探す者の話E
炎の中に居た。
焦げと、血と鉄と、肉の焼ける匂いが漂う。
聞こえるのは悲鳴。私の悲鳴。
私はただ、揺れる炎を見つめていて、気が付くと地に堕ちる。
私の両足は無くなっていて、私は何もわからずに生きたまま炎に呑まれていく。
そうしてまた、目が覚める。
何度も見た天井。
何度も見た悪夢。
傍らには、座ったまま眠る親友の姿。
ネネッシュが私の手を握ってくれているのを確かめて、私はもう一度目を閉じる。
私はまた、生き残った。
ネネッシュと、サスティバンと、アイルフィールの主従と、街に住む多くの者たちによって助けられた。
あれからどのくらいの時間が経ったのだろう?
あいつらは、逃げ延びたのだろうか?
それとも、捕まったのだろうか?
状況を確認しなくちゃ。捕まっていないのなら、アイツらを探さなくちゃ。手掛かりは掴んだんだ。私は、アイツの名前を…………――――――
ああ、そうだった。
あれは、夢じゃなかったんだ。
腰から下の感覚が無い。あるのは鈍い痛みだけ。
薬で感覚が麻痺しているのだろう。本来ならきっと、こんな風に思考する余裕すらないだろう。
震えてしまう。怖くて、恐ろしくて。
女が私を解体する様子が、今でもはっきりと思い出せる。
吐き出しそうになって、自分を抑え込む。
あぁ……最悪の気分だ。
どうして自分は、ああも生き急いだのだろう。
何からだって逃げだせる事が、私の長所だったのに。
きっと死が近すぎて、私は怖かったのだろう。迫って来る死の気配に、焦っていたんだ。
それを消し去りたくて、私はまだあの姿を追いかけているのか。
あの治癒士の姿を、生き様を、私はまだ後悔しているのか。
私は、ああなりたかったのか?
分からない。おそらくそうじゃない。
だから失敗した。私がすべきだったのは、戦う事ではなく逃げる事だったのに。
……眠ろう。
どうせ私にできる事はもう、何も無いのだから。
私は、あの人にはなれなかったのだから。
きっと、そういう役割なのだろう。奪われるだけの、敗者なんだ。
暮らしも、家族も、尊厳も、純潔も、最後には身体さえも奪って。世界はこれ以上、私から何を取ろうと言うのか。
もう、嫌だ。
生きたくない。生きていたくなんか、ない。
どうかこのまま、朝なんか来ないで。




