第55話 マルス対レジリエンス
恐るべき殺気と覚悟を漲らせたマルスの黄色のツインアイがバイザー越しに輝く。
左腰に装着したADプレートを投げつけると同時にパワードスマッシャーから5条のビームを発射。プレートは5つに分離し、その5つそれぞれにスマッシャーが当たる。
「あの円盤はビームを反射するぞ!」
レジリエンスの言葉に3体のUMAは周囲にバリアを張って対応する。その反射がどう来るか分からないからだ。
だがレジリエンスもマルスの各種装備が改良を加えられているのを知らない。改良されたADプレートは当たったビームを2倍に増幅したうえで拡散して反射できるようになっていた。ビームをうけた5つの破片はその熱線を細かい無数の光線に変換し、辺り一面を焼き払う。
「うおっ!」
「まるで、ビームの嵐だ!」
その熱線の嵐の中で全員がマルスの『ミサイルウェポンファイア!』のコールを聞き、上空を見る。マルスの背後から放物線を描くようにイノシシ型サイドカー・カノンボアから対UMAミサイルが降り注ぐ。
攻撃側は着弾の爆風と炎の中フライング・ヒューマノイドとイエティ、レジリエンスとナウエリトの2組に分かれて散開する。その隙を逃さず爆風の中をリモートコントロールされたガンウルフが駆け抜け、高速ターンと車体前後に備えたブラスターとガトリングで体勢の整わないフライング・ヒューマノイドとイエティを撃つ。
「いつまでも調子に乗るんじゃねえ!!」
爆風をいち早く抜けたナウエリトが単眼から高熱熱線を放つ。だがその熱線はマルスの眼前でグニャリと曲がり、ナウエリトの斜め後ろから飛び出したグランドウォリアーへ直撃。ビームを曲げるエレメンタル・アーチシステムを作動させたのだ。
「チッ、トンでもねえものを持ってやがるッ!」
間髪入れずに打ち出されるガトリング光弾をバリアで防ぐが光弾はバリアを崩壊させ、ナウエリトへダメージを与える。
一方、爆炎に紛れてグランドウォリア―へと合身したレジリエンスはそのまま高周波アックスを構えたまま突撃する。それに対しマルスもパワードスマッシャーのリム部分、砂割パワードペッカーの両翼を後部へと引き絞った最大出力モード、ガトリングランスも最大出力へと切り替えると両腕の銃器の引き金を同時に引く。
パワードスマッシャーのリム部分が前方へスライドするのと同時に5条のビームが一点に集まり巨大な緑の光球となり、ガトリングランスの方もその砲門から極太の黄色のビームを照射する。
「この2つを同時には防げまい!」
事実速度の速いガトリングランスの照射ビームをグランドウォリアーの斧はその高周波で切り裂いていたが、その光の後ろから迫る光球はグランドウォリアーの全身を包み込むほどの大きさだった。だがその光球は彼らの死角を縫うように飛び出してきたナウエリトの高周波ランサーに切り裂かれ威力を半減しながらも遂にグランドウォリアーを飲み込んだ。
「借りは返したぜ」
そう言うとナウエリトは膝をつく。
「まだだ!」
2人の魔甲闘士は同じ言葉を叫び1人は全身から黒煙を上げながら斧を振り上げて跳躍、もう1人はカノンボアに迎撃を命じつつ、武器カートリッジを交換する。
対マルス戦で最も注意すべきは実弾表面に仕込まれたUMAの細胞を狂わせる特殊コーティングである。
この事は事前に達人はサンダーバードとガッシングラムと共に対策を講じていた。それ自体は難しいものではない。単に分離するだけの事である。空中で左右に分かれたガッシングラムはその場で待機、レジリエンスは小さな跳躍を繰り返しながら左肩先端のエレメンタル・アンプリファイアを三角形に変形させて杖先に装着、炎の剣・フレイム・キャリバーを杖先に形成し、袈裟切りに振るう。
「くッ」
接近戦では分の悪いマルスはガトリングランスを変形しランスモードでそれを防ぐが青白い炎を上げるキャリバーに穂先を溶解されると同時に後退をかけつつ残された無事だったガトリング砲を連射する。
(レジリエンスは身を守る為にトイコスを張るはず。だがこちらの出力はそれを上回る!)
