どうやら、「まだ」プロローグは終わらないらしい
柏田は「わかったか?」と、目を動かしては軽く唇を緩めた。僕は“知る”話と“聞く”話をもとに頭を悩ませては整理するように思い浮かべた。
柏田が旦那と会う。
山下と喧嘩。
近藤が写真を撮る
ファックスを騒ぐ。
山下が僕と出会う。
山下がビルに入る。
山下が誰かに確認をとる。
そして、ビルから出てくる。。。
。。。木ノ下、、、
頭の中で“流れ”を作るように並べては、自分の感情や思いを消して数式を解読するように推理していく。けど、まだ情報が足りない。
誰がなんのために、誰のためにやっていることなのか。知る全ての情報の共通点を探してはため息がてる。
僕は悩む頭に、不意に柏田に聞いてみたくなった。それはこの事柄とはまったく別のことだった。
「柏田、お前は“泣く”顔を見たくはない。って言ってたよな?それは“誰に”対してもか?」
僕は柏田に聞いた。前にあずみから柏田の“口癖”と聞いたことがあった。柏田は僕の言葉に鼻で笑っては答えてきた。
「あ?、、、あーそーだな。泣いた顔は見たくねーよな。。。」
柏田はそう言っては少し遠い目をした。僕は柏田の言葉を聞いてはもう一度問いかけた。
「それは“好き”な人以外でもか?」
柏田は少し間を空けてはまた軽く笑い「当たり前だろ」と声にだしては僕を見てきた。
「。。。なら、あずみのことはどう、、、」
「チャチャチャッチャッチャー」
柏田に聞こうとしていると、ポケットにしまう携帯の音が鳴り響いた。僕は話を止め、柏田に謝るように手をかざしては携帯を取り出した。
「よし乃だ。。。ちょっとごめん」
携帯画面を見ては外に離れようとしたが、柏田は「いいよ」と手で座るように上下に動かした。僕は「わかった」と口を動かしては携帯を耳にあてた。
「もしもし、、、」
「あ、すいません。いきなり電話してしまって、、、」
「いいよ。大丈夫だよ。それよりもどうしたの?」
僕は昨日の事を思い出しながらよし乃に話を聞いた。
「あの、その、、言っても良いものか迷ったのですが、、」
「。。。うん」
「さっきあずみさんが、、山下さんに車に“乗せられてる”所を見てしまいまして、、、」
「え?山下にあずみが?」
僕はよし乃の話に声を荒げた。柏田はその声に反応しては身を乗り出し、携帯を奪い取るように僕の体を押し退けてきた。柏田はよし乃から場所を聞き出し、携帯を放り投げるように僕に返しては勢いよく走り出ていった。
僕はソファーに倒れこみながら走り出る柏田を見ては、繋がる携帯を耳に、体を起こしては追うように店をあとにした。
「くそ、、、なんなんだいったい。。。。山下、、、それに柏田、、」
僕は走る足を振り上げては全力で“その場所”に向かった。
追いかける体にムチを入れては、よし乃の会話が、頭の中で流れていく。
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「、、、なんですけど。あと、この事も言って良いものか迷ったのですが、、」
「ん?なに?」
「。。近藤さんとカメラのことで少し話してた時、聞いてしまったんです、、、ファックスの写真って“近藤”さんが撮ったみたいなんです」
「うん、それは知ってる。。」
「そうですか。すいません。。。なら、柏田さんに“脅されて”撮ったことも知っていますか?」
「、、、は?どう言うこと?」
「詳しくはわからないのですが、、」
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よし乃から聞く話は僕の“知らない”事だった。誰が本当の事を話しているのか。誰が何の目的で動いているのか。今までの推理する答えは答えではなかった。見えない現実が、目の前に来ては消えていく。儚くも思い描く答えとはかけ離れていく。
よし乃から聞いた場所まで来ては辺りをキョロキョロと見渡した。流れる汗に体全体で息をした。
「山下のやつ。。。柏田はどこ行ったんだ、、、」
