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魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


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第54話 守るべきものの為に




 文明存続委員会本部


指令室のモニターにはレジリエンス、マルスそしてプロトマルスの3闘士とジェヴォ―ダンの獣との戦いが映し出されていた。


パワードスマッシャーが次元を超えてビームを発射する場面が映し出されると


「成功だ!これで狼・猪・キツツキの3聖獣のトーテムメカも揃った。これでマルスは完全に機能している事になる」


興奮冷めやらぬ古川努技術主任に


「まあ猪はマルスのギリシア版たるアレスの聖獣だがね」


「まあそう言わず、ミスターティブロン。これでタワーも基幹部分が完成し、残る懸念事項は」


「それも今取り除かれたようだぞ」


モニターにはプロトマルスの鎧ごと鈴宮玲が怪物を切り裂き、画面は爆発と閃光に満たされる。


「試作機1機と引きかえならば安い物か」


黒川博士のつぶやきに笠井恵美が険のある声音で


「これで彼女が、鈴宮玲を私達が追う理由もなくなりますよね?」


「何が言いたい?」


「プロトマルスの突然のブラックリスト入り、本部直属の特殊部隊の人員に元Eスリー残党を使う、極めつけは密告制度の黙認、これらが組織ひいては社会不安を助長している事についてどうお考えでしょうか?」


「密告は制度化していない。あくまで任意だ。Eスリー共は牢屋で遊ばせておくよりこうした方が有効だからだよ。いざとなればここから自爆させられるからな」


ティブロンは顔色一つ変えず言い切る。その手の中の正方形の自爆装置の起爆ボタンを弄りながら。


「所長、本当に異世界やUMAの真相をこの情勢で公表していいのですか?私は破滅的な結果をもたらしかねないと思います」


「予定は変わらんよ、笠井君。古川君、タワーの最終的な完成は年末までに間に合うのだね?」


「はい。クリスマスまでには完成しますよ」


「遅くとも2ヶ月弱か。それまで何もない事を祈ろう」


「黒川博士、レジリエンスの処遇は?」


「仕掛けてこない限りは手を出さなくていい。もはや奴1人でどうにか出来る情勢ではないからだ」


博士の返答にティブロンは不満げな様子だったが


「わかりました。今はタワー完成に全力を尽くしましょう。それが世界を救う最終手段となりますからね」




その1週間後の11月15日


黒川博士は全世界へ向けてこんな発表をした


『現在の日本及び世界の大きな関心事は謎の生物の襲撃である事は論を()たない所であります。では彼らはどこから来て何故人を襲うのか?彼らはこの世界とは異なる次元に存在する異世界から地球を我が物とする為に現在の地球の覇者たる人類に戦いを挑んでいるのであります。その根本を絶つべく我々は彼らの根拠地たる異世界そのものを消し去る光線を放つタワーを建造中です。これにより以前の平穏な世界が来ることを、人類の繁栄が永遠に続くことを私達は皆さまに約束致します。どうか落ち着いて理性ある行動をタワー完成までの1か月お願いしたい』


多くの人々はこの宣言に懐疑的だったが万が一にも日常が戻ってくるのであればという期待も確かにあった。そしてこの宣言が人間以外の生物の反感を買うであろうことも。専門家達がこぞって否定しようとも人々はUMAがただの化け物ではなく、知性がある事を感づき始めていた。だからこそやられる前にやれの精神で怪物連中が人類を総攻撃するという噂が世界中で乱れ飛んでいた。そうなれば当然人間達のやる事は周囲の生物を無差別に殺して回るという事態に発展していた。



そのタワー完成の4日前という日


「うわっ、ミミズだ。殺さなきゃ」


f市藤栄高等学校の男子生徒の1人が怯えた様子で花壇の土を這いまわっているミミズを踏みつけようとする。


「やめなよ。刺激しなければ大丈夫だって」


「そうとも。ミミズに親でも殺されたか?」


その様子に呆れ顔の柏木英輔と白井良子が声を掛ける。


「柏木よう、林間学校の時に俺らがミミズの化け物に襲われたのを忘れた訳じゃないだろ?」


「だけどさ」


その間にもこの、このと生徒は地面を踏みつける。


しかしいつ怪物になって襲ってくるかという恐怖心とこいつには罪はないのだという葛藤から足はミミズを踏むことができないでいた。だから彼は教室からTVの緊急速報の内容とそれによるクラスメイト達のざわめきが起こった事に大きく安堵の息を漏らしたのだった。


