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出版への道~やってきた過去からの使者と返信と

第三者から見たら、なにが起こったというわけでもないかもしれないが、

当事者たちにとっては深刻だったりする。

現実に起こることの大半はそんな出来事が多い。


3階の窓を眺めていた女の子、呉羽ちゃんの話をデブとして、

彼女が一緒に暮らしていたのは昔のことだと言われた日から2日後くらいのことだった。

その呉羽ちゃんとやらが、わたしが帰ってきたら、いたのだ。

ダイニングに。

デブと一緒に。


何やら話し込んでいたので、わたしはそっと自室に入った。

とはいえ、以前も構造上のお話をした通り、

ダイニングとわたしの自室は同じ2階にあり、

壁を通して、話しは何となく聞こえてきてしまっていたのだ。


わたしは別に二人の話を盗み聞くつもりはなかった。


二人の話の邪魔をしないように息をひそめていたくらいだ。

決して聞き耳を立てていたわけじゃないんだからね!


「まだここにいたの?」


「あの人に、迷惑かけてないでしょうね?」


「これからどうするつもりなの?」


うーん、デブが説教されてるようだ。


いつもわたしに説教するやつが年若い女の子に説教されてるよ。

いい気味だよ。

でも、

やっぱこんなに親身になって話すなんて並大抵の関係じゃないと思うんだけど?

やっぱ元カノなんだろうなぁ。

うーん、ま、わたしにはどうでもいい話だよね。

そう、関係ないじゃん、わたし関係ないじゃん!


ヤバい。

なんか胸が苦しくなってきた。

なんだよこれ……。


「もう少しなんや。もう少しでなんとかなりそうなんや」

「あの人は、いいって言ってくれてるの?」


なんかこれ以上断片的なこと聞いてもモヤモヤがひどくなりそうなので、

わたしは耳を塞いでベッドにもぐりこんでしまった。


どれくらいたっただろう?


気づくと、部屋のドアがノックされていた。


「あ、はい?」

わたしがドアを開けるとそこにはデブはいなくて、件の女の子が立っていた。

「帰ります。お邪魔しました」

律儀にあいさつに来たか。

こんないい性格の子に心配かけさせるなんて、

アイツはどうしようもないデブだなぁ。


「あの、彼のこと」

「あ、はい」

彼って、あのデブのことだよね?

「よろしくおねがいします。それじゃあ、失礼します」

そう言って彼女は去っていった。


わたしはダイニングを覗いてみたが、

デブは彼女を見送りもしないでマイペースにアイスを食っていた。

「いいの? 送らなくて」

「そんなん必要ないんやって」

「でも」

「君には関係ないやんか」

「そうだけど」

関係ないか。そうだよね。

他人の人間関係にどうこう言ったってしょうがないわけだし。

「だいじょうぶや」

「なにが?」

「また会う時があるわ。呉羽はまた確認しに来るわ」

「確認しに?」

「今度来る時は俺もおらんくなっとるやろから、呉羽も安心できるやろ」

「どういうことよ?」

「俺かていつまでもここにおるわけやないしな。きみかてそうやろ?」

「どっかいっちゃうの?」

「どこへもいかへんよ。おるべきとこにおる、それだけや」

一体なんの話だよ!

そんな哲学的な言い回しなんか必要ないんですけど!


デブはそれ以上何も言わずに自室に帰っていった。


って、ちょっと待ってよ!

話し終わってないよ! 

いなくなるってどういうことよ? 

まさか100年後の話とか言ってごまかすんじゃないでしょうね?

わたしは我慢できずに、後を追いかけてデブの部屋に凸ってやろうかと思った時だった。


PCからメール受信の音がした。


そう言えば新作書いたり、デブと謎の元カノのことがあって、

最近メールチェックしていなかった。


わたしはため息をつきながら気を落ち着けて、受信箱の中をチェックした。

「あれ、返信来てる」

たくさんの広告メールの中に、担当編集者さんからのメールが目に留まった。

「えっと、タイトルにNG……? なにこれ」

内容を見るとタイトルにNG出たので変えないか、という話だった。

っていうか、なんでタイトルの話が突然出てきたんだろう?

この間送った本文はどうなったのか。

そっちが先であって、その前にタイトルうんぬんしてる場合なのか?

と、思ってよくよくメールを読んでみたら『追伸ですが』と書いてあった。


……いつの追伸だよ!


わたしはまだ目を通していないメールの中を探してみると、

他に未開封の担当様からの返信が1通あった。

急いで開くと、そこには……。

『シェイプして読みやすくなったんで、編集長をせかしてチェックしてもらったんだよ。そしたら出版OKのサインを頂いたんだよ、ベイビィ、グレートサプライズだろう?』

との内容。

そして追加訂正依頼の文書が添付されていた。


「ま、まじ? や、やたぁぁぁぁ! 通ったぁぁぁぁ!」


わたしの歓喜の声が聞こえたのかデブがダイニングに戻ってきた。

「なんや、どうしたんや?」

「出版OKの返事、きたんだよぉぉ!」

「な、なんやて? やったやんか! よかったやんけ!」

デブも喜んでるぅ! わたしもハッピーだよぉ!

と、思ったのは一瞬だった。

もちろんうれしかったが、

いまだに少し『まだ騙されてないか?』という気持ちがあった。

というか、

本当に自分の書いたものでいいんだろうか? という不安感が突然やってきた。


「相変わらず自信持てんやっちゃなぁ」

「しょうがないでしょ! でも、担当編集者さんがこんなに積極的に動いてくれているんだから、自信持ってもいいのかもね」

「せやせや。とにかく、自分にでけることをコツコツとこなしていけや」

「いけや、じゃないの! 一緒にやるんだからね!」

わたしの睨みにデブが渋々といった表情になった。

「ま、まあ、わかったわ。ほな、打ち上げの続きはまだまだやな」

「打ち上げなんて、本が出たらに決まってんでしょ?」

「ほな、本が出たらこの間の打ち上げの続きするで」

「OK。じゃあ、訂正箇所見て、直していこうよ」


わたしは添付されていた文章を開き、デブと一緒に内容を見た。

そして訂正箇所を直していったのだが、まだこんなにあるのか、と驚くくらい細かい修正が必要だった。


それでも修正するのはさほど難しい作業ではなかった。


最大の難関、難題はここからだった。

先のメールの内容にも出ていたが、

『タイトル』

これを決めるのに、この後四苦八苦するとはこの時点では考えてもみなかったのだ。

つづく!

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