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憂鬱な13No.s  作者: EBIFURAI9
【第四章】彼女の愛したセカイに葬送曲を【下】
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アルフェンの陥落

 光歴一八〇七年、四月十八日。未明。

 バスティア帝国とリアチーヌ王国間で起こった戦争が、リアチーヌ側の勝利で終結を迎えた日。

 それとほぼ時を同じくして、リアチーヌ王国の首都アルフェンは、未曾有の大災害に見舞われていた。

 街の各所で生死体ゾンビが大量発生し、破壊活動を開始したのだ。

 同時に、これの対処に当たるため配備されていた数百機の魔法自律人形が暴走。生死体ゾンビと行動を共にし、市民の虐殺を始めた。


 本来味方であるはずの自律人形の暴走により、軍と憲兵による掃討戦は難航した。

 一旦の鎮圧を迎えたのは、事件発生から実に三日後の事であった。

 死傷者一万七千人を越えるこの災害は、難民、奴隷、市民、貴族全ての階級に等しく大きな被害をもたらした。

 これにより経済活動はほぼ停止。戦争で勝利したものの、リアチーヌ王国はかつてないほどの危機に直面していた。

 軍の要請によって戦場からとんぼ返りとなった"勇者"が、そんな状況のアルフェンにたどり着いたのは、それから更に一週間後の事だった。


 戦争の英雄、『剣戟の勇者』と呼ばれる戦士フミヨシ・ヤマトは、大通りを行く犬車の荷台から、崩壊した街の景色を目の当たりにして言葉を失った。

 かつて高級宿の立ち並ぶ通りとして賑わっていた大通りは見る影もなく、無残に破壊しつくされた廃墟が在るだけのゴーストタウンと化していた。

 道端にはゴミや瓦礫が散乱し、ときおり血を見る事もあった。


「こんなの、ひどすぎデス」


 フミヨシと共に荷台に乗っている少女が、険しい表情で感想をもらした。


「フミヨシ様、いったいここで何があったのデスか?」


 少女の問いに、フミヨシは首を振った。


「分からない。生死体ゾンビの襲撃だと聞いたが、それにしたって規模がデカすぎる……」


「―――っ! 御者さん、停めてくださいデス!」


 フミヨシの言葉を遮って、唐突に少女が叫んだ。

 あまりの剣幕に、御者は慌てて犬車を停止させる。


「ど、どうしました?」


 何事かと、御者は荷台の二人へ振り向いた。

 急停止の勢いに体勢を崩したフミヨシも、少し驚いた様子で少女を見た。


「いきなりどうした。何か見つけたのか、ディナ?」


 ディナと呼ばれた少女は、急いた様子で答えた。


「はいデスっ! あそこに、人の遺体が……」


 ディナは裏通りに曲がる道の角を指さした。

 遺体と聞いて、フミヨシは荷台から飛び降りる。ディナも後に続いた。

 曲がり角まで歩いて行った二人は、見えてきた光景に顔をしかめた。

 細い横道は、おびただしい量の血によって汚れていたからだ。ここが片付けられる前どんな惨状であったのか、想像に難くない。

 そこに、一体だけ腐乱死体が倒れていた。おそらく襲われた住民ではなく、生死体ゾンビの方だろうとフミヨシは見立てた。


「これは、住民の遺体じゃないな。念のため、軍の人間を呼ぼう。迂闊に触れると危険だ」


「っ! 人の頭が転がっているデスよ!」


「なにっ?」


 ディナが通りの奥に更に何かを見つけ、駆け出した。フミヨシもそれを急いで追いかける。

 立ち止まったディナの足下には、彼女の言った通り人の頭部が転がっていた。金色の髪をした、女の物らしき頭部だ。

 しかし、フミヨシはそれを間近で見るなり、首を振った。


「これは……いや、待てディナ。こいつは人の頭じゃない」


「人形デスか?」


「ああ。よく見ろ。顔が割れてるだろう。これは作りモノだ」


 女の顔は、中心から右目にかけての部位が割れた様に抜け落ちていた。その下には骨や筋組織ではなく、機械的な構造物が覗いていた。

 ディナはためらいもなく、両手で人形の頭部を抱え上げた。


「あっ、おい!」


 うかつに触るなと、フミヨシが注意しようとした途端、突然人形から声が発せられた。


「……貴女は、誰?」


「しゃっ、喋ったぁ! あわわっ!」


 驚きのあまり落としそうになるのを何とか持ち直して、ディナはフミヨシの方を見た。

 

「フミヨシ様、これって……」


 怯えと混乱の混ざった表情を向けられても、答えを持ち合わせていないフミヨシは困惑してしまう。


「さっぱり分からん」


 フミヨシは眉をひそめながら首をかしげた。

 二人は恐る恐る、人形の頭部へと視線を落とした。

 言葉を発した怪奇人形は、静かに二人の様子をうかがっている様だった。

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