先に走り出た柏田の姿はなく、ここからどう動けばいいのかわからずも、ただ呆然と立ち尽くした。
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「近藤さんは、あの時私たちを撮ったみたいなんですけど、その先には柏田さん達も写っていたんです。それを加工して私たちを消しては二人だけを残したみたいなんです。」
「写真を撮ることは柏田さんから指示を受けてたようで、、、私たちのことは知らなかったって言ってました」
「近藤さんは柏田さんの“あること”を見てしまって、それを柏田さんに話してしまったらしく、その事で“脅され”たみたいなんです」
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立ち尽くす間にも物事は進んでいく。柏田と山下。どっちが正しいのか。どっちが本当なのか。山下にも柏田にも、僕には“知らない”何かを考えているのは確かであり、そこには“あずみ”という共通なモノがある。それだけは僕にでもわかる。
「乗れ。早く乗れ」
呆然と立ち尽くす僕の前に一台の車が止まった。黄色いキューブ。柏田だ。
僕は「あぁ。。」と踏み出す足に重心をかけては、車の助手席のドアを開けては乗り込んだ。
「柏田、お前どこ行ってたんだ?」
乗り込むと同時に柏田に話しかけた。柏田が車を取りに行ってたことは見ればわかること。けど僕は何かを話さなきゃと動揺する心に焦っていた。
「あぁ、車取りに行ってたんだよ、、それはいいとして、、黒いセダン探せ」
「え?黒いセダン?」
「あぁ、吉川が言ってたんだよ。山下の車だ」
助手席に乗りながら言われるがまま黒いセダンを探すように外に目をやった。
走り行く街並みに通り過ぎる車。黒いセダンと言うだけで、その他の情報はない。まるで砂漠に落ちた小石を探すような気分だった。
「黒いセダン。。山下は何をしようとしてるんだ?」
僕は外を探しながら柏田に話しかけた。柏田は「さーな」と聞き流すように言葉をはいては、車を探しながらハンドルを握っている。
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「あと、、山下さんのことですけど、、」
「うん、、、何?」
「本当なのかどうかわかりませんが、ここに入る前は証券会社に勤めてたらしいんです」
「え?それって本当?」
「はい。でもふざけながら話していたのでんかりませんが、、、」
「。。。そうなんだ。ありがとう」
「いえ、、、あ、あと、あずみさんと“も”、前に会ったことがあるらしいです」
「え?いつ?どこで?」
「すいません。そこまでは聞いてはいないんで、、でも、“会った”とは言っていました」
「、、、そっか。ありがとう」
「。。。。。あの、」
「ん?どうしたの?」
「、、、いえ、何でもありません。。今度一度“会って話”をしたいのですが、時間あけられますか?
」
「うん?うん。大丈夫だよ。それよりもありがとう」
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大通りから横道にそれてはまた大通りを走り行く。山下の車をやみくもに探しては、右へ左へと車線を変えていく。
「。。。柏田、お前“何か”話してないことないか?」
僕は柏田から聞く話、よし乃から聞く話。それと近藤の挙動に山下。今まで知り得もしなかった話を知ることで、一つの答えを導き出そうとしていた。それは一人よがりの勝手な解釈ではあるが、何かを“元”にしなければ、それはででこない。僕は“あずみ”と言う存在を元に答えを導き出そうとした。しかしあずみにしてもそうだが、僕の知らない事が多すぎる。話をしてもらえないのなら何も伝わることはない。ましてや、一人一人接する時間を共有していたとしても、他人のことは、何もわからない。
柏田は僕の問いかけに軽く息をはいた。
「あ?隠してねーよ。。。それよりも見つかんねーか?」
