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俺は彼女を作りたいだけ  作者: 麦猫
5/10

素直に気持ちを認めよ

 次の日。

 教室に入ると紗花(すずは)に絡まれた。


「優人、携帯買ったんでしょ? LI〇E交換しよ♪」


 いきなりの対応に少し驚いたがポケットから携帯を出すとバッと携帯が奪われた。パパッと慣れた手つきで携帯を操作するとすぐに返される。


「はい、登録しといたから♪」


「いや、勝手に触るんかい!!」


 テヘッと舌を出して微笑む。


「変なものとかないしょ?」


「...ないけどね」


 返された携帯を再び取られる。またパパッと操作している。


「ふむふむ、どれどれー♪」


 小悪魔的な笑みを浮かべていたが、携帯に何も無いことがわかるとはぁとため息をついて優人の手元に投げる。


「なんもない。つまんない」


 投げられた携帯をキャッチし、軽く頭を搔く。


「いや、だからないって」


 ギャーギャー言う紗花を軽くあしらってから席に座る。座ると(あおい)が話しかけてくる。


「携帯変えたんだっけ? 優人くん」


「お前もか!! ...ほいよ」


 携帯を葵に渡す。

 携帯を渡された葵は何か困惑していた。


「え、私がやるんだ」


「見られちゃダメなもんないから」


 葵は優人の携帯を操作し終わると優人に手渡しで返した。


 紗花みたいに投げられると思って準備してたー。


「...もうそろだね」


「そうだな」


 今日は林間学校の賛否が決まる。クラスの殆どは賛成に投票したらしい。


 ザーザーっと音が鳴り、放送が始まった。


「皆さん、おはようございます。生徒会監査の御影俊(みかげしゅん)です」


 クラスからおーっと声が上がった。


「林間学校の有無についてですが、賛成票が787、反対票が13で今年度も林間学校が行われることになりました。以上で放送を終わります」


 放送が終わると同時に「芸能科A」の担任木ノ(きのはら)レイが入ってきた。


「みんなー座ってぇー」


 ゾロゾロと自分の席に戻っていった。


「林間学校がー決まったのでぇー今からー2週間後にあるのでぇー班を決めときましたぁー」


 おぉ、仕事が早いな。


 レイが紙を全員に配っていた。紙を見ると班のメンバーが記載されている。


「やったね!! 優人くん」


 後ろ振り返りいきなり手を握ってくる。


「お、おう? まぁ、班が同じだもんな」


 林間学校の班はクラスが女子の方が多いため女子が3、男子が2の班になっている。


 優人の班は、篠宮優人(しのみやゆうと)六覚院紗花(ろっかくいんすずは)姫路葵(ひめじあおい)御堂龍之介(みどうりゅうのすけ)、ユースティア=レッド=ミリアの5人だ。


