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魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


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最終話 新しい世界の為に




 アトランティス首都を目指すレジリエンスらは一筋の光の柱が天に向かってそびえているのを見た。


「この街道を抜ければ首都はもう目の前だ。しかしあれはなんだ?」


道中の案内をする反乱軍リーダーのクレアルコスに


「あれは異世界への道を繋ぐ光だ。もう儀式が始まっている。急がなければ」


レジリエンスの言葉を受けて一行はその歩みを速めた。




首都中央に建設された塔の頂上の玉座を模した装置に腰かけた魔甲闘神メサイヤの鎧を身に着けたティブロンは部下のハスカールから敵接近の報告を聞いた後部下を全員町から退去するように命じた。


「しかし、御身を守るのが我々の仕事ですが」


「その相手は私と同等の力を持つ。無駄な犠牲を町や兵士に強いる事は無い。ただ塔の制御を私自身で行えるようにしておいてくれ」


そんなやり取りを終えたティブロンへメサイヤの鎧が囁く。


『クダラン誇りを捨てテ我に体を明ケ渡ス気にナッタカ?オマエモ静寂の良サがワカッテ来タナ』


『違う。これが最も被害の少ないやり方というだけだ』


『オマエでは奴ニハ勝テン。オマエの望ミは絶たれる』


『奴には負けん』


『負ケルトモ。ソレガ人の限界ダ』


『鎧風情が!黙って見ていろ!!』


ティブロンは鎧の力が見せる、レジリエンスに敗北するビジョンを振り払うように言う。


「タワーを起動させろ!その後私以外のアトランティス人は退避せよ」



首都の城門は不気味な静けさをたたえていた。


ここまでの道中全くの無抵抗であり、今また人の気配のしない街


「ところで君達はどうするつもりだ?」


クレアルコスがハイパー・ノテロスの合身準備に入ろうとするレジリエンスとアイディオンに尋ねる。


「どうとは?」


「つまり戦後だよ。この戦いは間違いなく我々が勝つ。その後は君達はどうするつもりなのだ?」


「生きて帰ってくる保証は無い。だがもし帰ってこれたら世界をこんなに風にした一端の責任を果たすつもりだ」


「それは政治に関わるという事か?」


「いや」


レジリエンスはクレアルコスの言わんとすることが分かって来た。


(アトランティスの代表になりたいのか、奴は。そのライバルに俺達がなると思っている。どちらにせよ気の早い奴だ)


「私は町へ戻ります。そしてこの世界の人々との折衝を続けながら、世界の行く末を見守りたいと思います」


「だがお嬢さん、それは宝の持ち腐れという物ではないかね。私は」


クレアルコスは最後まで言えなかった。


強烈な振動が大地を、空間を震わせ始めたのである。


「どうもおしゃべりをしている時間はなさそうだ。合身する」


光に包まれ、レジリエンス・サンダーバード・ガッシングラムとアイディオンの鎧が一つになりハイパー・ノテロスへと変わる。


「やる事は前回と同じだ。メサイヤを倒す事以外はな」


『これが最後の戦いだ』


『やってやろうぜ』


達人は一瞬エリクシリオへ振り向く。


「必ず勝って戻ってこれるように全力を尽くします」


自分の答えにエリクシリオが頷くのを見てハイパー・ノテロスは塔目指して飛翔した。




「来たか。芹沢達人いやハイパー・ノテロス、決着をつけるぞ」


メサイヤは向かってくるハイパー・ノテロスへ右手をかざす。


光の衝撃波がノテロスを震わせるが構わずノテロスは突っ込んでくる。衝撃波は以前反乱軍を塩の柱に変えたあの光だった。それを片手をかざしただけでハイパー・ノテロスは耐えた。


「ならばこれはどうだ」


メサイヤは4枚の翼を広げ、翼が発光する。


4つの光はメサイヤの目の前に一点に収束し超高熱球として放つ。



『おい、こっちも攻撃しないとジリ貧だぜ』


ハイパー・ノテロスの装甲はメサイヤの攻撃を無傷で凌いだものの合体限界時間は刻々と迫っていた。


「分かっている」


ハイパー・ノテロスは両腕を突き出し、右手のトライデント・左腕の大斧・そして胸のグリフォンの頭から赤い光がそれぞれ伸びて彼の目の前で巨大な光球ストイケイオン(ギリシア語で元素の意)を撃ち出した。


