お嫁さんが欲しかったのに、お嫁さんになりました。
街は盛大に祝い、王城も笑顔が溢れ涙を流している者もいる。
ーーそう、俺達は魔王を倒し帰って来た。
「勇者達よ、魔王を倒し平和な世界にしてくれた事に感謝する。よく無事に戻ってくれた」
「ありがとうございます」
国王に功績を認められ、俺達は死んだ後も称えられる英雄になる。
死ぬ思いで戦って勝利を重ねてきた仲間との絆。苦しい事もあれば、勿論楽しい事もあった。
俺達はやり遂げたんだなぁ……。
そう思いながら、パーティのリーダーである勇者のセルヴィーが国王と話すのを見てじんわり実感が沸いてくる。
「何か欲しいものはあるか? 私の出来うる限り叶えよう」
来たーーーー!!!! 俺は勿論、可愛いお嫁さんとお金だな。
今までが忙しかった分、お嫁さんとラブラブでまったり子育てしつつ、のんびり過ごしたい。
そう、思っていたら飛んでもない言葉が聞こえてきた。
「そこにいる、ルサハとの婚姻を認めて貰いたいのです」
「えっ」
「よし、認めよう。今から二人は夫婦だ」
「ありがとうございます!」
笑顔で言って、セルヴィーは俺を抱き締めた。
「幸せにしますよ! ルサハ!」
ルサハは、俺である。
えっ、今俺結婚しちゃったの?
男と、て言うかセルヴィーと?
いや、待て待て落ち着け俺。
…………………………。
って落ち着けるかああああ!!!!
「っ痛!」
混乱している間にセルヴィーから指輪をはめられてた。
指輪の内側から細い糸の様なものが出ていて、それが指に刺さっている。痛みはこれが原因らしい。
……ぐっ。ぐいっぐいっ、ぐいいいいい。
……指が抜けるんじゃないかぐらい引っ張っても抜けない。何これ! 怖っ!
「ふふっ、実はねーー。これ、私が作った呪いの結婚指輪です」
「はぁーー?! 何やってるの?!」
お前勇者だろ?! 何て事してんだよ!!
「大丈夫、これ百回体を重ねれば取れますよ?」
「そっそれ、逆に言えば百回しないと取れないんじゃないのか?!」
「そうですね」
てへ☆ みたいな顔しているセルヴィー。
何それ俺の人生詰んだんじゃないの……。セルヴィー、いい奴だと思ってたのに何だよこいつ。
「百回もしないうちに、私無しじゃ生きられないような体にしてあげるから安心してくださいね?」
「そんな風に言われて、するわけないだろ!」
「え? でも、そういう行為は私以外と出来ないし、感じませんよ?」
言いながらセルヴィーは自分も着けてる、お揃いの指輪を指差す。
呪いかああああ!!!! まじふざけんな!! お前何てもん作ってんだよ!!
前からハイスペックだと思ってたけど、ハイスペックの無駄遣いしなくていいから!!
「あっ因みに、私を殺しても指輪は外れます」
「えっ……」
「でも、私が死ぬ時はルサハも死ぬ時です」
「……」
ひいいぃぃ、目が怖い! こいつ、こんな奴だったっけ?!
セルヴィーの目の奥に闇が見えたような気がした。
「あと、定期的に発情するんですよ? 私はいつでもウェルカムですからね!」
この指輪、セルヴィーの都合がいいように作られてる!!
「あとは……」
「まだあるの?!」
「はい、ルサハがどこに居るのか分かります」
もうダメじゃん、俺逃げられないじゃん……。
夢も崩れて、囲いこまれて絶望しかないじゃん……。
ポロポロと涙が出てくる。
「どうしたんですか?! 噂の結婚直後の不安ですかね?! 大丈夫です、私が心変わりする事は一生ありません。ルサハを愛し続けます」
いや、心変わりしてくれて全然いいんですが。むしろして下さい。(土下座)
「あいつに落ちちゃった方が楽なんじゃない? 嬉しくないかもだけど、結婚おめでとう」
隣に居たパーティ仲間のラルークが、ぽんっと肩に手を置きつつ言う。
こ、このやろう!! 他人事だと思ってええええ!!!!
ギッ! と睨んでいると、肩に置いてたラルークの手をセルヴィーが払った。
「ラルーク、ルサハは私のなので、余り目の前で触れて欲しくないです」
「あっ悪い」
「分かればいいんですよ」
ラルークは知っていたのか。セルヴィーが俺を好きな事。
パーティに、女が居なかったのが悪かったのかなぁ……。
いや、女は不要って言ってたのはセルヴィーだ。
もしかして、俺が恋人を作らないようにしてたのかも……?
あれ? そう考えると、今なら辻褄が合う様な出来事が思い浮かびすぎる。
なんで気づかなかった俺!! いや、気づかせないセルヴィーがすごいのか、俺が鈍いのか……。
うん、両方かな……。
「じゃあ行きましょうか!」
「どこに?!」
「私達の愛の巣に決まってるじゃないですか」
「いつの間に?!」
「出発前から?」
「そんなに前から、用意してたの?!」
「はい」
どんだけだよ!! 俺、鈍すぎる! こいつ怖すぎる!!
「っ!」
不意にキスをされて震える。びっくりしたとか、そう言うのじゃなくて、セルヴィーに体を支えられるぐらい気持ちよすぎて痺れる様にメロメロになっていた。
「性感帯の快楽も増すようになってるんですよ? 特にルサハの方がね。気持ちいいでしょう?」
うっとりした様子で俺を見つめるセルヴィー。きっと俺も同じ様な顔をしてるに違いない。
「うん……」
ぼんやり返事をしながら、落ちる音が聞こえた様な気がしたーー。
end