「ホームルーム会長とー副会長はー昼休みー会議室にぃー集合ー」


 林間学校の話があるんだろうな。なんか、楽しみになってきたな。


 その後の授業は林間学校の事で頭に入らなかったのは言うまでもない。


「やっと昼休みだねー。会議室行こっか」


 入学してそんな経ってないが会議室までの道のりはあらかた把握している。


「今配られた書類にちゃんと目を通してくれ」


 会議室に入ると生徒会書記の霧ヶ峰結鈴音(きりがみねゆりね)が何枚かの紙をクリップで留めた書類を配った。


「ホームルーム会長や副会長は林間学校の手伝いをしてもらう。主に生徒会がやるが人手が足りなくなる事もあるだろう。その手伝いだ」


 生徒会が殆どやるのか、凄いな。


 配られた書類に目を通すと2泊3日の日程がびっしりと書いてあったが、読みやすいように何かのキャラを使ったりと工夫してあった。


「一人一人の分担は二枚目の紙を見るように。特に幸塚!! お前はサボるなよ」


「..なんで俺は名指しなんだよ」


 けだるそうに頭を掻いているが、しっかりと書類に目を通していた。


 (がく)先輩って意外にちゃんとやるんだな。こういう会議とかってサボりそうなのに。


「以上だ。もう一度言うぞ、書類に目を通しとくように」


 書類を手に持ち、葵と会議室を後にした。


「林間学校ちょっと舐めてたわー」


「結構ハードスケジュールって聞くよ」


 教室への帰り道二人は林間学校について話をしていた。再び書類に目を通すと、優人はキャンプファイヤーの設置係だった。


「私炊事係だってさー」


 炊事で困ったことがる班を見たらサポートするのが主な係だろう。


 ホームルーム会長と副会長は別なんだな。っていうか、一緒の係の人が御影俊(みかげしゅん)って書かれてるけど生徒会の人だったよな。


 授業が始まる予鈴が鳴った。


「やっべ、早く教室戻ろう」


 二人は早足に教室へと戻っていった。


 放課後になると部活に行くものやそそくさと帰るものと教室に残っているのもまばらになってきた。


「優人くん帰らないの?」


「今帰る....」


 優人の言葉を遮るように教室のトビラがノックされ、音の方を見ると一人の小柄な男子学生が立っていた。


「優人、久しぶりに話すね。少しいいかな」


 葵に軽く分かれの挨拶をしてから俊の元に向かう。


「じゃ、行こうか」


 目的を聞かされないまま優人は俊の後ろをついて行った。


 連れてかれたのはドドーンと大きい猫の看板が飾られている店だった。


「...猫カフェ?」


「そう!! やっぱさ、猫って素晴らしいと思わない!?」


 さっきの態度と大きく違く目が爛々としている姿に呆気に取られていると、猫達が足に体をぶつけて甘えてきた。


「優人ってさ、猫好きなの?」


「ま、まぁ。家で飼ってるからな」


 実家では二匹の猫を飼っている。母が猫好きだっていうのもあるだろう。


 それにしても、猫可愛いなー。めっちゃモフモフなんですけど!?


