改変してリトライの方向で?
目の前でわたしの原稿を読むこの男は、
わたしにとって救世主なのか? それとも暗黒面へと誘う悪魔なのか?
ま、今はどうでもいいことなのかもしれない。
結果的に彼が天使でも悪魔であろうと、
少なくとも
わたしを単調な毎日から引っ張り出してくれたことは確かなのだから……。
「読んだで」
小太りの同居人男はそう言ってガリガリ君をかじりだした。
「どう?」
「まあまあ笑えるやん。女の子もかわええし、主人公の主体性のなさもいい加減でええなぁ。しかし、このエセ関西弁喋るランプの精はムカつくキャラやなぁ」
そのムカつくキャラは、おまえだよ!
わたしから見たお前なんだよ!
「でもホントにこれでいいの? 前の方がまともな気がするんだけど」
「うーん。確かにそうやな」
えー! 今更なに言ってくれんのよ!
「でもこっちの方が笑えるけどなぁ」
「そりゃ、お笑いギャグ路線だもん!」
「よっしゃ! これでいこう!」
彼が食べ終えたガリガリ君の棒をピシリと音をたてながら机に置いた。
「マジで?」
「大体重い話送って2次で落選したんやろ? 二次落ちってことはプロの編者が見てアカンってゆうたんやし、売り物にならんちゅうことやで」
「売り物……商品にならないってこと?」
「そうや。新人賞は本にして売るための賞やで? いくらよおでけた作品でも商品として売れる見込みがないもんはアカンやろ」
「そ、そっか。趣味や自己満の作品じゃダメってこと?」
「というか、趣味や自己満でも、商品として売れるものが書ければ問題ないけどな」
「あたしには、無理ってこと?」
「それは俺が言うことやないけど」
「ゆってるようなもんじゃない!」
「ま、どうせなら人と違う方向目指してみてもええんちゃうか、ちゅうこっちゃ」
「前から言ってるけど、違いすぎて受け入れてもらえないんじゃないの?」
あれ……聞いてないよ。無視ですか。
なんか原稿に赤ペンで何か勝手に書き込んでるし。
ま、ちょっとそのまま様子見よっかな。
でもなんでこういったことになると真剣に取り組むかね?
いつもニヤけてるのに、まじめな顔してなんか書いてるし。
きっとこの後あーだこーだと文句をつけて何か書き直させられるんだとは思うけど。
ま、真剣な横顔は悪くないかもしれないなぁ。
ちょっと暇なんですけど……。
「あのさ」
「なんや?」
「あ、いや、こんなギャグ小説書いて投稿しているなんて仕事場の人にバレたらどうしようって思っちゃったりして」
「ええやんけ。君の人間としての幅の広さ見せつけてやれや」
「うちの仕事場、意外と硬いとこなのよ? 万一ばれちゃったら仕事場にいられないかも」
「大丈夫や。そのために俺がおるんやないか」
「えっ」
もしかして……、
もし仕事やめることになっても、あなたがわたしのことを……。
「俺が表に出る」
「は?」
なんか嫌な予感がしてきたんですけど……。
「合作として書類上は君の名前は残るが、表立ってのことは全部俺がやるわ」
が、合作? なぜそう言った方向に発想が行くのか?
「合作って、あんた読んで文句言ってるだけじゃん!」
「そういうんは『修正』とか『手直し』っちゅうねん」
「ちがうし!」
「それより問題あんねん!」
彼が演技がかったような憂いの表情を見せながらため息をついた。
「なによ、これ以上……」
「ページ数足りへんやん。投稿規定、満たせてへんぞ」
投稿規定? そんなの全部任せていたから全然知らなかったんですけど。
「え、い、今更そんなこと言うの? 話は完結しちゃってるんだよ?」
「なんか二つくらいエピソード作って中に入れ―な」
「ど、どんなエピを入れんのよ?」
彼は突然目つきが鋭くなり、口角をあげてニヤッと笑った。
「お色気や、お色気!」
「お色気?」
「ちょっとエロいシーンいれんねん! 読んでる青少年たちを、ちこっとムラムラさせる程度のなぁ!」
なぜそこで急に叫ぶ? って言うか、エロシーンをわたしに書けというのか、この男は?




