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魔甲闘士レジリエンス   作者: 紀之


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第53話 蘇った狂獣(下)復讐の終わり





 「あのジェヴォ―ダンの獣を退治するまでの間一時的に休戦協定を結びたいと思いましてね」


「それは他の2体も同意しているのか」


突然の申し出に芹沢達人は訝りながらもフライング・ヒューマノイドに尋ねる


「さんざ渋っていましたがね、何とか理解してもらいましたよ」


「お前達に何のメリットがあるんだ。同じUMAだろう」


黒川ケイの疑問に


「人間に善人と悪人がいるように我々にも度し難いはぐれ者がいるという事ですよ。そいつを止めるには殺すしかないときていて、明らかに厄介な能力を持っているとなれば」


「共闘以外手はないという事か」


「理解が早くて助かります。それでどうですか?」


「私は奴に止めをさせれば何でも構いません」


鈴宮玲は即答する。


「ケイは?」


「俺は・・・俺達にもこちらの成算がある。そちらを巻き込む形になっても構わないなら」


「いいでしょう。所詮一時的なものですからね。お互いに利用しあうのは前提としましょう。では全員賛成という形でよろしいですね」


そう言うとフライング・ヒューマノイドは右手を差し出す。


達人もそれに応じて握手をする。


「では作戦の共同部分について話し合いましょう。と言っても人間とUMAお互いの担当領域から出ない、それだけです。にわか仕込みの連携は却って奴を取り逃しかねませんからね。後は奴をつり出す方法ですが」


「私がオトリになりましょう」


「貴方が?」


鈴宮玲の提案にフライング・ヒューマノイドは首を傾げる。


「再戦を約して一度見逃されていますからね。恐らく食いついてくると」


「だと良いのですがね。それとマルス、あなたは例のハスカールなる部隊に手を出させない様に掛け合って下さいよ。余計な邪魔が入るのは避けたい」


「了解。ただ僕や達人さんを狙う可能性もあるからその時は連絡する事」


「その方法なんですがね」


「心配しなくていい。お前ら3体の生体波動は文明存続委員会のコンピューターに記録済みだ。もちろん標的の獣もな」

「フ・・・現世に出てくれば、の話でしょう?」


「ぐぬぬ・・・その通りだけども」


ケイはフライング・ヒューマノイドの言葉を遮るが、痛いところを相手に突かれて口ごもる。


黒川ケイは芹沢達人と玲に獣の出現報告の徹底を確認すると


「我々は奴のエナジ―を感知し異世界側の座標で待機して待ち構える。現世側は貴方方でお願いしますよ。それと断っておきますがあの危険生物を誰が奴を倒しても恨みっこ無しという事で。我々は貴方方の因縁等に興味はありませんのでね」


