出版への道~特典SSを書くよ!
制約がかかると自由が制限される。
けど、その中でどうやってやっていこうかと工夫することが、
凄く自分自身を磨いてくれることもある。
お金がないならないなりに、
食材ないならないなりに、
校則厳しいなら厳しいなりに。
考えたり工夫したりすることは、ちょっと大変だけど、
うまくいった時がなんとも言えない喜びをもたらしてくれると思う。
『初版特典のSSを書くように』との依頼があったのだ。
担当編集者のレイ様が、頑張って販売店に掛け合って初版特典をつけれるようにしてくれたのだ。
レイ様に感謝しながら、『頑張って作ろう!』と思ったのだが……。
「容量が1000-1500字って、かなり短いよね?」
「ショートストーリーやからな」
短い話を作るのは嫌いじゃないが、
こんなに短い容量で作ったことはなかった気がする。
「どんな話を描けばいいのかなぁ?」
「そら、エロやろエロ!」
「でも、SSにはイラストつかないんだよ?」
それを聞いた途端、デブは、黙々アイスを食い始めて、
なんの発言もしなくなった。
って、極端だな、おい!
エロなしじゃあんたうごかないのか!?
しょうがないので、とりあえず何パターンか書いてみた。
本編の穴を埋めるパターン、次回作の予告パターン、日常ものSSを2編、
少し長めのものを1編書いてメールで送ってみた。
これに対しての担当編集者さんからの返信は比較的早かった。
「うーん、長めのやつはまあ、まあOKだよ。でも、予告編と本編穴埋め編は味わいが薄いねぇ~。日常ものだけど、一遍はおもしろいけど楽屋落ち的なものはダメ。もう一遍は薬物を茶化しているんでもう少し何とかならないかい?」
とのことだった。
「確かに予告編と穴埋めはいまいちやな」
デブが後ろからPCを覗き込みながら言った。
「うう、この短さで起承転結つけるの難しいね」
「勉強になるやろ?」
デブにそう言われるとムカつくんだが、
確かに今までやったことない短さだから勉強になっている。
制約がつくってことは自分になかったものを伸ばすのには
確かにいい修練だと思った。
わたしは久々に頭を悩ましながら話の構想を練り、
デブのアドバイスをもらいながら、いくつかのSSを新たに作成した。
「これでどうよ!」
「ええんちゃうか? これで送ってみいや」
なんとかできあがったSSを担当さんに送ったところ、
その中から、最初に書いた薬物ネタをマイルドに直したものと、
担当編集者さん提案の「好みの女の子は?」というお題で作成したSSに
GOサインが出た。
「よしゃ! ミッションクリアーや!」
「あれを手にしてくれた人たち、喜んでくれたらいいなぁ」
「自信持ちいや。あの二つのSSは結構ようでけとったやん」
「ホント? ホントにそう思ってる?」
「ホンマやって。ま、ホラー編も捨てがたかったけどな」
「確かに……コメディ設定の話でホラーチックな話作るのは頑張ったんだけどなぁ」
「ま、ちょっと違和感ありすぎたかもな」
そんな話をしながら久々の創作活動も終わって、
二人でお茶を飲んでくつろいでいた。
「そういや、そろそろ予約しとかなぁあかんな」
「なに? なんのこと?」
「打ち上げの続き、途中やったから」
「あ、あのレストランの?」
「そういうこっちゃ。最後のデザート、まだやったからな」
「デザートだけ食べに行くの? 仕切り直せばいいじゃん」
「あの店はそうゆう普通の店とちゃうんや。ま、早めに電話しとくか」
そう言ってデブがダイニングを出て自室に帰っていった。
「だいぶ日が長くなったなぁ」
デブが去ったあと、わたしは茶器をかたずけて、
薄暗くなってきた外を見ながら窓際に立ってカーテンを閉めようとした。
窓の外、1階の前にある小さな砂利駐車場に誰かが立っていた。
「あれは……くれはちゃん?」
デブと昔ここにいたという、呉羽ちゃん。
彼女が砂利駐車場に立ってこちらの建物を見上げていた。
またデブの部屋を見ているのかと思ったら、
視線は2階の窓際に立っていたわたしに向いていた。
「え? ど、どうかしたのかな?」
わたしは呉羽ちゃんに声をかけようと思って、あわてて窓を開けた。
「くれはちゃ……あ、あれ?」
さっきまで下に見えていた呉羽ちゃんの姿が消えていた。
「なんで? 今までいたはずなんだけど……」
特に隠れる場所もないし、いや、隠れる必要もなかったともうのだけど。
わたしは1階に降りて、もう一度外を探してみたが、呉羽ちゃんの姿はなく、
ただ、少し生暖かくなってきた夕暮れの風が体を撫でるだけだった。
つづく!




