二次選考結果とハイ、ハーイ!
追いかけてくる過去は、立ち止まると背中に取りすがってくるけれど、
生きていくためには『今』という前を見つめて歩き続けるしかない。
だからわたしは、過去のことを振りほどいて、前を向いてまた歩き始めた。
そうやって毎日は繰り返されていくんだと思う。
『二次発表が出ている』
ネットの大型掲示板で、応募した出版社の新人賞スレッドを見たら、そういった書き込みが見えた。
たまにデマだったりすることもあるが、これだけ複数のリアルな書き込みがあるということは、本当のようだ。
というか、確かに今日が発表だということは覚えていたが、
こんな早い時刻に出てるの? マジで?
急いで発表のページに飛んだものの、
一瞬心臓が口から出てくるような錯覚を感じて目を逸らした。
前回の落選した時の嫌な気分が込み上げてきたからだ。
ない、ない……ない、なかった! 何度見てもない! あの絶望感!
ああ、今思いだしただけでもお腹痛くなってきた……。
でも、でも! 見たくて見たくてしょうがない!
怖いもの見たさなのか、なんなのか?
なんか、ちょっとこの独特の緊張感が癖になりそうな気がしていた……。
小太り同居人男がダイニングでホームランバーとかいう白い四角い棒アイスを食べているところに、わたしがノートパソコンの画面を男の方に向けてテーブルに置いた。
「見てよ、二次通過作出たよ」
「もう出たんかい、早いなぁ」
「二次通ったよ!」
彼は一瞬ポカーンとした表情になった。
「ほんまか?」
「嘘じゃないよ、ほらほら!」
わたしはPCの画面を指さした。
「ま、まじやん! わずか23人の中に入ってるやん!」
「やったぁー!」
「やった、やったで~」
小太り同居人男も、一次通過の時とは打って変って大いに喜んでくれた。
わたしも嬉しくて思わず彼に抱きついていた。
どさくさ紛れとはいえ抱きついてみると、でかくて肉が柔らかくて
……クマのぬいぐるみみたいでなんか気持ちがよかった。
「ついにプロの編者を一人騙せたで!」
な、なに?
「い、今何て言ったの?」
「いやいや、わしらの、あの作品のノリと勢いがプロの目に留まってくれた、ちゅうたんや」
そんなこと言ってなかった気がするんですけど。
「さ、今日はうまいもの食いに行くで」
「ホントに?」
「俺がおごったるさかいな。ハイ、ハーイ!」
最後の『ハイ、ハーイ!』はわけわかんないけど、
ま、マジ? 外食ですか? しかもおごり?
い、生きててよかったぁぁぁ!
そう。
後で思い返せば、この時がもしかしたらわたしにとって、
幸せの絶頂だったのかもしれない。
その後の展開など全く予想もしなかったこの時が。