「いやー猫好きに悪いヤツはいないよね!!」


 演技派若手俳優って言われてるだけあるな、なんか感情が凄いな。


「それで、俺を呼んだ理由ってなんなんだ」


「あー忘れてた。僕達キャンプファイヤー設置係でしょ? だから一緒に仕事する人がどんなやつか見てみたくてさ」


 猫の腹を慣れた手つきで撫でており、撫でられている猫はゴロゴロといって甘えた声を出していた。


「だから猫カフェに一緒に来たのか、なるほどねー」


「そうそうー」


 それから他愛もない話をしながら猫を撫での繰り返しで時間が過ぎていった。


 俊って意外と普通に話せるやつなんだな。猫のことになると凄いけど。


「そろそろ行こっか」


 猫を沢山撫でて満足したのか優人を連れて猫カフェを出た。公園で休憩したいと言ったので近くの公園のベンチに座る。


「はい。これでよかったしょ?」


「お、サンクス。...おしるこ」


 渡されたのは温かいおしるこだった。カシュっと開けてゴクゴクと俊は飲んでいた。


 缶のおしるこは飲んだことないな。


 優人もカシュっと開けて少しだけ飲む。


 うん、甘い。


「俊ってなんだ霞ヶ浦学園に入学したんだ?」


「僕がこの学園に入学したのは3年前なんだ」


 生徒会役員は全員が留年してると紗花(すずは)から聞いていたが、実際こうして見ると不思議な感覚だ。


「一年の間は普通の学校と同じで勉強を中心だけど、二年に上がると特別課程で職業中心の授業になるんだよ。それがあるから入学したんだよ」


 へーそんなんあるんだ。全然知らんかった。


 おしるこをぐびぐびと飲み、一息ついてから再び口を開いた。


「二年になって僕は俳優の仕事が上手くいかなかった。けど、紗花さんに助けられて仕事は安定したんだ」


「そうなのか...」


 六覚院紗花(ろっかくいんすずは)って凄いやつなんだな。


 俳優とかそういうのは優人は全くわからない。だから、この学園に来て俊みたいな人を沢山見ることができた。


御影仁(みかげじん)って知ってる?」


「テレビとかあんま見ないんだよな」


 テレビを見るよりひたすら外を走っていた。目標は無いままずっと走っていた。


 だから、あまりテレビを見ていなかった。


「ここに来る間に大きい看板に載ってた人わかる?」


「あ、それはわかる!!」


 公園に来る間に一際目立っていた看板に若い男の人がサムズアップをして載っていた。


 あの人が御影仁って人だったのか。うん? 名字が同じだな。


「気づいた? アイツは俺の兄貴」


「えぇーーーー!!」


 缶に少し残っていたおしるこをグーッと飲み干した。


「僕は...アイツを超える!!」


 握っている缶に力が加わりガチガチと少し潰れる。俊の瞳は闘士が燃えている気がした。


「ごめん、忘れて」


 自分の力で缶が潰れていることに気づくと頭を振って気持ちを切り替え、ニコッと微笑む。


「最近冷えるからね。行こっか」


 こうも微笑まれたら何も言えなかった。日が沈み、月明かりが俊を照らしその瞳はさっきとは違く、どこか遠い目をしていた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 林間学校が決まってからか学生達はどこか浮き足立ってる気がした。


「おーい、こっちによこせ」


 今は体育の時間。

「芸能科A」と「芸能科B」の合同授業だ。「芸能科C」は今は家庭科の時間のためここにはいない。


 Aコートでは男子がBコートでは女子がバスケットボールをしている。


 俊もそうだけど、琴音先輩もなんか色々と抱えんてんだな。完全無欠な紗花だって何か抱えているんだろうな。


「おい!! 優人そっちいったぞ!!」


 男子学生が大きい声で優人を呼ぶが考え事をしており何も聞こえない。気づいた時にはボールが顔に当たる寸前だった。


「あぶねっ...っとセーフ」


 男子達は口を開け唖然としていた。当たると思っていたボールが片手でキャッチされていた。


 普通の人なら当たっていたボールをだ身体の軸を一切ぶれずに意図も簡単にだ。


「はぁ!? ヤバすぎだろ!!」


「やはり流石だ優人クンは!!」


 おぉーと歓声が上がっているが何が起こったのか優人は理解ができない。(つかさ)に関してはポージングをしているので意味がわからない。


「てか、シュートシュート!!」


「お、おう?」


 優人が放ったボールは美しい弧を描きネットに吸い込まれていった。


「えぇーーー!?」


「美しいシュートだ!!」


 女子の方からでも歓声が上がっている。女子の方をチラッと見ると紗花が人の間を縫ってシュートを決めていた。


「やっぱ紗花殿は格上でござるな」


 ぼーっと突っ立っていた優人に龍之介(りゅうのすけ)が話しかけてくる。


「成績優秀、容姿端麗、完全無欠でござるなー」


「お前は3次元とか興味あるのか?」


「興味ないでござる」


 フンッと鼻を鳴らしながら言葉を吐き捨てる。


「あ、優人こっち見てる」


 優人達の視線に気付いたのか水の入ってるボトルを口に運ぼうとするところで手を止める。


「本当に!? 紗花ちゃん!!」


 グイッと紗花に身を乗り出し、食い気味に葵は尋ねた。その姿にニヤニヤしながら紗花は答える。


「葵は優人好きだねー♪」


「ち、ちょ!! 何言ってんの!! 違うから!!」


 一気に葵の顔が赤くなった。必至に否定するも紗花にはもうバレておりただひたすらニヤニヤしているだけだった。


 違うの!!本当に。

 ただ、ほかの男の子より輝いて見えるだけ。そう、それだけなの。


「林間学校で告ったりするのー?」


 紗花達の話を聞いてたのかほかの女子学生も会話に入ってくる。


「だからー!! 好きじゃないの!!」


 手をあたふたさせて否定するが他の女子学生もニヤニヤしている。


 本当に違うんだって!! 別に好きとかそういうのじゃない!!


「あ、また入ったよ。葵」


 男子の方を見ると優人が他の男子学生の注目を浴びながらシュートを決めていた。優人の動きは無駄がなく誰が見ても"上手い"と言えるだろう。


「見過ぎだよー♪ 葵」


「入ったって言ったから見ただけ!!」


 ツンツンと肘で脇腹をつつかれる。自分より他の人の方が気持ちをわかってるらしい。それでも、葵は否定し続ける。


 それからの2週間は直ぐに過ぎていった。


 一人は友好関係をを築けるか不安を抱き、一人はある男子に恋心を抱き、様々な考えが交差し。そして、林間学校が始まった。



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