窓の外をみつめていた
なにも変わらない日々が淡々と繰り返される。
そんな未来が来るなんて、子供の頃に想像できただろうか?
できないからこそ、あの時は未来に向けて頑張れたわけだし、将来の自分に心ときめかせていたのだ。
わたしはあの日も窓から外を見つめていた。
「保障とメンテナンス時期に関してわからないとのことなのでお願いします」
受付から回ってきた伝票に目を通し、お客さんの待つブースに行き、あいさつをして、そしていつものように説明を始める。
わたしはこの会社で売っている商品の内容、お客さんの疑問、苦情等に直接応対する仕事をしていた。
だからこの会社の商品のすべてを知っている(つもりだ)。
どういう点が長所で、そしてどこが短所で欠点であり、どう改良したらさらに良くなるかも知っているつもりだ。
でもわたしは只々商品に関して説明するだけの仕事であり、より良くするための意見を上に陳情する立場にはない。毎日が淡々と過ぎていくのだ。
自分が開発や企画の部署で働きたい気持ちはあるが、今の生活でも満足していることと、新しく何かを始めることが面倒なこと、特に人間関係が。
だから今のままでいいような気がして、なにもモーションを起こさないでいる日々が続いていた。
そう、あの日まで。
「君は、結婚の予定はないのかい?」
いつ以来だろうか、この質問は。
この手の質問は、今の世の中ではセクハラに値する事項なのだ。
昔は日常会話の挨拶のようにされていたらしいが、そんな世の中でなくなってよかったと思う半面、みんな心の中では、わたしを見てはそのことを気にしているのだと思うと、胃が痛くなってくる。
「子供はかわいいよ。でも大変。自分の時間もないし。一日中つきまとうし、大きくなったらなったで教育だとか進学だとか、お金もかかるし……あー、もう、先のこと考えると暗くなってくる」
早くに結婚した学生時代の友達は皆同じようなことを言う。
乗り遅れた感は否めない。
わたしもあの時もっと先を考えて決断しておけばよかった、なんて思うこともある。
でもあの時は仕事を覚え始めた時で毎日が忙しく、そして楽しく、充実していた。仕事も恋愛も。
そして、一人である程度仕事ができるようになった頃、不意に当たり前のように続いていた恋は終わりを告げ、それからというもの、なにも変わらない毎日が繰り返される人生が始まったのだ。
気がつけば先輩が、同期がやめてゆき、新人が育って、そして昨年やめていった。
わたしはいつまでこんな変わらない毎日を繰り返していくのだろうか?
「ゆうてもまだやっと三十路やん? アラフォーくらいになってから焦ればええんとちゃう?」
呑気な表情で他人事のように言う小太りの男は
ルームメイトだ。
なぜこんな男と共同住宅にいるのか?
思い出すのもなんだが、あれはちょうど長い恋が終わって、傷心の日々を送っていた頃だった。




