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くまのみ少年シリーズ

春のお弁当

 3/14 春のお弁当シーズンなので加筆。

 俺はアキ。男だけど男に恋をした。十四才の男だ。今は恋人の蒼大のために女装している。


 何を隠そう、俺は物凄く料理が好きで、子供の頃はテレビ番組で自分のメニューを紹介した事すらあるのだ。

 愛する人に美味いものを食ってもらいたいのは当たり前だろう?


 なので頑張って春のお弁当を考えてみた。


 春というと苦い葉野菜が多いんだけど食物繊維は取れるから、むしろ春は苦い野菜こそ食べるべきだ。

 蕗の薹とかチシャとか、つくしなんかも出てくるな。


 だいたい卵と合わせれば苦味がアクセントになって美味いので、今回は出し汁と卵で綴じた春野菜のプリンだ。

 茶碗蒸しか。固めてみた。


 春野菜の苦味は脂っこい肉と合わせるとスッキリして良いよな。

 牛肉角煮につくしを合わせてみる。なかなか美味そうだ。蒼大喜んでくれるかな。

 時期が五月だからまだ無いが破竹も美味しいんだよな。和風出汁で食べたい。


 せっかく春なのに地味なのは良くないな。ブロッコリーの花が咲いてたから茹でてサラダにしてみた。なかなかに可愛いぞ。酢醤油だけでも美味しいし。マリネって言えば可愛いし!


 春と言えばメバルだな。釣ってきた。恋人のために釣りまでする女はまずいないだろう。俺はいい奥さんになれそうだ。


 メバルは岩場に張り付いていてやたら目が良いので夜釣りが推奨されるが俺は昼に行ったのでガシラ、つまりカサゴがやたらと釣れた。これも煮付けたら美味しいんだよな。捌いて煮付けにする。骨は簡単に取れるから取っておくと良い。

 これが美味いんだ。たんぱく質。

 唐揚げも良い。どちらも作ってしまおう。


 レタスや菜の花でサラダも作って意外と盛りだくさんになってしまったバスケットを持って、蒼大とのデートに向かう。


 ……はぁ、何で俺は女じゃないんだ。今でもそう思う。蒼大に申し訳ない。


 いつか人間の完全性転換を実現するために勉強はしているが、人間はチヌやクマノミほど簡単には性転換できないことが分かっている。

 体の問題なんて女の子でもたくさんあるのに、俺は更に男なのだ。……私を好きでいてくれる蒼大に、本当に申し訳なくて。


 でも蒼大が待ってくれてるので私はすぐに舞い上がってしまう。蒼大ー!


 二人でアスレチックに向かった。自然を利用した遊戯施設で原始的なのに色々と楽しいんだよね。スポーツできないと辛いかも知れないけど。


 二時間ほど二人で駆け回って鳥の声を聞く。雉とかいるんだよな。大きい鳥って自然でいきなり会うとビックリするよな。向こうもビビって飛んでいくけどこっちのが怖いからな! ……雉は取ったら食べられるんだよな。じゅるり。


 春だからウグイスとかが梅の花に集まる。梅が綺麗に咲いている。梅に良く集まるのは実はウグイスじゃなくてメジロなんだってさ。可愛い小さい鳥だからどっちでもいいけど。


 梅、綺麗だなぁ。


 四月になれば桜も咲くし、蒼大と花見も良いかもな。


「アキちゃん弁当作ったの?」


「私料理好きだし」


「スッゲーな。女の子より女らしくない?」


「私より上の女の子はいくらでもいる」


 頑張らないと私では蒼大に釣り合わないからね。色々と努力している。裁縫とかは努力の方向が間違ってる気がしないでもない。


 今回のお弁当は春野菜シリーズだから男の子が喜びそうなメニューは少ない。色合的に合わないかもと思ったがタコさんウインナーとか入れてみたが、明らかに「春野菜弁当」の企画は外している。


 だが、苦肉の策で春野菜入りミートボールを作った。これは勝てる!


 豚肉を包丁で荒く叩いて苦味の少ないチシャを合わせて玉ねぎで甘味を足し、包丁でしっかりこねてまとめて、フライパンで火を通したら甘辛い醤油ダレと水溶き片栗粉でまとめて!


 必殺、春野菜ミニハンバーグなのです!

 苦い春野菜なのにお子さまも大歓喜!


 いや、蒼大はお子様じゃないけどね。運動も勉強もできるもん。


 私って本当に蒼大と釣り合ってないよね。


「う、うめえ。え、これこないだ食べたレストランの料理より美味いんですけど!?」


「意外とレストランの料理は外れがあるんだよね。家庭料理の方が簡単な側面も有るし」


 時間をかけて大人数に美味しいものを作らないと駄目なレストランの料理は失敗が許されないから変に妥協してたり、でも素材の味までは分かってなかったりする。

 ひどかったのはラム肉をタイムだけで臭み取りしてたやつ。タイムは少し焦がしてやった方が良いのにそのまま加えてたからタイムの青臭さとラム肉の青臭さがダブルで襲ってきた。あの料理人がちゃんと料理の勉強をしてないのは明らかだ。


 なので私のメインディッシュはこれだ。


「若鶏の香草焼き」


「へえー。うまそ」


「蒼大お肉好きだもんね」


「うん、間違いねえもんな」


 世の中には肉料理を間違う馬鹿もいるけどね。肉料理は臭みを抑えて香ばしさを加えて塩味を整えればそう間違ったりしない。

 コールドスタートで焼き始めた若鶏のモモ肉に油に絡めたにんにくを加えつつ(ニンニクは焦がすと苦いので早めに取りだそう)、ゆっくり表裏ひっくり返して余熱も計算しつつ焼き、焦がしたタイムと焦がし醤油の香りをつけて最後に塩コショウ。私より上手に鶏を焼く人に出会いたい。


「うめえ!」


「だしょー?」


「握り飯に合うな」


「そうなんだよね、日本人のお弁当は握り飯に合わないと駄目なんだよね。でもお酒にも合うらしい」


「そりゃアキとは成人してからも付き合わないと駄目だな!」


 うん、うん。成人してからも付き合ってよね、蒼大。

 私も頑張って女の子になるぞーっ!






 焦がし醤油も使い方次第ですが良いものですよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 個性的な内容だと思いました。知識がすごいですね。 春野菜の苦味が恋しくなり、最後の鶏料理でヨダレじゅるり。 こんなに美味しそうな料理を作るのなら、僕も恋人男性でいい……かも?(^_^) […
2019/03/27 19:03 退会済み
管理
[良い点] こ、これはよいグルメ……! お料理が全っ部おいしそうで、読んでてしあわせになりました。 暖かくなるのを待って読んだ甲斐がありました!
[一言] ガシラってとこが関西人ですな。春はメバル、同感‼️
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