「霙(みぞれ)」が無い!
「霙」が無い。
以前に読んだ小説をまた読みたくなって文庫本を探した。渡辺淳一の「死化粧」、いまは角川文庫のしか無いようだ。いつものごとくAmazonでポチって届いた本が「なんか薄いな?」とは思っていたのだが、パラパラめくるとお目当ての「霙」が無い。慌ててAmazonの書評やその他を見て回ったところ、同じ書名でバージョン違いがあるらしいことを知った。
私が買ったのは表紙が女性のツタンカーメンの棺桶みたいなもの。以前手にしたのは表紙が風景画のもの。同じ出版社、同じ書名の文庫本で、表紙や帯以外の「中身が変わっている」なんてことがあるのか?。
「霙」は渡辺淳一の初期医学ものの一つで、1967年上期・第57回直木賞候補作になった。表題作の「死化粧」(1965年下期・第54回芥川賞候補作、第12回新潮同人雑誌賞受賞作)、「訪れ」(1967年下期・第58回直木賞候補作)、「ダブル・ハート」(1968年8月8日の日本初の心臓移植手術の「前」に書かれた作品)とともに、一冊にまとまっていたはずだ。
奥付けを見ると、1971年5月20日初版、2018年8月25日改版初版、2023年6月30日改版再版、とある。奥付け前に、「本書は、1971年5月に刊行された角川文庫を定本とし、〜(中略)〜、明らかに誤字と思われる箇所を訂正しています。」とあり、初版の4篇のうち1篇を除外した理由は明示されていない。社会情勢の変化その他で不適切な作品、ということでは無いと思われる(作中でロボトミー手術にも触れているが、「まだ効果があるかどうかわからない」と紹介だけである)。がしかし、入手した文庫本には所収されていない。
結局、表紙が風景画の旧バージョンを探して楽天市場の中古書店を利用することにし、今日届いた。初版25刷のもの。確認すると「霙」は記憶通り巻尾に掲載されており、これで何十年か振りに読み返すことができそうだ。