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橘の想い


 スキルの確認が終わった後、適正属性別に分けられた。使える属性で分けて効率よく魔法を教えていくらしい。とりあえず、俺以外全員参加だった。今後、戦いに参加したくない人も魔法は知っていて損はないということで教えてくれるそうだ。


 そして1人残った俺はとりあえず、魔力総量だけでも確かめてみようということだった。

 魔力総量を調べるには、すごく希少な鉱石を使った道具を使うらしい。希少なためこの国には一つしかないという。

 魔法を使える者は、限界使用回数や魔力操作などで魔力総量を判断できるが、俺みたいに魔力操作もまだ出来ず、魔法が使えない者が簡単に魔力総量を調べるにはこの道具を使うのが一番だという。


 そして俺の目の前には属性適正を調べた時みたいな水晶が置かれていた。



「ではこれにそっと手そえてください。」



 俺はそう言われ水晶に手をそえた。するといきなり水晶が凄まじい光を出し始めた。



「うわっ!すいません!手を離してください!」



 俺は言われた瞬間手を離した。すると水晶は元に戻った。属性魔法の時にはそれぞれの属性の色に水晶が変化していたが、これは光っていた。

 話を聞くと、これは発光の色によって見分けるらしい。



「ですが、今の光はとんでもないですね。これほど質が良く、魔力が多い人は人間では始めて見ました。魔法が使えないのはとても残念です。」



 つまり、俺は魔力総量はとんでもなくあるが魔法が使えない矛盾野郎という訳か。そして、その後は特にすることがなくなったので、聞きたかったことを聞いてみた。


 まず、属性魔法の火、水、風、土、光、闇の6属性以外には属性はないのかということ、つまり氷や電撃などの魔法は存在するのか。これには、氷系の魔法は水魔法に分類され、電撃は特殊魔法で使用している人がいるということだった。他にも魔族の中に空間魔法と呼ばれるものを使ったりしている奴もいるという。


 そして一番聞きたかったのは魔族の強さだ。魔族は桁外れの強さと言っていたが、どのくらいなのか。これに対する答えは、おそらく今の勇者の中には1人もと魔族に対抗できるものはいないという。もっとも魔族は非常に少ないらしい。1人だけが相手なら勇者全員が連携を組めば勝てないこともないらしい。魔族1人で国ひとつと同等と考えるべきと言っていた。


 まぁ俺も戦ってみないとわかんねぇな。俺たちは戦いに関しては経験がなく皆、素人同然と言ってあるからな。


 その他に色々と聞こうとしたが後日、座学で教えるということだったので今日のところは大人しく部屋に戻った。








 部屋に戻った後、俺は道着を洗った。そのついでに水浴びをしてもらった短パンとシャツに着替えて道着が乾かしていた。夜飯を皆で食べた後、部屋で瞑想をしていたら、ドアをノックされた。



「はい、どうぞ。」



 返事をすると、入ってきたのは橘だった。橘はTシャツに短パンというこの世界に来た時の格好をしていた。



「ごめん、こんな時間に。どうしても話がしたかったから。」



 橘はそう言うと、部屋をキョロキョロと見ていた。俺はそんな橘の様子を見て自分は椅子に座り、橘をベッドの方にうながした。すると橘は一瞬止まっていたが、テクテクと歩き出しベッドに座った。

 そして俺が口を開こうとした時、またドアがノックされた。俺は橘を見た、すると橘は頷いて口をいいよと動かした。



「はい、どうぞ。」



 するとドアが開き、今度入って来たのは神崎だった。こちらは可愛らしい水色のパジャマを来ていた。入ってきた神崎は橘と目があった。



「あら..................お邪魔だったかしら?」


「いや、私も今来たとこだったし.........」


「まぁとりあえず座れよ」



 俺は神崎もベッドにうながした。神崎は橘の隣に腰をかけた。



「で、2人ともどうしたの?」


「.....................」「.....................」


「いや、なんなんだよ。」



 2人とも黙っていたが、先に神崎が口を開いた。



「いえ、いつもとは随分と印象が変わるのね。」


「まぁそうだな。自分でも分かってるよ。............でも神崎はあまり驚かないだろ。」


「えぇ、まぁそうね。この前そんな話をしたものね。」


「あぁ、橘もいるからな、はっきり言っておく。俺はわざといじめられていた。」



 すると橘は驚いたか顔でこちらを見てきた。



「わざと?.........本当に?」


「あぁ」


「今までずっと?」


「あぁ」


「なんで?」


「それは私も聞きたいわ。」


「...............あー、いや本当にくだらなくクソみたいな理由だぞ。」


「それでもいいわ」「それでもいい」


「.........そうか。簡単な話だ。今まで俺をいじめていたやつに復讐するためだ。俺が西山と同じ中学ってことは知ってただろ?俺はわざと西山と同じ高校に進学した。高校でもいじめられるためにな。そして高校の卒業式の時に、今の俺を見せその反応を見た後に西山を中心としたいじめグループをボコボコにするつもりだった。実は俺、それなりに喧嘩強い自信がある。」



