第四話:意識
パスワードを忘れてログインできないという悲しい事件が起こりました。
完全に自分の過失ですねありがとうございます
・・・
(ここは、、、?)
周りからは、赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。
死ぬ前に聞いていた、セミの鳴き声のようだ、うるさい。
赤ん坊の声によって、少しずつ意識が覚醒していく。
ぼんやりとしか見えないが、自分は透明な箱、ショーケースのようなものの中にいた。
自分のケースの周りを白衣を着た人たちが取り囲んであり、傍らにはたくさんの機械が置いてある。
まさか自分はまだ生きていたのだろうか。
「....失....処....。」「使え...ご....」
おぼろげながら何かを話している声が聞こえる。
(よく聞こえないなあ....)
すいません。いったい何を話しているのですか?、、声にならない。
「おぎゃああああああ。」
聞こえてきたのは赤ん坊の泣き声だった。理解、把握。先ほどから聞こえてくる赤ん坊の泣き声は自分のものなのであろう。
よく考えてみたらこのケースな入るほど自分の体は小さくなかった。
生まれ変わったのであろう。正直驚きというものはあまりない。
強いて言えば、自分の前世の記憶が残っていることに対して少し驚いている。それでも少しの驚きではあるが。
なんだろう一度死を経験したからか、驚きの感情が薄くなっているきがする。
(それにしても...)
恥ずかしいな。分かるだろうかこの気持ち。身体的には0歳(恐らくだが環境から判断して)だが、精神的には36歳のそこそこのおにいさん(おじさんではない)である自分が、裸の姿をたくさんの人間にまじまじと見られているのである。
前世の自分には見られて興奮するといった特殊な性癖はなかったので、結構な苦痛である。
寝たきりになってからは看護師さんに下の世話をされたが、そのときもかなり恥ずかしかった。
まあ、それにしてもよかった。
羞恥の感情は残っていたようである。.....よかったのだろうか...
・・・
数時間たった。
現在も何人かの人が自分の周りに残り、機械とにらめっこしながら必死にメモをとっている。
自分の置かれている状況を理解したいところである。
ある程度人が少なくなったことで、自分から離れたところの様子を見ることができるようになった。
見えたのは、ずらっと並べられたケースとその中で眠っている赤ん坊たち。たくさんの機械。白衣を着た研究者らしき人たちである。
前世の常識に当てはめると、どう考えても、「倫理に反した研究を行っている、危ない研究所」ですね、本当にありがとうございました。
どうか二度目の人生、安全に楽しく謳歌できますように。
僕はそう願いながら現実から目を背けるように意識を落としていくのであった。