そう言うとフライング・ヒューマノイドは立ち上がり帰ろうとする。


「ああ最後に」


ケイがフライング・ヒューマノイドを引き留める。


「何か?」


「『担当領域から出ない』とは物理的にという意味だよな?」


「そうですね。下手に奴を負って次元移動するのは得策とは言えませんからね」


「いや分かっている。確認しておきたかっただけだ」


「?まあいいでしょう。では御武運を」


「そちらもな。だがここを知っていて何故今まで襲ってこなかった?」


「芹沢達人、我々いや私にも礼節や誇りはありますよ。少なくとも好敵手の安住の地を汚さない程度にはね」


「そこは喜ぶべきか?」


「さあ?では今度こそお暇しますよ」


そう言ってフライング・ヒューマノイドは次元移動し、今度こそ去って行った。


彼が去ったあと玲はこらえきれないという風に吹き出し、笑い出した。


「しかし、本当にぐぬぬと言う人間に初めて出会いましたよ」


「一体どっちの味方なんです?」


「面白い物は仕方ないでしょう?それに」


急に真顔になった玲は


「成算というのを私達も聞かされていないのですが。まさか私達にも秘密というのは無しですよ」


「勿論。それは・・・・」


ケイの言う『成算』に2人は感心したように唸る。


「ウーム。これは確かにあいつらには秘密にしておきたい内容だな」


「そうでしょう?秘中の秘ですからねえ」


「ともかくこれで奴を逃がす事は無いという事だけは分かりました。後は」


「玲、さっきフライング・ヒューマノイドも言っていたが誰が倒しても恨みっこ無しだぞ。協力はするがな」


「それは当然。そのつもりで無いとあれを追い詰める事は出来ないでしょうからね。後は私の器量次第という事です」

「ならいいがな」


それで会議は終わり、後は解散という事になっても玲は八重島家を去ろうとしなかった。


「お前まさか・・・」


「勿論、ご馳走になろうかと」


「久しぶり過ぎてお前がどんな奴か忘れていたよ」


「思い出しましたか?」


「今度は忘れそうにない」


達人は今日の料理担当である八重島梓に急遽人数が1人増える事を伝えに1階へ降りていくのだった。




翌日から玲はなるべく一人でこれ見よがしに人通りの少ない所を歩き回った。


しかし怪物が彼女の前に現れる事は無く3日が経過した。


(もっと何か有効な手はないだろうか?)


内心焦るが怪物の現れる場所は完全にランダムで何か法則というものは見られなかった。


(公園か)


あの時とは場所は違うが大きさは同じくらいの公園に玲は入っていく。


「ナンパはお断りですよ。最もコソコソしているのはタイプではありませんが」


彼女は先程から自分を尾行している男達に声を掛ける。


「鈴宮玲。お前には仲間を何人も殺された」


「人殺しをした覚えはありませんが。人違いでは?」


「俺達はE₃の生き残りだ。逮捕されてムショ送りにされたが今は一般部隊には出来ない特殊任務を扱うハスカール特務部隊として恩赦されたのさ。本部の同志達をやられた仇を取らせてもらう」


そう言うと男達は服を脱ぐ。


服の下からハスカールの装甲が現れ、各々ヘルメットを被る。


「全く、報連相ができないのはブラック企業の特徴ですよ」


「抜かせ!」


ハスカールの熱線銃グレイブラスターが火を噴く。


彼らは玲がプロトマルスの装着をする前にケリをつけるつもりだった。


だが彼らの間にジェヴォ―ダンの獣が突如姿を現した。


「出ましたよ、達人、ケイ」


怪物がハスカール隊を瞬殺する様を見ながら連絡を入れる。


「鎧の修理は終わったのか」


「ええ。何故私の家族を襲ったのです?」


「意味はない。俺は俺の中の衝動に従っているだけだ。他の生物の血しぶきや肉と骨の軋む音が俺を落ち着かせる。稀に抵抗されると愉悦を感じる。強い奴のそういう音は最高の音楽だからな。あれは俺にしばしの眠りを与えてくれた」