 俺は堂々と本心を語った。



「そ、そんな理由だったのね。何か深い理由があると思っていたわ。」


「ボ、ボコボコ............」


「だから言っただろ、くだらない理由だって。それと橘はそのメンバーに入れてないから安心しろよ。お前はいつもパシリの時にお礼を言ってくれたし、暴力の時も申し訳なさそうにしていたしな。」


「そ、そうなんだ。」



 橘は少し嬉しそうに言った。



「なんで嬉しそうにしているのよ。あなたがいじめに加担していたという事実は変わらないのよ。」



 すると神崎はそんな橘に対し、厳しめの口調で言った。



「そんなこと.........ちゃんと分かってる。それについて小山に話があってここに来た。」


「そうなのか?」


「うん............小山、その、今まで本当にごめんなさい。向こうの世界では小山を傷つけてた。自分も小山みたいになるのがこわくて、周りに合わせて動くそんな自分が大嫌いだった。そして、こっちの世界でも西山たちは小山を傷つけようとしてた。だから今度は、自分の力を使って小山を守ろうと思った。でもさっきの話を聞いて、小山はいろんな意味で強い事を知った。きっと私なんかが守ったらあげなくてもいいんだと思った。だから.........せめて私が小山に対してできることはない?何でもいいよ。」


「さっきも言ったが、別に俺は橘にいじめられていたという認識はないぞ。だから別に気にしなくていいって。」


「私は小山をいじめていた認識があるの。だから何でもいいよお願い。あっ、でも死ねとか誰かを殺せとかは無理だから。」


「そんなこと頼まねぇよ。」



 俺はしばらく考えた。しかし橘にして欲しいことか..................なんでもいいのか..................でもさぁほら、橘はすごく可愛いしスタイルもいいじゃん。そんな女の子に何でもお願いできるなんてさ。やばいじゃん。............でも橘に嫌われたくないよな、いい奴だし、優しいし。............決めた。



「橘、なんでも聞いてくれるんだよな?」


「えっ............うん、なんでも聞く。小山だったらいい。」


「いいか、念をおしとくぞ。なんでもって言ったからな。」


「.........うん、言った。後悔してない。全部ちゃんと受け入れる。」


「一応、私もいるのだけど」


「.........知ってるよ。じゃあ橘、俺の頼みはな........」


「頼みは?」


「死なないって約束してくれ。」



 俺はすごくじらしてそう言った。



「死なない?そんなことでいいの?」


「そんなことじゃない。こっちの世界はすごく危険なことは知ってるだろ。そんな中、生き残り続けるってことだぞ。橘は戦いに参加するんだろ。なおさら難しいだろ。」


「でもその頼みは小山が頼むようなこじゃないでしよ。」


「いや、俺の頼みだ。俺は個人的に気に入っている人が何人かいるんだ。橘、お前はその中の1人だ。だから橘にはいなくなって欲しくないんだ。この俺の頼みを聞いてくれ。」


「うえっ?こ、小山は私のことそんな風に............分かった。その頼み絶対に守る。私は小山からいなくならない。」


「ありがとうな。」



 そうして俺と橘が見つめ合っていたら、横から咳払いが聞こえてきた。2人はすぐに顔をそらした。



「ごほん、話は終わったかしら。お二人さん。」


「あぁ、すまなかった。」


「いえ大丈夫よ...............時に小山君、さっき個人的に気に入っている人がいるって言ってたわよね。その中に私も入っているのかしら?」


「そんなん当たり前だろ。俺のいなくなって欲しくない人の1人だ。」


「そ、そう。当たり前なのね。私もあなたのことは大事に思っているわ。」


「お、おう、そうか、ありがとな。」



 俺はなんか急に恥ずかしくなってきた。そして話をそらそうと思って口を開いた。



「そういえば、神崎はどんな用があったんだ?」


「あぁ、それね、あなたに今後どうするのか意見を聞こうと思って。」


「そうか、俺は戦いに参加するぞ。神崎もだっただろ?とりあえずスキルのレベルを上げたり、魔力操作を練習したりして、自分の力を鍛えるかな。実際にどう動くかは指示を待とうと思う。そんな感じだ。」


「まぁそれが妥当ね。今日聞きにきたのはそれだけだよ。あとはいろいろ話でもしようと思ったのだけれど............知りたかったことも知れたし、今日のところは部屋に戻るわ。.........橘さんと一緒に。」


「わ、わかってる。私もちゃんと戻るから。」


「本当かしら?私が出ていったあと何かあったんじゃないの?」


「な、何もないし。そ、そっちこそ私がいなければ何かあったんじゃないのか?」


「えぇ、何かあったかもね。」


「っ!............」



 いやぁモテる男は辛いな。でもこいつらの好意は俺の容姿からのくるものじゃないことがわかっているから、素直に嬉しい。この状況をまだ楽しんでいたいが、いったん解散にしとこう。

 そうして、俺は2人をなだめ部屋に返した。


(少し不安だったけど、楽しく過ごせそうだな。)


 俺はそんなことを思っていた。







 だからこの時は思いもしなかった。あんな形で皆と離れることになるなんて。




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