二つの光球はぶつかり合い、膨大な熱と衝撃波を周囲に発生させながらも次第にノテロス側に優勢になっていった。


「馬鹿な!押されているだと」


「言ッタダロウ。オマエは負ケルト」


「そんな事があああaaa!?」


「見ヨ。我ガ力ヲ」


メサイヤの中に潜む『神』は押し戻された光球とハイパー・ノテロスの撃ち出した光球をわが身に吸収しながらそのエナジーを利用してティブロンの肉体と精神を完全に乗っ取ってしまった。



「やったか!!」


『いや、何かおかしい。光の消えるのが早すぎる』


『おい、内在エナジーが増えていないか?』


サンダーバードとガッシングラムの指摘に


「奴はまだ生きている?それどころか無傷だ!?」


目の前に無傷で玉座に座るメサイヤを見てハイパー・ノテロスは愕然とする。


瞬間今までにない強烈な衝撃が襲う。


「グッ、これは」


「見たか。これがこの鎧の真の力だ。人間には到底成し得ない、神の力だ」


「神だと?神権政治でもやるつもりか」


「そうだ。ただし人間を抜きにしてな。この大陸の欠けた部分を取り戻し人間全て消去する。アトランティス人も現生人類も一皮むけば皆同じ、争い合い、世界を壊す事しかしない愚か者だけだ。それは完全な世界を作る上での汚らしいシミでしかない。そのシミ共のやり取りを我は鎧の内側から見ていた」


真なるメサイヤ、魔甲超神真メサイヤは衝撃波を強める。その力は先程とは比較にならない。


「人間がいなくなれば世界は平穏になると、自分の思い通りになると思っているのか?」


トライデントを、左腕の大斧を失い、各部の装甲を吹き飛ばされながらもハイパー・ノテロスは真メサイヤへと徐々に近づいていく。


「そうだ。我は全てを知っている。過ちなど犯さぬ」


「いいや。知らない事が一つある。それを教えてやる」


「下郎が!!」


真メサイヤは更に衝撃波を強める。


しかし翼を、腕を、足を、頭部を。全身の装甲をひび割れさせながら徐々に失いつつもハイパー・ノテロスの進撃は止まるどころか徐々に加速してメサイヤへと迫る。


「何故だ!?何故、消えない?何故近づいてくるのだ!?」


「それがお前が全知全能でないという証明だ。そして」


「黙れ!!!」


怒声と共に真メサイヤは最大の衝撃波を放つ。


彼の目と鼻の先へ迫ったハイパー・ノテロスが粉々に砕けたかに見えた。


だが砕け散ったハイパー・ノテロスの中からレジリエンスが飛び出し玉座に座る真メサイヤを殴りつけた。


「何だ、これは!?」


「それは痛みだよ。人間も、この世界に生きとし生けるもの全てが知っている事だ」


「これに耐えているだと、これを我hあああしらないいい!!!????」


「メサイヤは攻撃を受けたことが無かった。だから痛みを知らない。痛みを知らない者は優しくなれない。優しさを知らぬものに世界を統べる資格はないんだよ。それは他者の事を考えられないという事だからな」


「そんな事は無い、いや完全でない者に支配は出来ないそう考えたのは・・・我」


自己の矛盾を知った『神』は光に包まれていく。


玉座となった塔と共に。


「支配ではないやり方を俺達は探す」


「不可能だ。また今日と同じことがいずれ繰り返される」


「そうならない為に俺が、俺達がいる」


その言葉と共にメサイヤと塔は光となって消え去った。


達人の言葉はメサイヤへ届いたかどうか、それは彼にも分からなかった。




その後の世界は審判の日以前には戻らなかった。


ティブロン亡き後クレアルコスがアトランティス全体の代表となり各国との和平を結び、エレメンタル・エナジー関連の技術を公表した事でかの国が世界情勢の主導権を握る形となっていった。そして融和政策の一環として各国に交流の場を設けていった。既存のエネルギー資源等の既得権益を奪われた国の反発や軋轢はあったものの、それも便利さや使いやすさが世に知れるにつれて徐々に解消されていった。


