表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

出版への道~返信待ちは過去からの使者を招く

事実は小説よりも奇、なんていうけど、現実にも創作話よりももっとおかしなことが起こることがある。

創作の中で求めていた出来事が現実で起こってしまうこともあるのだ。


デブ(小太り同居人男)がいつものように冷凍庫からアイスをとりだして、

ダイニングの椅子に座る。

わたしはいつものようにPCを開いて、今日来た楽天メール、アマゾン等のメールを仕分けしながら、担当編集さんからのメールを探していた。


「まだこんやろ。毎日ご苦労やな」

「いいの。どっちにしろ楽天メールは捨てないと溜まってくんだから」

「拒否すればええやんか」

「来なきゃ来ないで空っぽの箱のぞくのさみしいじゃん。それにたまに広告メール見て買い物するし」

「そうかい」

って、こんな会話をするためにわたしがわざわざダイニングでPC開いて

デブ待ってたんじゃないってーの。

「あのさ」

「なんや?」

「そう言えば……話変わるんだけど」

「だからなんや?」

「今日帰ってきたらうちの建物の前にさ、見たことない人がいて」

「見たことない人? 男か女か?」

「女。セミロングくらいの黒髪で、20代、身長はわたしより少し低いくらいで」

「そいつ、なにしてたん?」

「見てたよ。上、3階の窓、あなたの部屋」

デブは少し黙ったまま顎を触っていた。

「あれやな。あいつやろ」

なに、これだけの情報でもう思い当たる女がいるってこと?

「あいつって?」

「前にここに住んどった奴やろ。懐かしくて見に来ただけやろ?」

「知ってる人ってこと?」

「さあな。そんなん、どうでもええやろ?」

それきり彼は黙ってしまったし、わたしもそのことに関して話すのをやめた。

でも、

本当は前にも2回くらい目撃している。

いつも3階の、あなたの部屋を見ていたんだよね。


そんなある日、ついに謎の女の子からわたしは話しかけられたのだ。

「あの」

「はい?」

買い物から帰ってきて、玄関に向かおうとしていたわたしの背後から、

急に声をかけられて、わたしは振り返った。

そこに例のセミロングのかわいらしい女性が立っていたのだ

「ここに、おすまいのかたですか?」

「そうですけど」

「そうですか。あの、もしかして、3階にまだいますか? 彼」

彼、3階……ああ、あのデブののことか。

「ええ、いますけど、なにか?」

「いえ、問題なくやってらっしゃるんですね。そうですか、よかった」

なにこの状況?

なんか元カノが元カレ心配で、

現役カノジョに状況確認みたいな感じじゃない?

って、わたしはあいつのカノジョじゃないから!


「よかったら、寄っていきませんか?」

わたしの一言に、彼女は手を左右に振って頭を下げた。

「わたしはいいんです。昔住んでたっていうだけなんで。失礼します!」

なんちゅうか、かわいい子だった。

あんなかわいい子がもしかしてあのデブの元カノなのか?

ま、どうでもいいけど……やっぱ気になる。

でもどうやって聞いたらいいんだろう?


昔一緒に住んでいた人って、どんな人たちだったの?


いや、メッチャ喧嘩別れしてたらやばいし……。

それどころか、もしかして一人くらい争った末に殺しちゃったりして……。

そんでその死体がまだあの1階のロッカーのどこかにあったりしたら……。

そう言えば1階のロッカーって、

わたしが一つ、彼が一つ使っている以外は

開けて中確認したことないし、まさか……。

「なんしてんねん?」

「ぎゃぁぁぁぁー!」

「どわぁぁぁぁ! なんやぁ! なんなんやぁ!!」

気がついたらデブがわたしの目の前に立っていた。


「びっくりさせないでよ!」

「そりゃこっちのセリフや! なんやねん、いったい」

「なんでもないよ。ああもう……」

「そういや、さっき話しとったやろ、くれはと」

「はぁ? く、くれは?」

「あれ、くれはやろ?」

「なによ、くれはって」

「君が話しとった女の子。前ここに住んどった子で呉羽ちゅうんや」

「あ、あの子、呉羽ちゃんって言うんだ」

「なんの話しとったんや」

「別に。あなたがまだここに住んでるのかって聞かれただけ」

「そうか」

それだけ?

「呉羽ちゃんって、一緒に住んでたんだ」

「もう結構前の話やで」

「あれなの?」

「なんや」

「付き合ってたの?」

き、聞いちゃったよ……。

「俺と呉羽がか?」

「他に誰の話してるのよ!」

「ただ一緒におっただけや」

そんなわけあるか! 

嘘だ、絶対二人は親密な関係だったんだ。

でもいつしか別れる時が来て、二人は離れ離れになってしまったけど、

時が流れて今日、彼女は昔を思い出してここに来た。

するとそこには、彼がまだいたけれど、新しい女の影があって、

呉羽ちゃんは思い出を胸に、この場を去っていったのよ、きっと!

「きみなぁ、わけわからん妄想すんのやめた方がええで」

「な、なんでわたしの心の中が!」

「だからきみ、わけわからん妄想ストーリーをブツブツ口に出しとったぞ」

「うそ! ま、まったく無意識だった」

「それ、気いつけた方がええで」

やだ、もう……わたしの妄想ワールドを聞かれてしまったとは……。


「それからな」

「はい?」

「俺と呉羽が暮らしとったのなんか、もう結構前の話や。終わったことや」

終わったこと、だから気にするなってこと、ですか?

それはつまり、えっと、わたしにどうしろと……。

しかもデブはそれ以上何も言わず歩き始めてしまった。


でも、

なんだか、なんだろう? 

ちょっと胸の奥が暖かいような、

安心したような感情は、なんだろう?


そんな気持ちを隠しながら、

わたしは彼の大きな背中をみながら、彼について2階に上がっていった。


「新しいお茶買ってきたんだけど、飲む?」

「おお、もらおうかな」


ダイニングのテーブルについて二人で今日買ってきたばかりのお茶を飲んだ。


なにを話すわけでもなく、ただお茶を飲んでゆっくりとした時間を過ごした。


これで終わればどうってことないことだったけど、そうじゃなかった。


だから、つづく!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