『北海道にて家畜の殺処分に向かったハスカール第203小隊とレジリエンスが只今交戦中とのニュースが入りました』


その生徒のスマホからのニュースも同じ内容を伝える。



あの演説の後世界中で人間の間では『消極的ベジタリアン』が急増していた。


彼らの言い分によれば家畜を屠殺して肉類を生産する行為や魚の漁獲はいたずらに家畜や海の生き物の恨みを買い、人類を攻撃する口実を与えるだけだというのである。


畜産業や漁業関係者そのあおりを受けて廃業に追い込まれるか、病気等の家畜の殺処分の『依頼』を委員会へ求める業者が後を絶たなかった。


だが今戦いの舞台となっている北海道のk市の畜産農家は事情が異なる。


この牧場は同業者からあらぬ恨みを受け『密告』されたのだった。


それを内部告発の形で情報をうけたレジリエンスが急行したのである。


家畜や牧場で働く人々を連行していたハスカール達は現れたレジリエンスに対してハスカールの1人が連行していた業者の1人に熱線銃を突きつける。


「分かっているな?変なマネをすればこいつらが死ぬぞ?」


レジリエンスが杖を投げ捨て両手を上げると同時にハスカール隊の全員が熱線銃グレイブラスターを向けたその時だった。

ハスカール隊の背後からサンダーバードが飛来し、サンダーナイトへと合身すると超音速移動で業者を敵部隊から救出すると超スピードによる攻撃でいまだ何が起こったか判らず混乱するハスカール隊を次々と撃破していく。


「あの、ありがとうございました」


家畜や彼の家族の無事を確認した彼は業者の言葉を背に受けながら次元の穴へ消えていった。




八重島家の庭に戻って来た達人はレジリエンスの鎧を脱いでふらつきながらリビングへ入った。


「達人君、少し休まないとだめよ」


倒れこむように椅子に腰かけた達人に八重島梓が心配しながら麦茶を持ってくる。


「少し休んだらまた出ます。これが今日最後ですよ。それと帰ったらお話が」


梓を気遣って笑顔で応じる達人は真顔に戻ってそう言った。


その言葉に並々ならぬ迫力と不安を感じた梓は頷く事しか出来なかった。


10分後鎧を再装着した達人は再び次元の穴へと姿を消した。ある提案の為にエリクシリオに会う為だった。これが受け入れられなかった場合彼は文明存続委員会の方へも同じ提案をするつもりであった。




「達人君に連絡しておいたわ。これで不正な密告による被害は少しは防げるけど、少し気が引けるわね」


文明存続委員会本部の1室で笠井恵美がPCを操作しながら呟く。


「そもそもあのタワーってのはどこから出てきたんです?」


その隣で黒川ケイは眉間にしわを寄せながらキーボードを叩く。ホラディラの事件以来彼らは秘密裡にティブロンの裏切りの証拠を集めているのだ。


「あれ自体は元々所長の構想なのよ。異世界そのものを消し去れば高濃度エナジーの浸出を阻止できると考えてね。でもどこで作られているのかは私達にも知らされていない」


ケイの質問に笠井はPCの画面から目をそらさずに答える。


「で、追いやられてきたUMAの対処にハスカール隊やマルスがいる、と。理に適っているが果たして予告されている機能の物かは怪しいですね。そもそも開いた穴からも高濃度のエナジーが降り注ぐでしょう?」


「だからティブロンの陰謀を考えてこうして探っているのでしょ。あら、これは」


笠井はあるデータを見て目を丸くする。


「どうしました?」


ケイはPCをのぞき込む。


画面には『ATL-002アポロ開発中止』とアポロの設計図が描かれていた。


「設計データをコピーした形跡がある。しかもこれって」


「俺達の知らない、知らされていない魔甲闘士?しかもこんな物を作って何をするつもりだったんだ、父さん達は」


「この性能は・・・・本気で世界を敵に回して戦うつもりだったのね」


「・・・・でも僕はそれでもタワーを守る為に戦いますよ。父さんやティブロンの思惑がどうあれ僕はこの世界の人間だから」


ケイは両手を血がにじむほど握りしめる。必ず芹沢達人はいやレジリエンスはやってくる。この世界と向こうの世界の全ての命を守る為に。


その確信があるから今マルスは大幅なアップデートを急ピッチで行っているのだ。


彼の手はマルスの改良予定図を呼び出していた。本体の出力強化に加えて前回のパワードペッカーとの合体時の僅かな不具合の修正とADプレートの強化案、そして開発チームの悲願とも言うべきある武装の追加。


(俺はこの世界の人類を守る為に為すべきことをする。今度こそどちらかが倒れるまで戦う事になる)


ケイは来るべき戦いに備えて訓練室に向かう。



八重島家の全員が揃ったリビングでは重苦しい雰囲気が漂っていた。

「それで、話というのは?」


家主でも八重島修一郎が口火を切る。努めて明るく言ったつもりだったが、場の空気が変わる事は無かった。


「その前に俺が今何をしているか、ご存じでしょう?」


「そりゃあ、ね」


今日の北海道での中継を見ていた紗良は苦笑する。全世界に展開しているハスカール隊はいまや世界中で嫌われているが、それらを擁する文明存続委員会の方針を受け容れない訳にはいかないのが今の世界情勢なのだ。彼らと明確に敵対を始めたレジリエンスは世界の敵という訳である。


