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俺は彼女を作りたいだけ  作者: 麦猫
2/10

部活動を見学せよ

 校舎の外を歩いていると学園の広さが実感できる。


 まだ学園の設備や施設などがわからないが歩いていれば何かわかるかもしれないと部活を見学をするのと同時に校舎を見て回っている。


「ほんっとに広いなここは一日じゃ足りないなこれは」


 暫く歩いていると何人かの男子学生がランニングをしている光景を見た。何部であろうか、先頭を走っているのは霞ヶ浦生徒会の副会長である成宮裕成(なりみやゆうせい)だ。


「むっ? お前は優人じゃないか、何をしているこんな所で」


 ピタリと優人の前で止まり、他の部員の「休憩!!」と指示だけして優人に向き直る。


「...ちょっと部活見学しようかと思ってね」


「ほう。僕の剣道部に入りたいと?」


「いや、言ってないからね!!」


 コイツは話を聞かないのか? そういうのは意外と面白いから嫌いじゃないぞ!!


「つうか、剣道部だったんだな」


 見た目からすると部活になんか時間をかけてらんない、会長になるんだ!!とか言ってそうなんだけどな。


「ふん。勿論だとも、剣道は日本の伝統!! それをやらずに何をやれと言うのだ」


「お、おう」


 優人はここにきてやっと理解した事がある。「芸能科」は葵や紗花などといったキャラの濃いメンツが多い。


「おっと、話し込んでしまったな。色々と見てくといいさ、そして今度の選挙で僕に投票してもよいぞ」


「本音が隠しきれてないぞー」


「それでは」と裕成は部員と再び走り始める。


 やはり部活動と言うのはいいもんだな。汗を流し、青春を謳歌する!! そんなのもいいな。


 様々なことを考えながら歩いていると体育館に着いた。『霞ヶ浦学園』には大きな体育館が東、北、西と三つありそこでは様々な部活が汗を流している。


 部活動は「芸能科」と「普通科」関係なく入れるため、「芸能科」に知り合いを増やしたいと思い入部する人も多い。


 優人が辿り着いたのは東体育館だ。中は学園の物とは思えない程の広さを持ち、街の体育館と言われれば信じてしまう程だ。


「体育館やべぇな!! ちょっとテンション上がるな」


 お、アレはバスケ部か。

 スポーツを見てるとしたくなってくるなー。


「キミはとてもいい筋肉をしている!!」


「うぉ!! びっくりした」


 入口付近で見ていると後ろから声をかけらた。短髪の男子学生でバスケの格好をしているのでバスケ部だということがわかった。


「おっと、びっくりさせてしまったね。私は新堂司(しんどうつかさ)と言う、バスケ部のキャプテンをしている」


「キャプテンでしたか…」


 司は様々なポージングをして自分も筋肉を見せつけている。確かに、凄く筋肉が付いているため絵になってしまう。


「なーに、同級生なんだ敬語は良してくれよ」


 おいおい、この学園は学年がおかしくないか? 先輩だと思って接しようとする人みんな同級生だぞ、どうなってんだよ。


「それにしても、キミはいい筋肉をしているね。...触ってもいいかい?」


「って許可をとる前から俺の腕を触らないでもらえます?」


「失礼」と言って触っていた手を離しほうと何かを思い付いたようにニコッと笑う。


「優人クン、私の部活動に入らないか?」


 え、何言ってるのこの人は。っていうかなんで俺の名前知ってるんだよ。怖すぎ。


「なぜ名前を知ってるかって? 優人クンはこの学園じゃ有名人だよ。普通科から移動してきた学生としてね」


「なんで心の中を読めるんだよ!! エスパーなの?」


「エスパーじゃないさ、私は司だ!!」


 あー、この人もキャラが濃いなー。本当にどうなってるんだこの学園は。


 こほんと軽く咳払いをした後、さっきと同じ質問をする。だが、優人の答えは決まっている。


「...お断りします」


「そうかそうか!! まぁ、いつでも遊びにきたまえ!!」


 運動は大好きだ。だけども、一つのスポーツに縛られたくないというのがある、様々なスポーツを経験したい。


「西体育館のバレーは見たか? バスケもだがバレーもなかなか強いぞ」


「ほうほう、バレーか」


 バレーか。昔、母がバレーを好きで何回もバレーの練習相手にさせられてたなー、懐かしい。


「ほうほう。母がバレーやっていたのか」


「ねぇ、やっぱりエスパーなの?」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 司におすすめされたバレー部を見に西体育館にやってきた。外装は東体育館と全く変わらない。体育館の中へ行くと中には誰も居なかった。


「今日は休みなのかな?」


 踵を返し体育館から出ようとすると二階の観客席から鼻歌が聞こえてきた。


「誰か居るのか?」


 声をかけても返事がないので仕方なく二階に上がる。すると、席に何個か使いぐてーっと寝っ転がっている女子学生がいた。


「お、キミが優人か。普通の顔だネ」


 バレーの短い短パンから見える健康的な太ももに目がいってしまったがすぐに目を逸らす。


「貴方は?」


「ウチは、日向菜摘(ひなたなつみ)って言うんだ。優人でしょ? バレー部になんか用?」


 身体を起こしグーッと伸びをする。


 結構スタイルいいんだな。じゃなくて 、この子も同級生なのかな?


