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異なる世界の近代戦争記  作者: 我滝 基博
第4章 ヒルデブラント要塞攻防戦
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4-79 敗北を運ぶ鉄箱

 自走できる砲、それは未知の兵器であり、目の当たりにした帝国軍は当初、動揺した。


 しかし、それは杞憂(きゆう)であるのだと、帝国兵達は直ぐに察知する。


 自走できる砲、その速さはそれ程、速くはなく、帝国軍には、大砲と同等の攻撃が出来る、魔導兵が居たからだ。


 帝国軍の魔導兵達は、こぞって[ファイヤーボム]の詠唱を始め、それを終えた時、複数の炎の球が、戦車目掛けて飛んで行く。


 高温灼熱の球、しかも、爆発する大きな球、それが直撃すれば、流石の戦車の装甲でも、貫き、大破するのは明白、の筈だった。



「なっ!」


「どうなってやがる……」



 炎の球は破裂すらしなかった。炎の球は戦車に当たった瞬間、まるで、戦車の装甲に吸い込まれる様に消滅したのだ。


 そんな馬鹿げた、あり得ない光景に帝国兵達は唖然とする。


 しかし、敵は着々と近付いている。その事実が変わらない以上、戦車を破壊し、後方の敵を殲滅せねばならない。



「魔法がダメなら、あの鉄の箱に乗り込むまでだっ!」



 複数の勇気ある帝国兵がそう叫び、塹壕から飛び出し、戦車目掛けて駆け出した。


 しかし、戦車の下部から、重機関銃による攻撃が、勇気ある帝国兵達を襲い、通常兵は一撃で、魔術兵は複数の弾丸を受け、命を落としていく。


 勇気ある帝国兵の内、(かろ)うじて生きて戻ったのは、たったの3人であった。


 魔法も効かず、近付こうにも重火器が邪魔をする。戦車を攻略する手立てを、帝国軍はこの時点で持ち合わせていなかった。


 戦車を破壊できず、それに守られながら迫り来る敵に、何も出来ず苦々しい思いに苛まれながら、戦車から襲い来る一方的な砲弾という暴力に、帝国兵達は次々と散っていく。


 そして、共和国軍が塹壕に差し掛かった時、熾烈(しれつ)なる殺し合いが再開された。

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