「父は私が知る限り最も強い男でした。父の遺体は最後まで刀を握っていましたから」


「そうか。だからお前に既視感を感じていたのかもな。そろそろ限界だ。お前の音を聞かせてくれ」


「そいつはもう二つ増えるぞ。ジェヴォ―ダン」


公園の別の入り口から達人とケイが現れ、玲の左右に立つ。


「面白い!お前達の音を聞ければ俺も眠れるだろう。さあ鎧を纏え。最高の音を俺に聞かせてくれ!!」


怪物の愉悦の声を聞きながら


「装着!」


3人はそれぞれの掛け声と共に


達人が巨大化した箱の中に入りレジリエンスの鎧を纏い


玲が箱の変形したプロトマルスの内部に入り


ケイがブレスレットから伝送されたマルスの鎧を纏う。



戦いが始まった。


プロトマルスがマルスソードを、レジリエンスが炎の剣フレイム・キャリバーを構えて突っ込みそして同時に跳んだ。


その後ろに隠れていたマルス連射するガトリングの光弾がジェヴォ―ダンの獣に迫る。


不意を突かれた怪物はまともにその光弾を受けるが彼はよろめいただけだった。


そこに右からレジリエンスと左からふくらはぎに内蔵されたブースターを吹かして加速したプロトマルスとが空中から同時に斬りかかる。


だが2つの斬撃が当たる直前に怪物の姿が消えた。


「来い、パワードペッカー」


マルスはブレスレットへの音声入力でパワードペッカーを呼び出す。


キツツキ型トーテム・ビハイクル パワードペッカーのもう一つの機能を使う為である。


「ユニオン」


その声を合図に鳥の頭が180度回転し、背中側に倒れて、照準モニターとなる。


両翼が展開して前方へスライドするとマルスが引き抜いた拳銃型デバイス・マルスブラスターと連結する。


全体の見た目はクロスボウに似た、マルスブラスターと合体したこの形態を『パワードスマッシャー』と呼称する。


中央部分の上下2門とクロスボウでいう所の左右のリム部分つまりパワードペッカーの翼の側面に各2門の計6門を配した最強武器である。


このメカはマルスに飛行能力だけでなく戦闘力も向上させるのだ。


「さあいつでもこい」


マルスは周囲を油断なく睨む。



異世界へ瞬間移動した怪物の目の前に待ち構えていたイエティの大剣が迫る。


更に怪物の背後にはナウエリトが高周波ランサーを伸ばす。


怪物とてそうすぐにはこの能力を使えない。


再使用には10数秒のインターバルが必要だった。


「やってくれる」


怪物は唸りながら迫りくる大剣に足を掛けバック宙をするとなおも追ってくるランサーの付け根に着地し再び跳躍、イエティに襲いかかる。


そこにフライング・ヒューマノイドが下半身を円盤状にして回転させながら怪物に体当たりする。


吹き飛んだ怪物はそれでも勢いを利用して起き上がった。


「ジェヴォ―ダン、あなたの様な存在はUMAにとっても害にしかならない。よって粛清します」


「俺も貴様達をやればスッキリするだろう。人間とUMAの最高の音を聞けるんだからな」


怪物はこの状況に却って狂喜し、3体に向かって突進する。


3体が身構えた瞬間怪物が消える。


「気を抜かないように。どこから来るか分かりませんからね」


フライング・ヒューマノイドは襲撃を躱した2体に気を引き締めさせる。



現世へ戻って来た怪物はマルスの背後から襲い掛かった。


「チッ」


回避の間に合わないマルスはガトリングランスを盾にして怪物のクローを防ぐ。


ランスを砕かれながらもパワードスマッシャーから6条のビームを放つ。


同時にプロトマルスが側頭部からエナジ―バルカンを、レジリエンスも右腕から火球を放つ。


怪物はスマッシャーを受けたものの、残り2つの攻撃はまたしても瞬間移動して躱した。


「ちゃんとナビゲーションしてくれよ」


実の所マルスの『成算』には不安要素があった。それはこれがぶっつけ本番でテストをしていないという事だった。


マルスはパワードペッカーの嘴に当たる部分を垂直に立てる。


そこには光点が明滅しながら移動していた。成功だ。


スマッシャーを中央部の下部分の光線は次元を超えて標的を追跡するマーカーの役割を果たす物だった。


「2人共離れてください」


そう言うとパワードスマッシャーを何もない公園の一角へ向けて放つ。


銃中央下の光線が次元の穴を開き、中央部上と翼に備えられた5条のビームがその穴に吸い込まれていく。




再び異世界に現れた怪物はナウエリト目掛けて右腕を振るう。


ナウエリトはランサーを体に(かざ)して盾替わりにする。


怪物の動きが止まり、ナウエリトの背後へ動こうとした。いかに怪物の体が常軌を逸した頑丈さを備えるとはいえそのままでは高周波振動によって分解されてしまう。


そこへ5条のビームが2体を襲った。


「何ッ?」


「野郎、こっちまで巻き込みやがって!」


悪態をつきながらもナウエリトはランサーを繰り出し、怪物の右腕を粉砕する。


「グオッ」


右腕を失いながら怪物は頭部に迫るランサーを寸での所で躱す。


地面を転がりながら怪物はまたしても姿を消した。


「大丈夫か、ナウエリト」


イエティが駆け寄りながら周囲を見渡す。


「なんてことはねえが、ありゃなんだ?」


「どうも次元の壁を越えて攻撃する術を人間共は手に入れたみたいですね」


フライング・ヒューマノイドは黒川ケイが担当がどうのと言っていた意味はこれだったのかと理解する。目をつけたら死ぬまで追い続ける。

そう宣言されたに等しい扱いだった。


「しかし連中に出来る事は我々にも出来る。そうでしょう、ナウエリト?」


「借りは返さねえとなあ」


ナウエリトも笑みを返す。



危険を本能的に察知して瞬間移動したジェヴォ―ダンはプロトマルスの背後に出現した。


彼女も振り向きざま刀を横薙ぎにするが怪物の腕より1拍遅い。


(やられる!?だが)


