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出版への道~ほぼ出来上がった!

つくりだすのも大変だけど、削ることも大変であり、

的確に削っていかないと全てが壊れてしまう。

それは大きなソフトクリームを垂らさないようになめていく時にも似ているのかもしれない。


頑張って修正して、新しいエピソードまで入れて完成したかと思いきや、

「全体量多すぎちゃったよ。だから削って! テヘ!」

とのイケメン編集者さんからの指示。

まずは投稿時に無理やり引っ張ったラストの夢落ちかと思わせるエピをカット(これは向こうからも指定してきていた)

それでもまだ指定の容量よりも多かった。

わたしとデブ(小太り同居人男)は原稿を眺めながら悩んでいた。

わたしは長い話を作るのが苦手だったので、いままではどうやって規定に達するように伸ばすか四苦八苦していた。だから逆に短くするなんてことは初めてだった。

「どうしよう? あと削るとこがないよ」

「せやなぁ……うーん、最終手段として」

「な、なに?」

「ここ、これ削ろうや」

デブが指差したところはわたしのお気に入りだった竜と森のエピソードだった。

「こ、ここはダメ! これのおかげで冒険の道のりに深みが増えて、単調じゃなくなったもん」

「そんなんわかっとるわ。せやけど、これ以上削んやったら、ここしかないやろ? ここは後から挿入した部分であって、本編には影響せえへんやないか」

そんなことわかってるよ! 

でも、ここはわたしのお気に入りなんだよ!

だって……

そこは、あんたと一緒につくった唯一のシーンなんだよ?

だから、わたしはここは削りたくないの!


「なに、もごもごゆうてんねん。はっきりしゃべりいや」

「い……」

「い?」

「言えるか! バカー!!」

肩に思いっきりグーパンチしといた。

「いだぁぁぁぁ!」

「わかってるよ、そこしかないなんてことは……削る、削りますよ!」

わたしはプリプリしながらPCを畳んで、自室に戻った。


一息ついてから、思い切って竜と森のエピをカットし、前後を修正した。

改めて読み直すと、竜と森のことなどなかったかのように話しは流れていく。

「ホントは、ここに起こるんだからね。ここで、竜が出てくるんだから……」

読みながら心の中でわたしは思っていた。


「できたよ」

デブは何事もなかったかのようにトマッティレモンソルベのアイスを食べていた。

「自分、読んだんかいな?」

「読んだよ、直しながら」

「ちゃうよ、最初から読んだんか、っちゅうてんねん」

「ああ? 最初から通しで読まなくても散々読んでるから!」

「読めや。話はそれからや」

渡した原稿をわたしに突き返してきた。

なんなの? この態度。

ムカつくけど、

デブがこういったまじめなことを言う時はなにかしら意味があるからなぁ。

不本意だけど、デブの前に座ってわたしは原稿を手に取って読みだした。

いつもの読み慣れた文面、話の筋……あれ?

「どうや。読んでみて」

「す、すごい、読みやすい」

そうなのだ。不本意なエピソードカットなど、細かい修正点を経て、

投稿時の自分の作品が、かなり読みやすくなっていた。

「せやろ?」

デブがアイスを食べ終えたスプーンをくるくる回しながら話を続けた。

「自分の作品ゆうのは思い入れもあるやろうから、冷静に見れん時もあるわけよ。自分の一時の感情だけで判断したらあかん時もあんねん。ええか? プロの言うことは適当やないで。たっくさんの作品みてきた経験に裏うちされてんねん」

デブの説教……身に染みるけどムカつくのはなんでだろう?

良薬口に苦し、ってことにしておこう。

「よし、これで担当さんに送ってみるよ!」

「おう。これならあっちも納得のはずやで。やってこいや!」

「あ、あのさ」

「なんや?」

「うん。ありがとう。きっとわたし一人だったら、うまく削れてなかったかも。サンキュウ」

「あんな」

「な、なに?」

「もっと自信持ちいや。きみは感情的にならんかったらうまいことでける子なんやから」

うーん、なによ、あんた学校の先生かよ?

もっと、ドキドキすること言うかと思っちゃったじゃん。

でも、なんか、暖かいような気持ちだけは染みてきたよ。


そしてわたしはできあがった修正版をメールで送った。


またここから長い日々が流れる。


日が経つにつれ、考えることは、

『いろいろがんばったけど最終的にOKでませんでした』

という落ちにまとまるのではないか、

『それが現実だよ』という結末になるのではないか、

こんな思いが大きくなっていくだけだった。


「結果は一つでそれが現実だったらしゃーないやんけ。それを受け入れるしかないんやったら、受け入れる。でも、まだ結果は出てへんのや。出てから悩みいや」


わたしの心の中の不安が大きくなってもデブは冷静だった。

『不安な時は書き続けるんや』

デブが前にそんなようなことを言っていたよなぁ。

「わたしには、それしかないしな」

わたしは不安を一掃するために新作を書くことにした。

なにか縛りが欲しいと思って、小説の投稿を調べていると、ふと一つのお題に目が止まった。

「同居と恋、かぁ。うん、全く違うジャンルでいいかも」

わたしは投稿する気もなかったが、そのテーマを使って話を考え始めた。

そして何となく構想、キャラ、を考え、部分部分のエピソードを書き、更に肉付けを開始してみたのだ。

「なんだか自分とデブの話になってきちゃってるけど、まあいいか」

主人公がデブの同居人と絵本を書く話。

絵はデブが担当して、わたしがお話を書く。

地方のゆるキャラを題材にした、その地方のお話を書いていくって設定で……。


うん、なんか筆が進むぞ!


この時のわたしはすごく気持ちが落ち着いてきていた。

そう。半分くらいあきらめていたのだ。

没になってもいいじゃないか。

新しいものを書こうじゃないか。

さてこれはどこに出そうか、とすら考えていたのだった。


「二人の微妙な恋愛関係に何かスパイスが欲しいよね。うーん、スパイス、スパイスかぁ」

そんなことを考えていたら、現実の方にスパイスが降ってきた。

「あの、この建物に、住んでいる方ですか?」

わたしは声をかけられた。

黒髪セミロングでナチュラル系の落ち着いた服装をしているが、年の頃は同じ20代でも圧倒的にわたしよりも若そうだった。

つづく!

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