第三話:誕生
僕が今見ている景色、世界は、記憶の中の、ビックバン、まさしくそれだった。
ビックバン理論
今からおよそ137億年前に宇宙は誕生したといわれている。
宇宙誕生以前は空間も時間もない「無」であったとされている。
「無」といっても、何もないという意味ではなく、素粒子が相殺しあい、絶えず「生まれては消える」ことを繰り返していたのである。
永遠に続くかと思われた「無」の状態は非常に低い確率で、あるとき均衡をを崩した。これが宇宙の誕生である。
誕生した宇宙はその後光速を超える速さで急激な膨張をはじめ、膨張した直後に重力が生まれ、膨張の0.000000000000000000000000000000000001秒後、熱エネルギーを放出し始めた。
これがビックバンである。
よく覚えていたな、自分...。
いつの間にかたくさんの星、銀河などが形成されていた。
(これは流石に早すぎるんじゃないか?)
記憶によると、星が形成されるのは宇宙が誕生してから、4億年後くらいだったような気がするが....。
まるで宇宙の歴史を早送りしながら見せられているかのような。
星が誕生しては、超新星爆発を起こして消滅していく。
その時に発生したガスからまた新しい星が生まれ、爆発して消滅していく。
一瞬のうちの、誕生と消滅が繰り返される。
これが、僕が生きていた地球の存在する宇宙だとは限らない。
というのも宇宙というのはほかの宇宙のブラックホールの中に存在しているという説があるからである。
その宇宙もほかの宇宙のブラックホールの中に存在しているし、またまたその宇宙もどこか別の宇宙のブラックホールの中に存在しているというのである。
つまりは宇宙はたくさんあるというのだ。
そういうわけで、自分が生きていた世界での常識に当てはめて考えていいのかわからないのである。
こう考えてみると、いかに自分が小さな存在であるのかが、思い知らされる。
こう考えているうちにも、また新たに銀河が形成されて、どこかの名もわからない星が消滅していく。
素粒子レベルで見ると、この世の物質は電子、アップクオーク、ダウンクオークの三種類でできている。
どんなに可愛い女の子でも、すれ違ったら誰もが振り向くような美貌を持つイケメンでも、お金で買うことができないくらいに高価な宝石、宝でも、、、、
もちろん僕の体も、記憶も、感情もこの3種類のからできている。
この誕生と消滅の世界を見ていると、あの世界の僕、魂が抜けた僕の体も、燃やされて、あるいはそのまま埋められて、その世界で循環しているのかもしれない、と思えてくる。
ここに存在している僕、魂、記憶は宇宙を越えた、あの世界での循環の輪から外れてしまった。
これはとんでもないことなのではないか?と答えの見つからない疑問を、自分に問いかけていた。
(あれは、太陽だろうか...。木星、火星らしきものもある...。)
体感の時間として3時間くらいだろうか。
見知った星たちが見えてきた。ということは
「地球...。月もある...。ということは...この宇宙は、この世界は、僕が生きていた世界なのだろうか。」
そういった瞬間、時間が止まった。
いや、とてつもない時間の流れの速さが、元の、僕が生きていたころに当たり前として流れていた時間の速さに戻ったのだろう。
そして青い光が、地球へと僕を導くように。やさしく僕の前を照らしながら地球へと進んでいった。
連られて僕も地球へと向かう。
魂に、肉が、骨が、神経が、心臓が、内臓が、目が、口が、鼻が、耳が、手が、足が、つけられていく。
体が出来上がってくる。
どこか久しい感じ。36年前にも感じた。この感じ。これは..
聖歴2020年4月30日、魔法大国アックスグランス、国立魔法科病院にて新しい命が誕生した。
つけられた名は、七瀬 霞
この世界では能力位最下位に位置する証である、アルビノを持った、美しい男の子だった。
おまたせしました。
次回から、異世界での生活が始まります。