「司に言われて来たんだけど...」


「あーあの筋肉バカにか。それで見学に来たと」


「まぁ、そうだな」


「そうだネー」と菜摘は少し考える仕草をしてからその場から歩き出し一階へと降りる。なんとなく優人も菜摘についていき降りる。


「今はみんな走りに行ってるからさ、練習手伝ってよネ」


「いいけど、あんま上手くないぞ」


「いいのいいの」


 菜摘は近くにあるボールの入ったカゴから一つボールを出す。


「軽くやってみようよ」


 軽く上にトスされたボールを優人は同じくトスをする。


 バレーなんて久しぶりだな、中学でも人数少なかったからやらなかったし母も歳をとってからやらなくなったからな。


「優人って経験者?」


「遊び程度だけどね。本格的にはやってない」


 上に上がったボールをキャッチしボールカゴにしまう。もう終わりかなと優人は少し残念な気持ちになったがボールカゴをコロコロと転がし、ネットの奥に立ち優人と対面する。


「サーブ打つからとってよネ!!」


「いやいや、経験者のサーブとるとか無理ゲーだから!!」


 優人の言い分は無視されサーブが放たれる。菜摘が打ったボールは真っ直ぐ飛んできたと思ったらいきなりストンと手前に落ちた。


 やっべぇ。めっちゃ凄い!!

 こんなサーブ初めて見たぞ、なんでニヤニヤしてるんだあの人は。


「もう一本いくよー!!」


 もう一本サーブは放たれる。

 さっきとは違く、奥の方を狙ったのだろうが奥過ぎたのか壁の近くに落ちようとしていた。


「あ、ヤバイ。ごめんミス....!?」


 優人がいた位置からだと絶対に届かない距離だった筈なのに、ボールは菜摘のコートに返される。


「あっぶねぇ。危うくぶつかるところだった」


「信じられない。...なんて身体能力してんの」


 うん? なんであんなに目を見開いて驚いているんだ。何かあったのか?


 それから何本もサーブは打たれたが全てボールは返された。返されなかったのは最初の一球だけ。


「あーー!! 先輩何やってるんですか!!」


 体育館のトビラを勢いよく開け、バレー部員がゾロゾロと入ってくる。


 待って待って、今先輩って言わなかった!? え、めっちゃタメ口だったんだけど!!


「すいませんでしたー!!」


 土下座をする勢いで頭を下げる。


「はっははは、全然大丈夫だよ。敬語とか堅苦しいから嫌いだからネ」


 にしてもバレー部多いな。流石強豪と言われてる。


「先輩、もう練習していいんですか?」


 一人のバレー部員が心配そうな顔で菜摘に問いかける。


「今は痛くないから大丈夫だよ。...それにしても負けちゃったよ」


「何を負けたんですか?」


「私のサーブを一本でも止めれたら勝ちって言うのだったんだけど負けちゃったネ」


 舌をぺろりと出して言う菜摘に対してバレー部員達は驚きが隠せない様子。


 そんな勝負してたっけ。練習相手になってとだけ言われた気がするんだけどな。まぁ、いっか。


「先輩のサーブを止めるなんて"不思議クン"一体何者なの」


「不思議クン?」


 なんだその呼び名は変わってるとはよく言われるけども!!


