出版への道~タイトルが決まらない!
タイトルはその本の看板であり、最初に目を引くものだと思うので、いつもいろいろ考えてつけている。思い入れも出てくるからだ。
でも、自分の感性が常に他人に受け入れてもらえるわけではなく、妥協しなきゃいけない時もあるのだ。
担当さんからの追伸のメール、『タイトルにNGが出た』との内容のメールを
デブと二人で見ながら頭を悩ましていた。
「おっさんという単語がいかんかったらしいな」
「おっさんだと読者に手に取ってもらえないって、ホントかな?」
「知らんけど……『問題』って単語にして、ぼかしてみたらどうや?」
「問題があってもって感じ?」
「その方がもしかしてええんちゃうか」
「わかった。あと他には? もっと違ったやつも考えておかないと万一の時のために」
「せやな。うーん……」
二人でない知恵を出しあって、悩んだ。
いくつか候補を出してみた。
こんなに生みの苦しみを感じたことは、あまりない気がしたよ。
そして、いくつか候補を返信すると、
後日それを吟味した新たなタイトル候補が帰ってきた。
「この中から選ぶんか……ならこれやな」
「やっぱ? わたしも今そう思っていた」
「ほな、これ押しで返信してみ」
「OK。あ、それとここ見てよ」
わたしは担当さんからのメールの文面を指さした。
「なんや? 絵描きさんに打診中ってかいてあるな」
「わたしの作ったキャラが絵になっちゃうんだよね?」
「そら、今時挿絵なしっちゅうことはないからな。あたりまえやろ?」
「でもでも、それってすごいことだと思わない? いつも自分の頭の中にはぼんやりと出てくるキャラたちがさ、はっきりと絵になって現れるんだよ? ああ、すっごい楽しみ……」
「そうやなぁ。せやけど、この作品の場合やと、女の子だけじゃのおて、しっかりした男も描ける人やないとあかんからな。難しいかもしれへんで」
「そっか……カッコいいイケメンお兄さんじゃなくて、ごっついおっさんだもんね」
ま、イラストレーターさんに知り合いがいるわけもないし、
担当編集者さんにお任せだから、待つしかないよね。
でも、やっぱすっごい期待しちゃうよ……自分のキャラが絵になっちゃうなんて。
そんなことを思いながらまた返事が来るのを待つ日が続いた。
その間、せっかくなので続きを書いていた。
続刊が出るかどうかは保証はなかったが、
もともと続きは構想しており、書きはじめていたものがあったので、
それを更に肉付けしていった。
当初デブの意向で未来ものだったが、
あまりに世界が違いすぎるので、逆に過去に飛ぶ話に変えてみた。
それでもファンタジー世界から、過去とはいえ現代社会が舞台なので、
大きな舞台転換にはなっていた。
「これってちょっと学園ものかなぁ」
書きだしていた続編をデブに見てもらった。
「これを今時の学園ものと呼ぶにはちょっとちゃうやろ。むしろ通学ものやな」
「通学もの? 新しいジャンルかな?」
「いや、不良漫画なんかこんな感じやで。学校でどうこうよりも学校行ってるけど通学や放課後の帰宅中にいろいろ起こるパターンで構成されてるやっちゃな」
「全然新しくないじゃん。しかも不良漫画って……」
「ま、ええわ。この線で書き進めてみいや」
デブが最近また人任せ気味なんだが……。
そして返事を待つこと1か月が過ぎた。
「返事来たんやって?」
「そ、それがさぁ……タイトルが」
「変なのに決まったんか?」
「それどころか決まらないんだって!」
「なんやて?」
わたしはデブにPCの画面を開いて見せた。
担当とわたしから提出した案はことごとく編集長に却下されたようで、
新たな案が送られてきた。
「今度はこんな方向で候補が出たんか」
「前回とはまったく違うんだよね」
担当さんも必死に考えてくれて、
違った方向性のタイトル案をいくつか出してきてくれた。
わたしたち二人はそれを眺めながら、また無い知恵を絞りだして、
あーだこーだ言いつつタイトルを考えた。
そしていくつか前回とは違う方向での案を出して返信してみた。
その返事は今までよりも早く帰ってきた
しかしその内容はまたボツとのことで、
また違った方向でタイトルを出し合って送っての繰り返しが続いた。
しかし何度繰り返してもなかなか決まらず、
巡り巡って結局最初の案になりかけたりと混迷を極めた末、
「もう決めなあかん」
という状態に陥って、最終的に編集部の方で話し合って決定してもらったのであった。
結局、わたしたちの案は全却下だったけど、
なんにせよタイトルが決まってくれてホッとしたというのが
正直なところだった。
「これでやっと前進でけるようになったな。こっからは話早いかもしれんで」
「でも、こんなにもタイトルでもめるとは思わなかったよ。一番生みの苦しみを感じた気がするよ」
「せやな」
さすがのデブも疲れた表情をしていた。
しかし、大変なことの後にはうれしいことも起こるわけで。
その知らせは、季節も春の風が吹くころの4月にやってきた。
つづくー!