柏田は「んなこと後だ」と、山下を探すのに血眼になっている。僕は焦り怒りだしそうな柏田を見ては、口を止めようとはしなかった。僕としても“わからない”ことに“振り回される”のが嫌になってきた。
「“んなこと後だ”って、なら、いつなら良いんだ?僕だって何かをしたいし、わからないまま見ているのは嫌だ」
僕は、ここ最近で変わり始めた自分に戸惑いながらも、今の状況を知ろうと柏田に突っかかった。それはジェシーとの別れがなければ“こうも”変わらなかったかもしれない。
柏田は、あまりの突発的な僕の言葉に一瞬驚きながらも笑みを浮かべた。
「あ?お前も言うようになったな?」
「いいから、教えろよ?」
「ははっ。。。」
柏田は、鼻で笑うように声をだしては、今まで話してこなかった話をしてきた。僕はその話を聞いては山下を探す事を忘れた。
「、、って言うことは柏田、、お前とあずみは。。。」
「あー。そうゆうことだ」
「なら、山下はいったい。。。」
柏田の過去を“初めて”聞いては声にもならなかった。そんなことがあり得るのかと。
「。。。柏田。一回きちんと聞いていいか?」
「あ?なんだ?」
「柏田、、、お前はあずみのこと好きなのか?」
「。。。お前“まだ”そんなこと聞くのか?」
「いいから、答えろよ」
「あ?。。“好き”だったぜっと」
柏田は、そう言いながら勢いよくハンドルを右へと回しては車を右折させた。
「よしっ見つけたー」
大通りから右折しては、左に止まる黒いセダンが目に入ってきた。柏田は焦る心に声をだし、少し離れた場所に車を止めた。僕は柏田の話に頭が止まったままだった。
柏田は、車を止めると僕の体をつつき、視線を送っては見てくるように合図をしてきた。僕は「わかった」と頷いては車から降り、後ろに止まる車を見に行った。
「誰も乗ってないよ。。。」
僕は外から車内を覗いては、誰もいないことを確認しては柏田に伝えた。柏田は車の外に出ては「あぁ。。」と口に、車の屋根とドアに手を起きながら黒いセダンの止まる真横にあるそびえ立つビルを眺めては言葉をはいた。
「。。。やっぱりここか」
柏田はそう呟いてはドアをしめビルに入ろうとビルに向かった。
「離してよ、、そんなしなくても行くって言ってるでしょ?」
柏田がビルに向かっていると、あずみがビルから出てきた。その隣には山下がいる。
「山下ー」
柏田はその場を見ては、山下に向かって走りだした。
「あずみー」
「あっけんちゃんー」
両肩を羽交い締めにされては車に乗せられていくあずみを見ては柏田が声を響かせた。あずみはその声に反応するように目を向けては声をだした。柏田は車に乗せられるあずみの手を掴もうと足を踏み込んだ。しかし無情にも柏田の手は届くことはなく、山下の車は急発進していく。
柏田は走り出す車を見ては「クソッタレ」と声にして立ち尽くした。
「柏田ー、早くこい」
僕は運転席側に来ては柏田に声をかけ、車に乗り込んだ。柏田は僕の声を聞いては唾を飲み込み、吐き捨てるように息を吐いては自分の車に走り戻ってくる。
「柏田はやくしろー」
僕はエンジンをかけてはアクセルを吹かし、横を通る車を見ては発進するタイミングを計っていた。
柏田は助手席のドアを開けては車に乗り込み僕を見てきた。
「お前、、、大丈夫か?」
「あー、まかせろ」
柏田は僕の運転に不安を持っては「あぁ、、」と僕の言葉に反応した。
柏田は前から、出会った頃から僕に一目置いているのはわかった。けどそれは良い意味ではないことぐらい知っている。僕はそんな柏田を見ては「行くぞ」と言葉と同時に車を走らせた。
「パァーン、あぶねーぞバカヤロー」
車線に車を戻すようにアクセルを踏み込んだ。後ろから来るトラックに罵声を浴びては急ブレーキを踏み、体が前にシートベルトに引っ掛かった。
「おいおい、大丈夫かよ?」
「おーおー、大丈夫、大丈夫」
僕の運転に青ざめる表情をしては柏田が見てきた。僕はそんな柏田をよそに再度車を動かした。
車は走り出す山下を追うようにその場から離れていく。




