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出版への道~最後のお仕事と旅立ちと

始まりがあれば終わりがあり、

長かった旅が終点を迎えようとしているとして、

でもその旅も、はじめの一歩があったからこそで、

そして歩き続けたからこその終点なのだ。

歩き続けた先にあった終点には、信じられないくらいの幸せが

旅人を待ち受けているだろう。

信じられないくらいの悲しみと一緒に。



そしてしばらくして、再びゲラが送られてきた。

最終チェックのみなので、修正箇所も少なく、前回よりは簡単だった。

が、ここで新たな指令が!

『ゴメ~ン! 挿絵が入らないのでこの章とこの章、何行か削ってよ!』

とのこと。


「まじで? これ以上どこ削るのよ……」

「挿絵のためならやるしかないやろ」

「うーん、どうしよう……」

わたしが頭を悩ましているとデブが珍しくPCをいじってアドバイスをくれた。

「ちゅうわけでな、セリフは一個削るだけで1行開くやん? 特に合いの手みたいなセリフを削ったらええやん」

「な、なるほど。これなら指示通りの行は削れるね」

わたしはチェックしながら、抜いてもよさそうなところを削っていった。


「よし! これで完成ってことだよね?」

「おお。お疲れやったな」

そっか。本当にこれで後は本になるだけなんだ。


担当様の指示に沿いながらデブと一緒につくってきた本文は

わたしの手から旅立って、本になるのだと思ったら、

なんだか感極まってきた。


「なんやねん? 泣いてんのかいな」

「泣いてないよ! ただ、ただ、なんか、わかんないんだよ……」

「なにがわからへんのや?」

「自分の気持ち。今、すごいうれしいけど」

「けど?」

「すごい心配……怖いんだよ。この子、本になって、みんなに喜んで手に取ってもらえるのかな? それに読んだ人たちに滅茶苦茶言われるかもしれないし、そうなったら、なんかかわいそうな気がしてきて、そんなことなら本にしないでそっとしておきたいような気もしてくるんだよ」

わたしが吐き出すようにそう言うと、

デブがそっとわたしの肩に手をかけてくれた。

「そんな心配しとったんか……ええか?」

「な、なに?」

急にデブが置いた手に力が入った。

それもものすごく!

「いたたたた! 痛いよぉ! なにすんの!」

「ええ加減にせえ! この子がかわいかったら尚更胸を張って旅立たせんかい!」

「で、でも」

「確かにこの子は足りんとこはいくつもある。世間に出たら酷評もされるかもしれへん。せやけど、たくさんの作品が日の目を見んで眠ってる中で、この子はチャンスをもろうて旅立てる幸せな子なんや。そんためにみんなで全力尽くして旅立ちの準備してきたんや。最後に親のお前がしっかりと胸張って旅立たせな、この子がかわいそうやろ」

「わかってるんだけど」

「ええか。この子はお前とわしの二人で生み出して、担当さんや絵描きさん、校正の人や、表紙のレイアウトを考えてくれる人、宣伝してくれる人、もろもろの方々に育ててもらって立派に旅立っていくんや。せやから自信もって旅立たせようやないか」

「わかったよ……わかってるよ! わかってるけど心配で、心配で……」

「心配なのは自分だけやない」

「あんたも、心配してくれているの?」

「あたりまえやないか」

わたしは無意識のうちにデブの手に自分の手を重ねていた。

「だったら、約束してよ。この子が本になって書店に出た時は、その、一緒にその姿を見に行こう? 一人じゃ、怖くて無理」

「しっかりせえや。これだから女はめんどくさいんや」


これカチンとくるよね。


反射的に重ねていた手で、思い切りデブの手をつねっていた。


「なんだと、このデブがぁ!」

「いだだだだ! そ、その元気があれば大丈夫や」

「一緒に見に行くって約束してよ!ねえ!」

「わかっとるがな! 行くにきまってるやろ! 大事な子供の晴れ姿やからな」


なんだかホッとした。 一人じゃないんだと思ったら気持ちが落ち着いてきた。


「ほな、最後の仕事、やったらんかいな」

そうなのだ。最終チェック以外に最後の指令があった。


『ベイビィ、ファイナルミッションだよ。表紙裏に載るプロフとあとがきを考えてね』

とのこと。

これまた短いながら少し頭を捻ったが、何とか一発でOKでた。


それからすぐに

『挿絵が完成したから送るよ!』

ということで画像付きのメールがやってきた。

続いて

色校なる表紙やイラストのカラーのもののサンプルが送られてきた。

『色はこれでいいかい?』

とのこと。


「いい、これすごいよぉ! 見て見て!」

「うるさいな。何回見せんねん!」

「だって、見てよ! もう、きれいだし、かわいいし、何度も何度も見返しちゃってもまた見ちゃうんですけど!」

「わかった、わかった。ほな、この契約の書類、はよ書いや」

「もう、お金なんていらないよ! こうして本が出るだけで幸せ!」

「あほ! プロはどんな仕事でもちゃんと報酬もらわなあかんて。そこんとこはしっかりしときいや」

なんかこういう時だけ急に真剣なんだよね。

わかりました、ちゃんとしますよ!


わたしはデブに解説されながら、

契約書の内容と電子書籍にしていいかの書類関係に目を通して、

メールで返事をした。


そして、

『ウェッブで特設ページ作るから質問(物語のポイント、好きなキャラ、読者に一言)答えて送っておくれよ』

という指示をこなして、ついに文庫化の作者としての仕事は終了した。


正確には、ラストの表現がギリで編集長からNGでて修正したり、あとがきを絵のスペースの関係から少し削ったとかあったけど。


「終わったよ!」

「ホンマお疲れさん、がんばったな」

「うん! あの……あんたが助けてくれたおかげだよ! ありがとう!」


すごい素直にデブに感謝の言葉が言えた。

なんかいつものわたしじゃないみたい。


「ほな、打ち上げやな。途中までやった打ち上げ、やるでぇぇ!」

「おう!」

「今夜あの店でやるで!」

「今夜? 急なのね」

「善は急げ! ほな、待ってるからな」

また現地集合? 

一緒に行くとかって、エスコートしてよ!

これだからデブは……。


もう少しつづく!

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