それ以上に混乱の中で生きる為にUMAとなった人々の方が問題だった。


彼らはもはや既存の社会にも現在新しく作られようとしている社会にも居場所はなく、世界に攻撃をしかけていた。


これに対抗するために独立治安維持部隊『プラフェクトス』がアトランティス主導の下創立された。


芹沢達人と黒川ケイはその一員として戦う事となった。




「ほら、人生初の学校に初日から遅刻するとかダメだからね」


「分かっているよ」


日本のK県f市は先に挙げた融和政策におけるいわゆる『アトランティス特区』の一つとなった。


その一つとして人種の別なく学べる学校の必要が急務とされてf市においてはエリクシリオの町にそれが建設されたのだった。


この学校は幼等部(小学校に当たる)から大学までを複合していたが近年の人口減少の煽りを受けて全てを合わせても生徒数は250名しかいない。


「やっぱり学校出とかないと昇進とか出来ないの?」


「そう言われた。だが俺としては純粋に世界の為の知識を身に着けたい」


再建されたf市の街並みはそれだけみると審判の日以前に戻った様に見える。


だが駅前に建造された風車型の巨大なモニュメントや今彼らがいる大通りの交差点に見られる風車のミニチュア版は以前にはなかったものだ。


これらは各種エレメンタル・エナジー蓄積し、各地へ送り届ける送電線の役割を果たしている。


そしてもう一つの役割があった。


そのモニュメントが赤く輝きだした。


それを見た人々は足早にその場から立ち去る。


「紗良、先に行っていろ。すぐ追いつく」


「分かった。気を付けてね」


「ああ」


達人はレジリエンスの鎧を呼び出すと装着する。


装着完了と同時に彼の目の前に合成UMAヨーウィと数体の類人猿型UMA XYZ110体が現れた。


このモニュメントはUMA出現の『予報』装置でもあった。


「数が多いな」


「何ッ、何で貴様がここにいるんだ」


「悪事をやめろとの天の采配だろうよ。警告する。大人しくこちらの誘導に従いUMA専門家へ会えば良し、そうでないならここで死ぬことになる」


「抜かせ。数はこっちが上だ。全員で掛かれば」


ヨーウィが後ろを振り返るが既に半数のXYZ1は戦意を失っていた。


「UMAが自由に生きられる国があるっていうのは本当なんですか?」


「そうだ。そこの指導者の1人に引き渡す」


おずおずと尋ねたXYZ1の1体にレジリエンスは意識して優しい声音で返す。


「コイツ、裏切り者がどうなるか。見せしめだ」


ヨーウィが手から火球を放つがそれは離反者に届くことなくサンダーバードに止められた。


「チッまだいやがった」


その隣でまだ彼に従い、裏切り者に襲い掛かるXYZ1をガッシングラムが斧で切り裂いた。


「どうする?降伏するか?」


「ふざけるな!俺達はこうするしかないんだよ。化物らしく人を襲う。それ以外に恨みを晴らす方法はないんだよ」


「仕方あるまい」


レジリエンスはサンダーバード・ガッシングラムと共にケイモーン・ノテロスへ合身し


トライデントの片方に稲妻をもう片方に強風を纏わせる。


そのトライデントを頭上で回転させるとUMA軍団を風と雷の結界が包み込む。


「風よ嵐を呼べ。炎よ空を熱し、稲妻となれ。アネモヴロホ(ギリシア語で暴風雨の意)」


詠唱終了と同時に三叉槍を地面に打ち付ける。


同時に巨大な稲妻が結界を貫き、熱し、爆発させる。


敵対したUMAを一掃したノテロスは改心したUMA達を別次元の『残されたアトランティス』へと誘導し、そこにいるイエティへと彼らを引き渡した。


「後の事は俺達に任せて、タツトお前は学校へ急げよ」


「頼む」


ガッシングラムの言葉に頷くとレジリエンスは元の世界へと急いだ。




学校の中庭で入学式が始まっていた。


(結局間に合わなかったな)


八重島紗良はそんな事を思いながら理事長へと就任したエリクシリオの挨拶を聞いていた。


そこへ中空からレジリエンスが出現し、全校生徒の目の前に降り立った。


注がれる驚きと好奇の視線。だがケイや紗良の様にそのどちらでもない呆れた視線を送る者もいる。


全員の視線が集まる中達人は灰色の煙を吹き出しながら鎧を脱ぐと


「遅れて、しかもお騒がせしてすみません。俺は芹沢達人。魔甲闘士レジリエンス。よろしく」


彼らそして新しい世界に向かってそう挨拶するのだった。

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