「俺はあのタワーを破壊します。さっきこの紙が郵便受けにありました。多分秘匿されていたタワーの建造場所です。」


達人はそう言った後3人を見るが、誰一人として驚いたりしている様子は無い。


「理由を聞かせてくれるか?」


「あの組織には裏切り者がいる。だからあのタワーの効果が本当に連中の言っている通りの機能なのかという疑問があります。仮にそうだとしても次元の穴を開ける時に高濃度のエナジーがこの世界に降り注ぐことになる。その時何が起きるか分からない。何よりあの世界を、アトランティスの人々を、エリクシリオを救いたい」


最後の言葉は一度視線を机に落としたが、それでもはっきりと3人の目を見て言いきった。


「それは私達もそう思っているわ」


八重島梓が微笑む。それは紗良も修一郎も同じだった。


「それで俺達は何をすればいい?」


「それなんですが、3人を文明存続委員会に匿ってもらおうかと」


修一郎の問いに達人が答える

「裏切り者がいるんじゃないの?」


紗良の意見は尤もだった。


「俺があいつらと敵対している今、いつ八重島さん達に累が及ぶからな。最初はエリクシリオの町に匿ってもらうつまりだったんだが・・・断られた。余裕が無いと。だから灯台元暗しってわけじゃないが文明存続委員会の本部なら所長は八重島さんの旧友だしティブロンの動きを探っている反対派もいるからな」


「この家が襲撃されないのはあいつのおかげか」


修一郎は複雑な顔をして考え込む。黒川博士ならこの状況を見越した上で自分達を受け容れるだろう。こうまでして邪魔者たるレジリエンスを放置しているのは何かしらの絶対的な自信があるからだとも考えられた。そうで無ければ今頃自分達は人質となっていてもおかしくないのだ。

「分かった。その提案を受けよう。正直言って納得はしていないがな」


「すみません、八重島さん。巻き込んでしまって。でも俺は貴方達に人間らしさを人間としての幸福を教えてくれた人達をこういう形でしか守る事が出来ない」


「いいさ。あいつらは確かにやり過ぎだ。その暴走を止めるのが危険だというのも分かる。本当は俺達大人がもっとしっかりしていなきゃいけないのにな」


「その為に俺の様な人間がいるんですよ。それと紗良お前にこれを渡しておく」


「そのペンダント、大切な物なんじゃないの?」


「そうだ。だからまた元の生活に戻った時に、再会した時に返してくれ」


そう言うと達人はペンダントを紗良の首にかける


「うん。約束」


「襲撃は2日後。つまり完成前日。移動は明日お願いします」


「急だな。達人、手伝ってくれよ」


「勿論」


その夜八重島家は全員で委員会への『亡命』準備に大わらわだった。そしてその後達人はサンダーバード、ガッシングラムと襲撃の段取りを話し合うのだった。




件のタワーの建設場所は新宿区のE₃本部跡地とその周辺10キロの土地を買収し、使用した大規模な物だった。その周辺は以前のバノプリアの攻撃から未だに復興されていないビルがその残骸を天に向けていた。


(この紙を渡したのがどちらの勢力なのかが問題だが・・・)


重機等の倉庫がある以外は侵入者を阻むものの何一つないアスファルトの敷地にレジリエンスは立っていた。


「やはり来ましたね」


振り向くとフライング・ヒューマノイド・イエティ・ナウエリトの3体のUMAが立っていた。


「あの情報はお前達の物だったのか」


(ならば戦う相手はやはり・・・)


「アレの破壊は我々にとっても急務ですからね。その点は利害が一致すると見ましたが?ちなみにあれはダミーで、本命はその地下に隠されているとのことです」


フライング・ヒューマノイドは忌々し気な口調でタワーを見上げる。


「共闘か。この間はあまり上手くいかなかったが続けるのか?」


「少なくとも互いに攻撃しなければな」


ナウエリトの言葉には明確なトゲがある。ジェヴォ―ダンの獣との戦いの際に互いを巻き込む形になったのを根に持っているのだ。


「・・・・お前達は先に行け。あいつとは俺1人で決着をつける」


彼らの目の間にマルス=黒川ケイが立ちはだかった。右手にパワードスマッシャー、左手の甲にADプレートを接続し左手にはガトリングランス、左腰にももう一枚ADプレートを下げている。彼の右隣には専用バイク・ガンウルフがカウル部分にマルスブラスター、後部架台にガトリングランスの予備をそれぞれ装備して主人の傍に控えている。


「誰一人ここから先へは行かせない!全員まとめてここで消滅させる!!」


「それがお前の正義か。ならお前を倒してタワーを破壊する。俺の正義の為に」


互いの信念も正義も、力も知り尽くしている。だからこそもはや激突あるのみであることをこの場の全員が知っていた。


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