4-51 帝国軍本隊にて
司令部からの命令を受けたエルヴィン達は、帝国軍本隊3軍団の1つ、第10軍団と合流し、後方陣地に待機していた。
しかし、ガンリュウ大尉は、今回の命令の意図を未だ測れず、眉をひそめる。
「司令部からの命令で、第10軍団と合流したが……グラートバッハ閣下の得意戦術、敵補給の攻撃を切り上げてまでの合流……どうも腑に落ちない」
「まぁ、確かにそうだね。無駄だと考えたか、味方の損害が大きかったか、それとも……必要がなくなったか。閣下直属とはいえ、1部隊でしかない我々には、戦況はあまり教えて貰えないからね。噂を吟味して推測するしかないさ」
皮肉を込めて、そう呟いたエルヴィン。それに、ガンリュウ大尉は尤もだと無愛想のまま頷く。
「ところで、第10軍団長エッセン大将には挨拶しに行ったのか?」
「行ったんだけど……不在だったんだ。どうやら司令部で、大将を集めた会議をしているらしい」
「その時に、残っていた幕僚達から、何かしらの情報は得られなかったのか?」
「大した物は得られなかったけど……一応、此方が優勢らしいという事だけはわかったよ」
「優勢なのか? そうか……」
味方が優勢。その情報を聞きながらも、ガンリュウ大尉に実感が湧く事はなかった。
第1に本隊の戦いに参加していなかった事。第2にやはり、全体的な戦況について何も知らされていなかった事。それ等が原因であった。
しかし、取り敢えず、劣勢ではない事を知れたのは、ガンリュウ大尉に安堵感は与えた。
「劣勢ではないなら、まぁ良い……そう言えば、フェルデン少尉は一緒じゃないのか? まさか……また仕事を抜け出したんじゃないだろうな」
疑いの目線を向けるガンリュウ大尉に、エルヴィンは苦笑を浮かべる。
「今日はそんな事してないよ。アンナなら私のテントで書類を片付けて貰ってる。私もこれから戻るつもりだよ」
「なら良いが……今日はやけに素直だな。普通であれば、書類から逃げる所だろう?」
「毎回、逃げてる訳ではないよ。まぁ……今日はちょっと罪悪感もあるからね」
「罪悪感?」
「昨日、アンナに……ちょっと怒られてしまってね……」
「いつもの事だろう」
「いや、昨日のはちょっと違うというか……本気だったというか……何というか……」
少し滅入った様子で苦笑いするエルヴィン。昨日アンナに怒られた事が意外に効いている様である。
その様子を見て、ガンリュウ大尉は「此奴は意外と、フェルデン少尉には弱いのだな」と、表情には出なかったが、軽く面白がった。
「まぁ、何にせよ……お前が仕事にやる気を出すのは良い事だ。これが長く続くと言いがな」
「それは無いね! 暫くしたら、多分、元に戻ると思う!」
「そんなキッパリ言うな! そんなんだから、俺はお前を心から尊敬できないんだ」
手厳しい意見を述べられ、エルヴィンは、またも苦笑いを零し、誤魔化すのだった。




