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異なる世界の近代戦争記  作者: 我滝 基博
第4章 ヒルデブラント要塞攻防戦
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4-66 人望

 2人がフュルト中尉について悩んでいた時、1人の男が副官を連れ、ガンリュウ大尉達の下を訪れる。



「ガンリュウ大尉、此度(こたび)は見事な働きだった!」



 アウグスティン・エアフルト中将。今回の戦いで第10軍団を前線で指揮した将であり、エッセン大将の参謀長でもある。


 中将の突然の来訪に、ガンリュウ大尉は少し驚いたが、直ぐに礼節を持って挨拶を交わした。



「エアフルト中将、御褒めに預かり光栄です」


「いやいや、優れた働きは賞賛すべきであるし、貴官はそれに値する働きをした。当然の行為というものだ」



 笑みを浮かべながら賛辞を述べるエアフルト中将。



「貴官程の強者が居たとは……貴官さえ良ければ、我が部隊に欲しい所だ」


「ありがとうございます。ですが……それに応えることは出来ません」


「そうか……それは残念だ」



 真摯に残念そうな表情を浮かべるエアフルト中将。それに対し、ガンリュウ大尉は珍しく良識的な司令官だと、高い評価を持った。


 しかし、次に彼から発せられた言葉に、その評価は濁らされる事となる。



「しかし、貴官程の人物が、あんな"ボンクラ"の部下とは……いや、嘆かわしい限りだ」



 エルヴィンへの嘲笑を含ませた発言に、ガンリュウ大尉は一瞬、眉をしかめた。



「あの、フライブルクとかいう貴族の小僧……何故あの様な奴が、あの歳で少佐なのか……我等が帝国の人事部も無能揃いという事だろうな」



 第10軍団の参謀長であるエアフルト中将も、当然エルヴィンとエッセン大将の言い争いの場に居合わせていた。そして、大将の部下である以上、彼を擁護し、エルヴィンを非難する立場にあったのだ。



「場所と立場を弁えず、貴族の無駄な自信を持って、不相応にも作戦にまで口出しするとは……やれやれ、これだから貴族は……」



 エルヴィンを堂々と馬鹿にするエアフルト中将。それに対し、周りで鼓膜を不快な音に揺らされたエルヴィンの部下達には、不快感が現れる。



「エアフルト中将、そこ迄にして頂けませんか?」



 第11独立遊撃大隊の仲間達が不快感を抱く中、意外な事に、真っ先に中将に言葉を投げかけたのはガンリュウ大尉だった。



「どうしたのかね?」



 ガンリュウ大尉に視線を向けたエアフルト中将。すると、彼の顔には動揺の表情が溢れ始める。


 ガンリュウ大尉が鋭い視線で、中将を睨んでいたのだ。



「いえ……流石に、うちの大隊長を侮辱されるのは、気分が悪いんですよ……」



 ガンリュウ大尉の視線に冷や汗を流しながら、目を逸らそうと辺りに視線を向けたエアフルト中将。

 しかし、そこにも、エルヴィンへの侮辱に怒りを表した、ジーゲン中尉も含めたエルヴィンの部下達が、彼を睨んでいた。


 それに最初は戸惑っていたエアフルト中将だったが、直ぐに冷静さを取り戻す。


 あの男、いけ好かない奴ではあるが、部下からの人望は厚いのか……。


 意外な事実に気付きながら、エアフルト中将は、確かに自分の言葉は非礼に過ぎたと、反省の色を示す。



「少し度が過ぎた悪口だったな。大尉、申し訳ない……」



 謝罪するエアフルト中将に、怒りを消したガンリュウ少佐達。


 そして、冷静に戻った彼等は、逆に、将軍の地位にある方に謝罪させてしまった事を、少し反省するのだった。

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