⑪
フェリクス
ーーーーー私室にて
エマ殿。今朝、初めて会ったばかりなのに、何でこんなに気になるのだろう。
長きにわたる私の不調を一瞬で治してくれた。
賢くて、控えめで、魔法も使いこなして。
軽くて、ふわふわで、いい匂いがして。
声が可愛い。
考えれば考えるほど気になり、眠れなくなったフェリクスだった。
エマ
ーーーーー客室にて
…何だか長い一日だったなぁ。
…久しぶりに魔法使い過ぎてちょっと疲れたな…
…こんなに他人と関わったのは初めてだし…
…でも王妃様も第三王子様も良くなってよかった。
…図書室も行けたし。
…美味しい食事も出来たし。
…何だか第三王子様近かったな…
…すごい心配性だったし…
…明日は魔法の指導だ。頑張らないと…
考えている間に瞼が重くなりエマは眠りについた。
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コンコン。
扉をノックする音が聞こえる。
エマは朝弱い。
まだふかふかのベッドの中にいるエマは、働かない頭で返事をする。
「…はい…」
「エマ様、マリーです。」
「朝食の時間になりましたが召し上がりますか?」
(…寝坊したかな…今何時だろう…)
「…あの、すみません。今起きたばかりで…」
「お疲れでしょう。食事はお部屋で取れるようお待ちいたしますので、ごゆっくりお支度ください。」
「あと、冷やしたレモン水を用意しましたので、お部屋に入れておきますね。」
マリーは少しだけ扉を開けてレモン水が乗ったワゴンを入れた。
「…ありがとうございます。」
扉が閉まったのを確認し、エマはのそのそとベッドから出て、レモン水を手に取り飲んだ。
(…スッキリして美味しい。)
そしてエマは顔を洗い、身支度をする。用意してもらった上質だがシンプルなワンピースに着替え、洗浄魔法をかけたマントを羽織った。
しばらくすると、マリーが朝食を持って来た。
「エマ様朝食をお待ちしました。」
ソファでボーッとしていたのでエマは生返事してしまった。
「…どうぞ…」
マリーは入室し、息を呑む。
後ろ姿であるが、エマのまっすぐで艶やかな銀髪がソファの背もたれから見えた。
「エマ様、フードは被らなくてよろしいのですか?」
(…あ、忘れてた…)慌ててフードを被った。
「…すみません。ありがとうございます。」
「エマ様はとても綺麗な御髪ですね。」マリーは思わず感嘆の声を出す。
「いつかフードが外れたら、是非ばあやにお手入れさせてくださいませ。」
「それと、フェリクス様が一時間ほど経ったらお迎えに参ります。」とにっこり微笑みながら、退室した。
それから、エマは朝食を取った。