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ひと時の夢見心地なナツコイジカン

あの時のわたしは、

夢を見て、現実を見て、

どっちが夢でどっちが現実なのかと思ってしまうような感じだった。

まるで好きな人に告白された夢を見た時に似ている。

嬉しさよりもとにかく自分に起こったことが現実として受け入れられない状態だったのだ。


電話を終えたわたしは

なんだかフワフワとした雲の上に漂っているような気がしていた。

「なんかいろいろ話しとったけど、結局どうなることになってん?」

「1週間後に結果をまた連絡しますって」

「そっか。ほな打ち上げは、ちっと延期やな」

「延期?」

「そうや。ま、君のためにもう少し夢見させとこうやないか」

そう言うと彼は脇に立っていた給仕を呼んだ。

「すんませんけど、今日はここまでや。つづきはまた今度お願いしますわ」

「ちょっと待ってよ、あとデザートとコーヒーくらいでしょ?」

「それを食ってしまったら打ち上げ成立でおしまいになってまうやん。楽しみはとっておこうやないか」

どういう理屈なんだよ……。

「じゃあ、うち帰ってお茶でも飲もうよ」

「せやな」



「なんかすっきりさわやかなお茶やな。なんやこれ?」

「あー、ナツコイって言うブレンド茶。毎年買ってるんだ、この時期」

「ふぅーん」

相変わらず薄暗いダイニングで、

わたしと彼はゆっくりとお茶の香りと味を堪能しながら一息ついた。

高級店は美味しくてドキドキするけど、少し肩が張るのだ。

やっぱ自宅ははいいわぁ……賃貸だけど。

「最終かぁ。賞、とれるかな?」

「いや、まず無理やろ。あのラストの締め方やで」

それを言われるとなんだかこの先の夢も何もないなぁ。

「だって、あれはあなたがこれでいいって言うから」

「お前が締め切りまでにもう4ページ内容のあるもの書けへんかったからやろ?」

「だって、エロいエピソードで縛ったからじゃない!」

「ま、エロじゃなくてもよかったんやけどな」

はぁ? 

じゃあ、あの時のセクハラまがいの発言はなんだったのよ?

「こんなことならもっと時間に余裕を持って実のあるエピソードを挟めばよかった……」

「せやな。あの『俺たちの冒険は今始まったばかりだ』みたいなラストは、続くんか丸投げしたんかようわからへんもんな」

「あ、あなたがこれでいいって」

「だから締め切りまでにお前がこれ以上書けないって言うから」

そんな堂々巡りな会話を最初に切ったのは彼だった。

「それにしても妙やなぁ」

「なにが?」

「絶対最終なんて残らへんと思ったんやけどなぁ」

「改めて昨年の最終候補とか見たけど、めちゃくちゃ数少ないじゃん」

わたしはテーブルの上に置いたノート型PCの画面を覗いた。

「そこに残れるような作品やないと思ったんやけどなぁ」

否定できない。

でもわたしはうれしかった。

最終に残れたことがうれしかった、というよりも、

これで彼との共同作業がまだ続く可能性が出てきたことがうれしかったのだ。

でも、そんなことは口に出さずに、

何となく彼の話に合わせて返事をしておいた。

「なんでだろうね……」

そんなことを話しながら、ゆっくり夜が更けていった。


そして1週間後と言われた結果の連絡は、1日早い6日後にやってきた。


「落ちました」

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