③
この国の第三王子であるフェリクスは今年20歳になった。だが、婚約者はいない。
10歳を過ぎたあたりから、原因不明の体調不良に悩まされていた。主にひどい頭痛である。高名な医師に診てもらっても、薬を飲んでも、良くはならなかった。
しかし、王子である以上、人に弱みは見せたくなかった。体調不良を悟られないよう、痛みが出れば出るほど堪えるため、鬼の形相になっていった。
また、身体を動かしている方が気が紛れるので、騎士団に入団し鍛えた。筋骨隆々の身体が出来上がった。
事情を知らない人々からは恐れられるようになった。特に女性には恐れられ、身分の高い令嬢からは距離を置かれた。結婚は諦めた。
ある時、街の外れの薬屋で売られている、何らかに効くらしいという魔法薬の情報が入った。上司であり護衛のアレクセイに入手してもらった。
飲んでみたところ、ひと時ではあるが痛みがおさまった。長くて暗いトンネルから抜け出たようだった。
『魔法薬の作成者に会いたい!』
アレクセイに薬屋に作成者に会えるよう、交渉してもらったが、断られた。それからは薬屋に見張りをつけて過ごした。どうやら月に一回月初めあたりに納品しているらしい。
月初に見張っていると、黒いマントのフードを目深に被った者が大きな箱を持って薬屋に入っていくのが見えた。
『いかにもこの者では?!』
急いで後を追って薬屋に入った。
黒いマントの者はやはり魔法薬の作成者だった。
あっさり城に来ると言うではないか。
薬屋はなぜ頑なに断っていたのだろうか。
しかも、2人とも私を怖がらなかった。
フードで見えないのか?
声を聞けば女性であるように思われる。
私が困っているとも言った。
わからないことだらけである。
エマはあっさりと体調不良の原因を見抜いていた。
魔力の流れがわかるとは、この国には稀な魔力を持った魔法使いなのではないだろうか。
エマの魔法により、一瞬にして体調が良くなった。
奇跡だ!
エマは命の恩人だ!
エマの事を知りたい!