ネタばらし
俺は何が起こったのか分からなかった。分かる事があるとすれば、ここに来る瞬間に感じた違和感は、昨日ホームルームで感じたものと同じだった。俺は今の状況を理解しようと目の前の人だかりを見ていた。
ローブの者たちは慌てた様子で、倒れている仲間と見られる人達と先ほど倒れた一人の少女を部屋の外に連れ出していた。そしてその騒ぎに気づいて、眠っていたクラスの連中の何人かが起き始めた。
「んぁ?............あれ、なんだここ?」
「なんでみんないるんだ?」
「ねぁ、みんな起きてよ。」
隣にいたやつを起こしたりしながら、クラスの連中は徐々に目を覚ましていった。すると5人のローブの人達がこちらに近寄ってきて、何かを呟き始めた。俺はそいつに敵意がないことはわかっていたので、黙って見ていた。
すると俺は身体中の力がみなぎっていくような感覚がした。それはクラスの連中も同じだった。
「勇者様方、今みなさんに身体強化の魔法をかけさせていただきました。これでみなさんはしっかりと目が覚めたことと思います。早速ですがこれから、みなさんがここにいる理由を説明させていただいてよろしいでしょうか?」
一人のローブの男がそう言った。
「魔法?」
「夢じゃないのか?」
「異世界転移だ.........キタコレ」
「一体なんなのよ」
「てか、あれ誰だよ。」
「みなさんとりあえず、話を聞きましょう。」
クラスの連中はあれこれ言っていたが、先生が一言いってしばらくすると黙ってローブの男の話を聞こうとしていた。
「みなさんありがとうございます。私の名前はレイモンド・アッカーと申します。この国の国防魔術隊の隊長をしております。早速ですが本題に入ります。我々はとある理由があって、大変自分勝手でございますがみなさんを勇者としてこの世界に、アーガイスに召喚させていただきました。そして先に申しあげておきます。みなさん元の世界に帰る方法はわかりません。」
それを聞いて、クラスの連中は騒ぎ始めた。
「これはドッキリか?だとしたらえらい手が込んでな。」
「なに?ここは日本じゃないってこと?てか地球じゃないの?
「帰れないってどういうことだよ!意味が分かんねぇよ!」
騒ぎ始める者もいれば泣き始める者、黙って見ている者もいた。
「皆!とりあえず僕たちが呼ばれた理由を聞いてみようよ!」
「そうだ!話はそれからだ!」
「みんなとりあえず落ち着け!」
その言葉を聞いてみんな驚いていた。なぜならその言葉を言っていたのは、俺よりかは上だが底辺グループのオタク3人組だったからだ。日頃、あまり目立つのが好きじゃない彼らが大声を出してそんなことを言っていた。
(なんかあの3人だけこの状況を楽しんでいるな。)
俺はそんなことを思いながら3人を見ていた。そしてみんなまた黙り始めた。それを見たレイモンドさんは俺達を呼び出した理由について語り始めた。
魔族という人間や他の種族と敵対している種族が魔王の復活のために、最近動き始めたという。その魔族とやらがこの国を狙っているということだった。理由はこの国にだけ唯一、勇者召喚をできる者が一人だけ存在していたからだ。過去に二度勇者召喚がおこなわれたが、二回とも例外なく勇者皆、強力なスキルを発現、強力な魔法を使用できていた。
そのため魔族は勇者召喚を防ぐためにこの国のとある人物を殺そうとしていた。その人物とは、この国の第一王女エリス・オースティンだった。彼女は一生に一度だけ勇者召喚という特殊魔法を使えた。
だが、王は勇者達を無理矢理こちらに呼び出すなんて人道に反すると勇者召喚を禁止にしていた。しかし魔族というものは、勇者でも太刀打ちできるかどうかわからないほど桁外れな強さを誇っている。だから王女は自分が殺されても殺されなくても、この国は終わることを確信していた。
そして王に許可を貰わずに有志を募って勇者召喚をおこなった、ということらしい。
「もう一度申しあげますが、勇者様方を元の世界に戻す方法はわかっておりません。もちろん方法を探し続けることを誓います。そして、我々は勇者様方のご意向を尊重いたします。とりあえず部屋と着替えをご用意しております。どうぞこちらです。」
レイモンドさんはそう言って俺たちを部屋まで案内し始めた。その後各部屋で、着替える必要があった者は着替えを済ませた。俺は道着のままでいた。
そして、皆を集められ食事を用意され、それを皆黙って黙々と食べていた。食事の後、大きな部屋に案内された。
「では、これから勇者様方の発現しているスキルを調べようと思います。心の中でアビリティと念じてください。そうすると自分のスキルと内容がわかります。」
俺は言われた通りにやってみた。すると目の前に自分のスキルというものが出てきた。
スキル
[無力化]Lv.1 発動された状態のスキルと魔法を
無力化する。
「みなさん自分のスキルを確認いただけましたか。ではそれを明日、王の謁見の際にどういうものか教えていただきます。今日はもう好きにしていただいて構いません。この部屋を利用しても結構です。そのほかに何かを聞きたいことでもあれば、城にいるものに聞いていただいて結構です。では私はこれで失礼させていただきます。」
レイモンドさんはそう言って部屋を出て行った。
その後、とりあえず皆で色々と話し合うことになった。するとオタクグループの3人がテンション高めの様子で言ってきた。
「とりあえずみんなのスキルでも確認しておこうぜ!」
「おう!それがいいな!」
「じゃあまず俺からな!」
そう言って、スキルを紹介しようとした時、女子の一人が口を出した。
「その前に、あの...............ずっと気になってたんですけど、そちらの道着の人は一体誰ですか?」
するとそれを聞いた皆もこちらの方を見て頷いていた。まぁこんな状況だ、素直にネタばらしといこう。
「何を言ってるんだ。小山 龍だよ。」