出版への道~まだ最初。
愛しい人からの文の返事を待ち焦がれているなんて歌は、
大昔からあったりするんだけど、
今だってメールなりラインなりの返事がなかなか来ないと
もやもやした時間を過ごしてしまうことになるわけで。
待つ身はつらいが、待たせている方にも事情があるわけですよね。
担当さんとの顔合わせ後は、メールでのやり取りだった。
まずは続編のあらすじを考え、エピソードを考え、部分部分文章化し、まとめたものをメールで送ってみた。
「受け取りました」のメールはすぐ来て、
「内容吟味して返事するよ」ということだった。
しかし、その返事がなかなかこない。
それからは毎朝受信箱を覗き、
山のように来ている楽天メールを削除しながら、
その中に返信がないか探す毎日だった。
「こないんだよね、返事。内容がダメすぎて見捨てられちゃったのかなぁ?」
わたしがダイニングのテーブルに突っ伏してぼやいていると、同居人小太り男(通称デブ)がピスタチオのアイスを食べながら諭してきた。
「あんなぁ、担当さんかてたくさんの作家さん抱えてんねんで。1~2か月返信来んなんて普通らしいで」
「なによそれ? どこ情報よ?」
「ネットで某作家さんのページに書いてあったで。3か月来んかったら見限られたと思えって書いてあったしな」
ええ! まじ?
フェードアウト、自然消滅がこの業界の習わしだったの?
「まだ1か月もたってへんやん。気長に待ちいや」
なんでそんなのんきなのよ?
気長に待っていられるほどわたしはタフじゃない。
「気がもやもやしとる時は書くんやって。書きためておいて、いつでも担当さんの要望に対応でけるようにしときいや」
デブの正論が胸に染みるよ……そんなわけで、とりあえず書き続けた。
そして、いくつか作ったエピソードの間を埋めるような文章を作り、少しずつでも完成形に近づけていった。
そうこうしていると、ついに返事がやってきた。
「きてるきてるよ! 返事来たよ!」
「騒ぐなや。どれ内容見ようやないか」
わたしとデブでメールの内容を読んだ。
「こ、これは」
メールの返信には、
「別世界でのエピソードは悪くないよ。でも統一感持たせたいからファンタジー路線で続けよう」とのことだった。
さらに、
「別世界でのラストバトルは、ファンタジー編の最後に持ってきて使おう」とのこと。
「はーん、まぁ、妥当やな」
別世界での展開を指示したデブは平然と言ってのけた。
「妥当って、あんたの言うとおりに大きく場面かえたのよ?」
「ええやん。それはそれで、このメール通りに修正しいや」
マジか。
でも、これも修行だよ! と自分に言い聞かせて、ファンタジー路線で統一することにした。
「別世界編の方は、ホンマの続編に取っときや」
簡単に言うデブは気楽そうだ。
「ファンタジーでもう少し押すなら、なんか新たなエピソードが必要だよね」
わたしのボヤキにデブがすぐに反応した。
「エロか! エロやな?」
「もうだまされないからね! ちゃんとしたエピを入れるんだから」
「どこにいれんねん。そんな隙間あるか?」
二人で改めて読み直してみた。
「うーん、そこなんだよね」
そして二人でしばし思案した。
しばらくして、デブが沈黙を破って口を開いた。
「そうやな、もう話的にはつながってるんやから、この城へ行く道中に何か起こったことにしてみたらどうや?」
「た、たとえば?」
「例えばこの『森を抜けた』だけじゃなくて、この森を抜けるために苦労しましたなんてエピソードでどうや?」
「なるほど……うーん」
「よっしゃヒントはやったんやから後は頑張りや」
「そんな微々たる協力だけじゃ共同執筆者として認められないからね!」
「なんやねん、もう……せやな、竜とか出そうか。それと、うーん」
わたしとデブでアイディアを出し合って話を考えだした。
いつもデブからの小さなヒントだけで、わたしが話を作っていたので、
今回のように二人で具体的なアイディアを出し合って作っていくのは初めてだった。
二人で出し合ったネタを持って、わたしは自室のPCの前に座った。
「竜が出てきてとうせんぼして、えっと、でも竜は悪い竜じゃなくて、本当はいい人、そう、超イケメン君にしよう!」
イケメンが出てくるとなれば、わたしはもう俄然ノリノリになれるので、即座に書きはじめた。
「竜に変身するイケメン君は、えっと、そうだ、イメージは担当さん、担当さんから名前パクってレイ……レインにしよう!」
さらに拍車がかかってあっという間に森と竜のエピソードができた。
読んだデブ曰く、
「まあまあええやん。もっと笑いどころ作ってもええと思うけど、君の限界はこんなとこやろ」
と、のたまった。
それは褒めてないような気がするんだが!
……ま、デブに認められてもしょうがないや。
イケメン編集さんに認めてもらえなきゃしょうがないもんね。
というわけで、つづく!




