プロローグ
「エリス様お待ちください!」
螺旋階段の下から野太い声が響いてくる。
しかし、呼ばれている少女はそれを無視し階段を上る先にある部屋を目指す。
「はぁ、はぁ、ついた.....」
少女は息を切らしながら目的の部屋にたどり着く。
その部屋はとても広く、中央に大きな魔法陣が描かれてある。そして30人の魔術師が待機しており、大量の魔法具が用意してあった。
「お待ちしておりましたエリス様。我々は予定通りこれから結界を張ります。エリス様も準備が整い次第、召喚を始めてください。」
魔術師の1人がせかすように言うと、10人の魔術師が結界を張り始めた。そして少女は魔法陣の中央に移動する。
「エリス様の魔力管理は残りの我々がおこないます。どうぞ召喚だけに集中していてください。」
残りの魔術師が少女を囲む。
「皆さん、私のわがままを聞いてもらってありがとうございます。皆さまの想いは決して無駄にはしません。」
少女は両手を合わせ神に祈るように言う。
「エリス様、その言葉は何度もお聞きしました。それに我々はエリス様のわがままで集まったのではありません。我々もエリス様と同じ想いです。この召喚を成功させて、この国を救いましょう。」
少女は頷くと詠唱を始めた。それに合わせて、魔術師たちは少女に自分の魔力を与え始め、同時に魔法陣が発光を始めた。
(勇者様申し訳ございません。けれどこの国を救うにはもうこの方法しかないのです。どうかこの国をお救いください。)
少女はこれから召喚されてくる勇者に多大な罪悪感を抱いていながらも、皆の想いを無駄にしないため、この国を救うために勇者召喚をおこない始めた。