レベルアップ
やられた、そう思った。俺はこの森に転移させられたのだと確信した。異世界転移の時の違和感と同じものを感じたのだ。
周りを見渡していた時、突然殺気を感じた。俺はとっさに後方に下がった。
ドォォォォォォォン!
大きな破壊音があたりに鳴り響いた。音がなった場所は俺が元いた場所だった。そこには、地面を叩き割っている魔族の男がいた。
「ふむ、いい感じだ。魔力も回復している。」
先ほど倒したはずの男が立っていた。傷も全て塞がており、何よりも攻撃力とスピードが桁違いに上がっていた。
「何が起こった?」
「敵に情報をもらすバカがどこにいますか?と言いたい所ですが教えてあげますよ。簡単に言うと、私はこの場では全力が出せるということです。」
「全力?」
「はい、この森には我々魔族の力の源でもある魔素が充満しています。魔素のない場所での我々は、本来の10分の1の力しか出せないのです。」
「城での戦闘では10分の1しか力を出せなかったと、そう言っているのか?」
「えぇ、そうです。ですから.........」
すると男は先程とは比べものにならないほどの速さで、俺を蹴ってきた。俺は完全に油断していた。そしてあまりの速さに反応が遅れ、とっさに腕を前にして男の蹴りを防いだ。
蹴られた俺は、いくつもの木々をなぎ倒し遠くにとんだ。しかし衝撃を途中の木々に流していたので、無傷で済んでいた。
「危なかった、集中しなければ。奴は今までで一番の強敵だ。」
そして俺は前を見据えていた。すると無数の紫雷と黒槍が俺に向かってとんできた。やはり速さ、大きさとともに先ほどより上がっていた。だがそれよりも速く、男が黒い剣を手に俺に斬りかかってきた。
その後1時間ほど、俺は男の剣撃に対応するのに手一杯で魔法は全て無力化していた。先程の弱点の場所を指で貫いてみたりもしたが、すぐに再生してしまうのだ。また、たまに奴の筋肉が大きくなったりする時がある。おそらくスキルを使用していたのだろう。そのため、俺は男にも無力化を使用していた。俺らの周りはすでに森ではなく焼けただれた平地となっていた。
そして俺は自分の体力がどんどん無くなっていくのを感じ取っていた。このままいけばいずれ尽きるであろうと考えていた。俺は負けるのではないか?不覚にもそう思ってしまった。
俺は距離を取ろうと男の攻撃をわざと受けとばされた。しかし男はとばされた俺に魔法の追撃を大量に飛ばしてきた。俺は舌打ちしながら全てを無力化した。
全ての魔法を無力化した直後、俺のスキルのレベルが上がった。
【無力化】Lv.2
Lv.1 発動された状態のスキルと魔法を無力化する。
Lv.2 対象のスキルと魔法の発動を無力化し続ける。(任意解除)
「ははなんてタイミングなんだ、これさえあればもう誰にも負ける気がしねぇな。」
俺は一気に力が抜けた気がした。そんな俺の様子を知らずに男が近づいてきた。
「おや?もう体力切れですか?今さらですがあなたを殺すのが惜しくなってきましたよ。そのありえない体力、一体どんなスキルを持っているのですか?」
「【無力化】以外何も持ってねぇよ。だが、もうこの戦いが終わりなのは間違いない。」
俺は男にスキルを発動した。見たところ、男の様子に変化はなかった。しかし俺の方は体力の減りが異常なくらい多く感じた。
(効果がとんでもないからその分、体力の減りもとんでもないわけか。)
「でも、これなら負けないしすぐに終わる。」
俺は男に瞬時に接近した。反応できなかった男の弱点、五ヶ所を前と同じように貫手で貫いた。
「何度も言うが、ここでは意味がないと.........あれ?なんだどうなっているんだ。ぐぅ、痛い、あぁなんで、うぅ...」
男はうめきながら地面に膝をついていた。そして傷も塞がっていなかった。
「うるせえよ、それより質問に答えろ。ここはどこだ?どうやったらオースティンに戻れる?」
早く戻らないと神崎たちに何が起こるかわからない。
「うぅ、な、なんなんだ、言うわけないだろ。」
「そうか」
俺はその男の腕を手刀で切り離した。無力化させる前は、何故か硬すぎて手で斬るのは不可能だったのだが今度はうまくいった。おそらくなんらかの常時発動スキルだったのだろう。
「ぐぁぁぁぁぁ!痛い!いたい、あぁぁぁぁ」
「さぁ早く答えないと次は足だ。」
「うぅ......くそっ、ここの森の名称なんて知らん。オースティンへはこの森を抜けて国を一つ越えなければ行けない。この森の抜け方は知らん。」
「本当か?」
「普通はここに私一人では来ないんだ。本当だ。」
「そうか、じゃあもういいや。」
俺は男の首をはねた。今度は首が生えてくることなく男の体は地面に倒れた。そして男が使っていた刀身のない剣の柄を拾って腰にさした。
「最後は呆気なかったな。」
でも勝てた。しかし【無力化】スキルが無ければ俺は絶対に負けていた。この世界でやっていくにはもっと強くならなければならない、そう思った。
「はぁ、はぁ」
気づけば息が上がっていた。それほど体力を消耗したのだろう。しかしまだ気は抜けない、俺は先程のから人の気配を感じていた。
「ふぅ、とりあえず.........さっきからそこの茂みで隠れている奴出てこい。逃げるなよ。」
しかし誰も出て来なかった。仕方ない、と思い俺の方から近づこうと一歩踏み出したところで、茂みがビクッと動きそこから人が手を上げながら出てきた。
「わ、私は何も見てないです。敵意ないです。だ、だから殺さないでください。」
その人物は女性だった。美しい金髪が腰まで伸びており、胸はそこまで大きくないがスタイルの良い体をしていた。クリクリとした青い瞳の目が大きく開かれていてそこには涙をためていた。
そして俺が一番最初に目に入ってきたのは、人間のそれとは明らかに違う長い耳だった。