そう思いつつも攻撃をやめないプロトマルスの右側頭部から腰までを灰色の壁が覆う。


レジリエンスがトイコスを唱えたのだ。


だが怪物は壁をバリバリと裂きながらも強引に体を捻って攻撃を躱すと腕を振り上げプロトマルスの手から刀を弾き飛ばす。


同時にレジリエンスが怪物の右側から炎の剣を袈裟懸けに振り下ろし、背後からマルスがパワードスマッシャーを放つ。


肩を切り裂かれ背中を焼かれても怪物は咆哮を上げて炎と熱線を消し飛ばす。


そしてプロトマルスへ再度腕を振り上げた。


そこへ次元の穴が突如開きマルスの背後から1条の太いビームが襲う。


フライング・ヒューマノイドの作った次元の穴へナウエリトがビームを撃ち込んだのだ。


「うおっ」


「チィっ!」


ビームはマルスの脇腹を掠めて怪物へ当たる。


(連中め!意趣返しのつもりか)


ケイはマルスのヘルメットの中で歯噛みする。


突然の攻撃で体勢を崩した怪物にプロトマルスはヘルメットの右目部分を砕かれながらも抱き着いた。衝撃でジェヴォーダンの狙いがわずかにそれたのだ。


そしてこの時の為の新装備である『エルボーホーン』を展開する。


両肘から飛び出た長い衝角が怪物の背中とプロトマルスの腰にそれぞれ突き刺さる。


プロトマルスが出力異常を起こし始め出力が急上昇し始める。


「心中のつもりか!?体が動かん?」


エルボーホーンにもカノンボアの銃弾同様UMAの体機能を狂わせる仕掛けがあった。そして背中に刺さった衝角は人型を取ったジェヴォ―ダンの獣からは絶対に抜けない位置に刺さっていた。


(よし。後は・・・)


玲はプロトマルスの背中から離脱する。


「これで決めろ!」


マルスは拾いあげたマルスブレードに自らのパワーユニットを突き刺し玲に渡す。


「はい!」


玲は制服のポケットから出した予備のパワーユニットを鍔に装着し


「覚悟ォォォ!!」


紫電を纏う刀で怪物の脳天をプロトマルスの鎧ごと真っ向から切り下げた。


既に暴走を始めていたプロトマルスの鎧は玲と怪物を巻き込んで大爆発を起こした。




「ジェヴォ―ダンの生命反応が消えたな」


「今度こそ確実に絶命しましたよ」


異世界にてイエティとフライング・ヒューマノイドが怪物の死を確認する。


「さて、これで休戦協定も終わり。今度は」


「また今度にしますよ、ナウエリト。我々も傷を癒さなくてはね」


そう言うと3体のUMAは何処へと去って行った。





爆発に巻き込まれた玲はレジリエンスのトイコスで一命をとりとめていた。


「これで私の戦いは終わりました」


「そうだな。今は怪我を直す事だけ考えればいい」


病院の一室でベッドに座る玲に見舞いに来た達人が言う。


彼女の全身に包帯やガーゼが張られている。


「でもこれからどうするの?」


同じく見舞いに来た紗良に


「それはこれから考えます。まだこっちに来るなと家族に言われましたから。ただ」


「ただ?」


「お腹が空きました。こういう時はメロンが鉄板ですよ。さあ瀕死の怪我人の為に」


「やっぱ図々しい」


「そんな事が言える内はまだ死なないな」


そう言って2人は病室を出ていこうとする。


「どうしました?」


「あるかは分からないが見てくる」


「食べたいんでしょ、メロン」


「はい、お願いします」


玲は2人が見たことのない最高の笑顔で返す。そして2人が出て行くと虚脱感と達成感からベッドに倒れ込む。

(私はやりましたよ。皆安らかに眠って下さい)

そう心の中で祈ると玲は気を失った様に眠りに落ちる。


「もう大丈夫だよね、鈴宮さん」


「ああ心配ないさ。あいつは強いからな」


病室を出た2人は張れやかな気分でメロンを探しに行くのだった。

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