マルスはレジリエンスの左腕が土の記号たる逆三角形を描いた事で、今までのデータから最後の横線を引いてトイコスを唱えると睨んでいた。こちらは壁を破った隙に奥の手を使う準備を行うというその目算は外れ、レジリエンスはガトリングの直撃を受け、火花を散らしてのけ反った。
『落ち着いてケイ君、後ろよ!』
マルスが決着を焦るのは武器に回せるエナジーが限られている事とレーダー上で3つの光点が最終防衛ラインを越えてタワーに近づいている為だった。だがナビゲーターの笠井恵美の警告で幾分冷静さを取り戻したマルスは右眼の端に突如現れた灰色の壁を急旋回で躱す。だがその先にもう一つ新たな灰色の壁が新たに出現、マルスは再び進路を変更せざるを得ない。わずかな隙を逃さず、飛び上がったレジリエンスは火球を放つ。レジリエンスもまたマルスの行動パターンから対策を立てていたのだった。
空中でレジリエンスは杖のアンプリファイアを右足にセットし爆発で飛び散ったアスファルトの破片に杖先に形成した水の銛を巻き付けて移動、炎を纏った飛び回し蹴りを放つ。マルスはそれをADプレートで受けるが、閃光と共に盾は溶解し体勢を崩す。レジリエンスはそのマルスを抱え込み、投げ飛ばす。投げられたマルスは空中で『フルフレジット』のコールをパワードペッカーへ伝送、一瞬にして飛行形態となると翼の4門のビームを斉射、カノンボアの許へと向かう。
パワードペッカーと分離し、カノンボアと合体しガンフォートレスモードとなったマルスはパワードスマッシャーを最大出力モードにして、構える。だが先程とは違い、ビームの色は白銀だった。
(あのエナジー反応は、反物質砲と同じか!?)
レジリエンスの読み通り、これがマルスの最大の切り札『カラミティ・イレイザー』だった。
文字通りの手持ちの反物質砲でディバイン・ジャッジメントの1.3倍の破壊力を持つ。その威力の実現にマルス本体とカノンボアの動力炉の出力を合わせなければならないものの、その力は絶大である。
(おい、予定通りノテロスに合身だ!)
(分かっている!)
レジリエンスもケイモーン・ノテロスへと合身。マルスとの決戦において絶対に避けて通れないのが『反物質砲をどう攻略するか』だった。
『チャージ速度は恐らくディバイン・ジャッジメントより早い』
『こちらも発動の早いBタイプで行くぞ』
「分かった」
合身と同時に敵の状況を分析したガッシングラムの報告とそれを受けたサンダーバードの案を受けてケイモーン・ノテロスは右手の両刃のトライデントを突き出すと同時に回転させると風と炎のエナジーを纏った2つの刃が前方に彼から見て右側に赤、左側が緑色の円を形成する。このアネモヴロホの簡易版と言えるBタイプは通常より威力は若干劣るが発動は早い。
「カラミティ・イレイザー・・・」
「風よ唸れ。炎よ光を熱して、稲妻となれ」
「ファイナルシュート!!」
「アネモヴロホ!!」
弓状の白色光がパワードスマッシャーから、トライデントで裂かれた円の中心から黄金の渦状のエナジーが同時に発射され、激突。辺り一面を白一色に染める中両者は凄まじい衝撃で後方に吹き飛ばされる。
白い光の晴れた後には大きく抉れたアスファルトと息も絶え絶えの2体のUMA、そして全身からスパークを発しながらも立ち上がるレジリエンスとマルス。そしてその後方にいつの間にか現れていた巨大なパラボラアンテナを備えた鉄塔が聳えていた。




