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「移転魔法!それはどんな場所へも行けるのか?」
「…移転の魔法陣を設置した場所のみの移動となります。」
「所構わずというわけではないのか。」
「…その通りです。一度訪れ、魔法陣を設置しなければなりません。」
「それは誰でも使用できるのか?」
「…いいえ。家に鍵があるように、私だけ使用できる術式になっております。万が一に備え設置場所は慎重に選んでおります。」
「なるほど。」フェリクスは思案したがこの話は一旦これで終わりにした。
しばらくして季節のフルーツが沢山のったタルトと紅茶が運ばれてきた。食後のデザートを堪能していると、少し部屋の外が騒がしくなった。
コンコン。
扉がノックされ、護衛のアレクセイが「フェリクス様少々よろしいですか?」扉の向こうから言った。
「何だか騒がしいな。少し様子を見てこよう。エマ殿こちらで待っててもらえるか?」
「…承知しました。」
フェリクスが扉を開けたその時、ドレスを着た美女二人が立っており、すぐさま部屋に入ってきた。
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「あら、お部屋を間違えたかしら。」
バーガンディの髪を結い上げエメラルドグリーンの瞳の凛とした美女が言った。
「義姉様、それはわざとらしいですわ。」
アプリコットの髪色でガーネットの瞳のもう一人の柔らかい雰囲気の美女が言った。
美女二人はエマに向き、「貴方がエマ様ですね?」と言い、バーガンディの髪の美女が「私はイザベラと申します。」と名乗り、アプリコットの髪の美女は「私はエミリアと申します。」と名乗った。
二人の雰囲気に押されながらも「…エマと申します。」と答えた。
イザベラが「ふふっ。私は第一王子の妻ですの。エミリア様は第二王子の妃ですわ。」
「王妃様を治して下さった方にお会いしたいのに、誰か様に忙しいと断られていましてね、折角この素敵なレストランを紹介したというのに。」
エミリアが「エマ様ようやくお会いできて嬉しいですわ。王妃様を治していただき感謝いたします。」と言った。
「…どういたしまして。」
「ふふっ。この方が、第三王子をメロメロに…」とイザベラが言いかけたところで、フェリクスが遮るように「義姉上。勝手に入って来て、私どもの邪魔をしないでいただきたい。」と少々大きな声で言った。