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担当編集者さんに会った!その1

あの忘れられない夏は、この日がピークだった。

初めて感じて、初めて立ち入ったあの空間は、

ずっとはるか彼方、雑誌やテレビの中の世界だと思っていた。

わたしたちはそこにいたんだから、今でも信じられない。


いよいよ担当編集者さんとの顔合わせの日がやってきた。

「ホントにこのお菓子持ってくの?」

「あんな、これ地元の老舗菓子屋やぞ。定番や定番」

「なんか、じじ臭い気がするんだけど。もっとおしゃれなのがいいなぁ」

「つべこべゆわんと、いくで!」

当日午後2時に来社するよう言われたので、昼くらいには東京駅着いて駅ナカで食事して、その時に勢いをつけるために二人でビールは飲んでおいた。

しかし酔えるわけもなかった。

緊張感が半端なかった。

地下鉄を乗り継いで、駅から少し歩いたところの出版社の前に到着したのは約束の30分ほど前だった。

「で、でかい」

「しかも、きれいなビルだよ」

昼休みだったせいか、入り口からの人の出入りが激しかった。

「い、いく? ちょっと早いけど」

「ま、またんかい! ちょっと待つんや。あわてんなって」

まずは通り過ぎて、近くのビルの敷地内にベンチがあったので二人で座って息を整えた。

目の前にコンビにあったせいか、周囲で昼食をとっている人たちが多かった。

「ねえ、もうそろそろ時間だよ?」

「ええ? もうそんな時間たってたんかい」

「いこう。しょうがないよ」

そしていよいよ時間になったので突撃することにした。

「い、いこう」

「お、おう」

わたしたちは平静を装いながら自動ドアをくぐり、

言われたように正面にある受付(誰も座っていない)にある内線電話をかけて

担当様に来た旨を伝えた。

「なんて?」

「す、すぐ行きますって」

「そっか、ほな、待ってようか……」

待っている間もよく人の出入りがあった。

ただ、なんか今まで自分の知っている世界とは違う空気を感じていた。

そして、担当は現れた!

「やあ、ボクがキミを担当する印葉いんば れい、レイって呼んでくれていいんだよ。よろしくね」

ちょっと茶髪だけど、すらっとしたイケメンだった。

さりげないおしゃれないで立ちは、わたしの中での業界人のイメージとマッチしていた。

「は、初めまして! よろしくおねがいします!」

「ところで、君の後ろにいるのは……もしかして」

「あ、あの、ただの付き添いです! カバン持ちの下男です!」

わたしの即答に、背後でデブがなにか叫んでいたが、

わたしも担当さんもスルーした。

「そうか、やっぱりか。君のような女性が白い指を腫らして荷物を持つなんて、あってはいけないことだよ」

「はい!」

ああ、久々に見た素敵な笑顔のイケメンだよぉ……。

「ちょっと待たんかい!」

はい、後ろのデブは無視無視!


それよりも担当さんがやさしそうな人でよかった。

怖い人だったらどうしようかと思っていたけど。


少し立ち話した後で編集部を案内された。昼休みで人はほとんどいなかったが、イメージしていた雑多な感じはなく、非常にきれいな印象だった。

その後、1階にある大小のミーティングルームの一つで打ち合わせを行うことになった。

まずは応募した作品のこと、続編についてのこと、その進行状況の話をした。

話が一段落したところで、わたしはとにかく一番聞きたかったことを質問した。

「あの、自分で言うのも何なんですが、どうしてあの作品が最終に残っちゃったんでしょうか?」

イケメンさんはニコニコしながらわたしを見つめ返した。

「順を追って説明しようじゃないか。まずは最初に下読みをしてくれたある作家さんと話していた時にね、『今回面白そうなのを二次に上げてみた』と言ってたんだ。それが偶然ボクが二次選考で読んで、上にあげた作品だったんだよ」

そうか、まずは一次選考だよね。

偶然一次で読んでくれた人が、わたしの作品を気に入ってくれてよかった!

最初の一歩を与えてくれた、まだ見ぬその作家さんが天使にしか思えないよ……。

「ボクも『ぜひこのノリで出したい』と思ったんだけど、君の作品三次選考で編集部内で意見が分かれたんだよね」

「わかれた?」

「そう。『このノリ、メッチャいい』って言う人と、『全く乗れない』って言う人に」

そう言えば前にデブが『三次は複数のプロが見るからこのノリは無理』とか言ってたっけ。

やっぱあのノリは好みがわかれたんだ……。

「そ、それで、どうなったんですか?」

「どう話しても平行線だったからさ、『結論先延ばしちゃえ』て思ってさ」

「先延ばし?……」

「そう! ボクが最終選考のボックスにシュート! ってしちゃったんだよね」

あまりの軽いノリに椅子からずり落ちそうになった。

「い、いーんですか? そんなノリで最終にしちゃって?」

「いーんだよ。ボクがあの作品を気に入っちゃったんだから」

「え?」

「あれを最初に読んだ時からどうしてもこれを世に出してみたいって思っちゃったんだよ」

「そ、そんなに、あの作品を」

「そう。だから君は気にしないで。ボクのゆーとーりにやっていけばイーのさ」

「は、はい!」

「頑張って本にしよう!」

「はい! がんばります!」

デブはわたしと編集さんの横で黙々とお茶を飲んでいたが、

わたしたちの会話は続いた。

つづく!

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