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エマ達はお土産にチョコレートを購入し、城に戻った。早速、王妃の様子を見に部屋を訪れる。
顔色もすっかり良くなったが、2ヶ月間寝たきりであったので、ベッドから出て歩く練習をしていた。王妃の傍らには国王が手を取って寄り添っていた。
「エマ殿からみて王妃の様子はいかがかな?」国王は言った。
「…魔力量も回路も問題ないです。後は魔力をご自身で流せるようになれば停滞することが無くなると思います。」
「魔力を流す。どのようにすれば良いのですか?」王妃は質問した。
「…今は急ぐ必要はございません。」
「…歩行が安定しましたら、フェリクス様が魔力の流し方を習得しておりますので、訓練されていけばよろしいかと。」
するとフェリクスは「エマ殿、長期滞在が無理ならば、せめて週に一度城に来てはいただけないだろうか。」
「…ですが…」
「フェリクス。エマ殿を困らせてはならぬ。」
「しかし!エマ殿が帰ってしまっては、連絡手段がありませんし、今後会えなくなるかもしれません。まだまだ魔法についても学びたいし、エマ殿についても知りたい!」フェリクスは必死だった。
「…」
「…では連絡手段があればよろしいのですか…」
「せめて連絡だけでも取りたい、、、」フェリクスは項垂れる。
「…連絡を取り合える通信魔法がございます。それでよろしいですね。」
フェリクスは目を見開き「頼む!」と頭を下げた。
「…この魔法も、魔法陣を設置しなければなりません。」
「…設置した者と、設置された者のみの通信になりますので、他の方は使用できません。」
「…ですので、やたらな場所には魔法陣を刻むことができません。」
「何処に刻んで貰えば良いのか?」
「…魔法陣は物に設置します。人体には設置することはできませんししてはなりません。」
「ならば、肌身離さずつけているものがよいな。エマ殿、明日にでも宝飾店に行こう。揃いの指輪などはどうだ?」フェリクスはやや興奮気味である。
「…揃いにする必要はございません。今身につけているものがあればそれで充分でございます。」
「では、王家の証の腕輪に設置してもらえるか?王家の者ならば肌身離さず付けているものだ。」
「…そのような大層なものに設置してしまってよろしいのですか?…」
「私が許す。」「エマ殿、私からも頼みたい。」横で聞いていた国王が言った。
「…かしこまりました。」
「エマ殿には身につけているものがあるのか?」
「…はい、ございます。成人した日に師匠からいただいた指輪でございます。」
左手の人差し指にやや幅の広い模様の入った金色の指輪が、細くて白いエマの指にぴったりとはまっている。
「なぜ人差し指なのだ?」
「…理由は分かりません。師匠に言われた通りにしております。」
「そうか。では早速お願いしよう。」
フェリクスは左の手首にはまっている、金色で装飾の付いた腕輪を差し出した。