「あ、知らなかったんだね。芸能科から普通科にいきなり変わるなんて無かったから不思議な男の子って事で"不思議クン"だよ」


「なんで最初に言ってくれなかったですかー先輩!!」


 会ったときに言ってほしかったなと思いながらも自分の存在がいかに変わっているかを実感できる。


 仕方ないか、そんな例はないのだから不思議と言われても。


「ごめんごめん。もう知ってるのかと思ってたからネ」


 敬語は堅苦しいから嫌だと言っていたが最低限の礼儀は尽くす。


「折角だからバレー部を見ていったら?」


「そうさせてもらいます」


 バレー部員の方々に軽く頭を下げると、二階の観客席へと上がった。


 気付かなかったけど、ここ意外としっかり見えるんだな。


 菜摘に指示で部活が始まった。


 先輩、キャプテンだったんだな。


 一通りアップなどが終わり今は試合形式の実践練習中。


 無駄の無い動きの中で練習は淡々と進み、自主練習の時間になると二階に菜摘が上がってくる。


「どうだった?」


「凄いですね」


「本当にそれだけ?」


 何かを疑うように問いかけてくるが、優人は何か心当たりがあった。


「見た感じですが、あの髪が短い子は跳躍力はもっとあるように思えます、もう少しトスを高く上げても楽々打てるでしょう。それに....っとこんなものですかね」


「全部当たってるネ。本当に何者なの?」


 優人が言っている事は全て的を射ていたため再び驚かされる。


「運動が好きなだけですよ」


 ふーんと少し間を置いてから菜摘は口を開く。


「マネとか興味ない?」


 菜摘が示すマネとはマネージャーの略称である。部活の勧誘だろうが、優人の答えはバスケ部の司に言ったのと同じである。


「たはー。やっぱりダメかー。優人がいればもっと強くなるのにネ」


「すいません」


 ぺこりと頭を下げる優人の肩をバシバシと叩く。


「いいのいいの!! もし、興味が出てきたら教えてね? いつでも歓迎するから」


 そう言うと菜摘は一階に降りていった。


 部活も終わったことだしそろそろ家に帰ろうかな。


 鞄を背負い体育館を出る。最近運動不足が身体に出ていると感じたのか、ジョギングをしながら家に向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 家に着き、制服を素早く脱ぐとすぐにシャワーを浴びる。


「なんか今日は疲れたな...」


「普通科」に入れると思って来てみれば「芸能科」に移動させられるし、部活動でもキャラの濃い人達と会ったし色々あったな。


 シャワーを終え、タオルを腰に巻きながら冷蔵庫を開けるが大したものが入っていなかった。


「後でコンビニ行かなきゃな」


 風呂入る前に気づけばよかったと後悔していると、家のチャイムが鳴った。


「こんな時間に誰だ? あーい、今開けますよーっと」


 ドアを開けると二人の女子学生がいた。その女子学生は見知った顔だ。


「やっほー来ちゃっ....」


 紗花が明るい声で挨拶をしようとするが、優人の腰にタオルをまいてるだけの姿を見て発狂する。


「きゃぁぁぁーーーーー」


「うわぁぁぁーーーーー」


 男女の叫びが部屋に響き渡った。ユースティアは直ぐに目線を逸らしている。


 ドアを閉めてタンスから適当に着るものを取って着替え、再びドアを開けて紗花達を部屋に入れる。


「..さっきは申し訳ございません」


 沈黙を破るように優人が口を開く。


「いやいや、いきなり来たこっちも悪いし!! っていうか結構鍛えてたんだね」


「運動が好きだからな、ってかちゃんと見てんじゃねぇか」


「は、はぁ!? 見てないし!!」


 あたふたと手を振って否定をしているが顔が少し赤くなっているのがそれを説明している。


「それよりさ、なんか用があってきたのか?」


 冷蔵庫に入ってあるお茶を三つのグラスに入れ、コトリと机の上に置いた。


「ありがとう。...いや、ね。ユースティアが会いたいって言うからさ」


「...言ってない」


 ユースティアがボソリと紗花の発言を否定する。


「本当の理由は?」


「ユースティアが明日のホームルム会長を決めるのがあるんだけど、その説明したらどう? って言ってね」


 この学園にもホームルーム会長なんてあるんだな。そういうのないと思ってたなー。


「そうなのか? ユースティアさん?」


「...ユースティアでいい」


 ボソリと呟くが特段聴こえない声ではない。さっきからずっとお茶の入ったグラスに口を付けている。


「...説明は任せる」


「はいはーい♪」


 机の上にあるお茶をグイッと飲み干すと、グラスを机の上に置く。


「ホームルーム会長になったらね、毎月の霞ヶ浦生徒会と一緒にやる定例会に主席する権利を与えられるの」


「権利? それに出席したら何かあるのか?」


「定例会に行けば一緒に行事も決めれるし、学費免除、学食代免除など様々なことがあるからお得なの♪」


 学食代免除かいいな。昼飯は今日も学食を利用したけどあそこのご飯美味しいからな。でも、ホームルーム会長みたいに人前に出るのは嫌だな。


 お茶を飲みながら色々と考えているとユースティアが口に付けていたグラスを離す。


「...忙しいけどね」


「おい、その一言で誰がやると思ったんだ」


 軽くツッコミを入れてから、何ま入っていないグラスを見つめている。


「あ、もうこんな時間。そろそろ帰ろっか」


「...うん。ばいばい」


 そう言って彼女達は優人の部屋を出ていった。ユースティアが座っていた場所にパスケースみたいなものが落ちていた。拾い上げるとひらりと一枚の写真が落ちる。


「お、なんか落ちたぞ。って俺の写真?」


 ユースティアほどの美少女がどこかで会っているのなら覚えてる筈なんだが、思い出せない。でも、なんで俺の写真を。


 なにもわからないまま夜が明ける。



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