紅に染まる
放課後の図書館の一角、司書の先生からの死角、そこでハルと過ごすのが習慣だった。
その日は珍しくハルが微睡み始めた。
体育の授業でバスケがあったからだろう。
運動が苦手なハルにはきつかったようだ。
長い睫毛が上品に下へおりた。
真正面から見る、夕陽に映える顔が美しく、藝術品だった。
舟を漕ぐハルにそっと話しかける。
図書館好き?
首が縦におちる。
放課後、好き?
こくりとする。
私と一緒なの、好き?
また頷く。
ねぇ、私のこと好き?
うん、好き。
と言うかのように、大きく頷いた。
そして、ハルはふわりと瞳を開けると、恥ずかしそうに、笑みを浮かべた。
その微笑が、少し赤みを帯びているのは、夕陽に照らさらているからだろうか。
空が紅に染め上げれる。
私の心も、ゆっくり染まっていく。