⑫
ちょうど一時間後。扉をノックし、フェリクスが訪れた。
「…どうぞ。」
フェリクスが入室した。
エマはソファから立ち上がった。
「…おはようございます。」
「おはよう。ゆっくり眠れたかな?」
「…はい。とてもふかふかのベッドで寝心地が良く、ぐっすり眠る事ができました。」
「それは良かった。」フェリクスは目を細めた。
「早速だが、母上をみてもらった後、魔法の指導をお願いしたい。」
フェリクスはエマの手を取った。
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王妃は眠っている。
顔色も良いし、少しずつ魔力が作り出されているものの、魔力の停滞もない。作成した回路もちゃんと作動している。
「…今のところ問題ないかと思います。」
そばで見ていた国王はホッとする。
「では、エマ殿そろそろ指導をお願いしたい。私の部屋で良いかな?」とフェリクスが言った。
「…出来れば広場のような所が良いかと思います。誤作動した時にお部屋だと大変な事になるかも…」
「では、北側の広場はいかがかな。東屋やベンチはあるが、人通りはほぼ無い。木に囲まれ、涼しいのも良いだろう。」
国王が提案した。
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魔力には色がある。主に金、銀、銅、白、灰色、黒の6種類だ。
金はオールマイティの色。
銀は金と同じだが金よりも魔力量が劣っている色。
銅は生活に使う色。
白は治癒の色。
灰色は防御の色。
黒は攻撃の色。
この世界は国同士の争いは無い。
人との争いは行わないと条約が結ばれている。
たまに魔獣がどこからか現れ、国同士協力して魔獣を倒している。
そこで魔法が使われていたのだ。
ただ文明が発達し、魔獣を倒す機械が開発されたためほぼ魔法は使われなくなっていった。
フェリクスの魔力は灰色である。
エマはフェリクスにその事を伝え、防御魔法の術式を習得するよう勧めた。
防御は盾のようになったり、バリアを張ったりする事ができる。
「使えるようになるととても便利だな。」
「では、よろしく頼む。」
エマは小枝を拾って、地面に術式を書きながら説明を始めた。鳩尾の辺りで魔力を流すよう意識し、指先から魔力を出すイメージでとアドバイスした。
フェリクスは一つ一つの意味を理解しながら術式を唱えてみた。すると、しばらくして灰色の魔法陣が出来上がった。
「…!」
「…こんな短時間で成功するのは凄い事です!」
フェリクスは覚えが早い。
「魔力が出ると体が軽くなる感じがする!この魔力が溜まって不調になっていたのか。自分でコントロール出来るようになれば、不調とはおさらばだな!」
「エマ殿ありがとう!」
フェリクスは興奮してエマに抱きついた。
「…苦しいです…」
(…やっぱり距離が近い…)
「すまん。少々我を忘れてしまった。」
フェリクスは離れた。
「して、この魔法陣はどうしたら良いのだ?」
「…どこかにバリアを張るか、攻撃魔法を何度か受けたら消えると思います。」
「エマ殿は攻撃魔法は出来るのか?」
「…はい。」
「ではやってみてくれ。」
エマはフェリクスの魔法陣に指先を向けて一瞬にして魔法陣を消した。
「エマ殿。こんなに簡単に消えてしまって、防御出来るのか?!」
「…しっかりとした防御の魔法陣ですので大丈夫です。」
「…ただ、私のような者ですと、大体無効にする事が出来ます。」
「エマ殿の魔力は何なのだ?」
「…銀でございます。」
「やはり規格外だな。」フェリクスはつぶやいた。
「そろそろ昼食の時間だ。城に戻ろう。」
また、フェリクスはエマの手を取った。
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城内から国王と第一王子のアルバート、第二王子のフィリップが二人の様子を見ていた。
国王「なんだかイチャイチャしておるな。」
アルバート「フェリクスが一方的なようですね。」
フィリップ「そのうち結婚するって言い出しそうですね。」
三人は笑い合った。