイングと文句をぶつける兵士達。何としても居続けようとする彼らに、レムシャイト軍曹は溜め息を吐いて、言った。
「皆さん……メールス二等兵に嫌われても良いんですか?」
それを聞いた瞬間、全員が瞬時に固まる。
「このままだと、メールス二等兵を泣かせる事になります。私達が泣かしたという事になります。泣かした相手に、好感など持ちますか?」
「いや……」
「まぁ……確かに……」
「好感を持たれないという事は、嫌われる可能性が上がるという事です。皆さんは、大好きな彼女に、嫌われる事を容認できるのですか?」
「無理だ……」
「そうなったら死ねる……」
「でしょう? だがら、今回はこの辺で引き上げましょう。同じ軍の仲間なのですから、またの機会に会えば良いでしょう?」
レムシャイト軍曹に諭され、一様に下を向く第8軍団兵士達。シャルに嫌われたくない彼らは、皆、シャルとのひと時の別れを惜しみつつ、渋々、テントを後にしていく。
そして、最後に残ったレムシャイト軍曹は、去り際、シャルへ丁寧に非礼の御詫びを述べ、彼女は戸惑いながらも「別に気にしなくて良いです」と告げると、軍曹も、改めての再開を約束しながら、テントの後にした。




